以前に書いた現地バイク事情に関するコラムの中で、パンク事件について触れましたが、このほど同じような状況が相次いで起きていることが分かりました。
HCM市での移動はバイク。この所はバス路線が増えたけれどそれでも時間通りに来ない、本数は少ない、最終便が速いなどの理由から多くの勤め人は利用しない。またベトナム人はほんの少しの距離でも歩きたがらずにバイクに乗る。この訳、特に暑さが厳しいHCM市では、華奢な体系の人がバテルから歩かないともっともらしく言うのだがその真偽は如何。
ベトナムのバイクは50CC迄なら免許は要らないので、高校へ通う生徒でも使う位だし結構上手。なにせ超過密渋滞が名物の市内でさえ、白いアオザイを着こなして颯爽と走っているのは画になるほど魅力的です。
ところが、筆者も何度も被害に遭ったのだが、市内でパンク。だが普通の状態ではなく、なんとネジくぎが刺さっているのです。通りには多くの修理屋が居て夜遅くまで仕事をしてくれるので安心。修理屋の目印はタイヤのチューブを掲げているのですぐわかるのが嬉しい。SUA CHUAと書いてあります。もちろんチューブの取り換えだってその場でOK。意外や意外、半年もすればとり替えなければ危ないが、約3000キロ走ればすり減っている。
問題はパンクだが、実にこれが作為的。即ち道路に朝早く釘をまくという仕掛けがあるというのです。先の修理屋でも引き抜いた釘やネジを必ず見せてくれ、穴もしっかりと検分させてくれるので嬉しい。そこに爪楊枝を挿しておき他にもないか充分に注意してチェックしてくれる。後は何処でも同じやり方で修理完了。しかしあまりにも酷ければその場でチューブの取り換えをしてくれます。
まあ、慣れない人にとっては危険この上ないけれど、バイクの乗る事があれば誰もが何度かこの洗礼を受けること間違いありません。
家の近所に親しい修理屋家族が居て、たまにアパートの駐輪場で空気が抜けていたとしても駆け付けてくれた事もあったが、何にしてもこういう市井で仕事をする人たちとも親しくして置くことは何処にあっても大切です。
報道に拠れば、2月、HCM市西部のビンチャン県の国道1号線、ロンアン省との境で連日10台以上のバイクが路上に撒かれた金属片に拠ってパンクさせられたとあります。パンクは急にハンドルが取られてフラフラし、やがてリムの道路面と接触する音がタイヤ越しに伝わってくる。これは自転車でも同じ。
思い出だが会社で面接を行った際ある子が電話してきて遅れるという。なんと珍しい事と思っていると、翌日朝一番に飛び込んできたのです。このことはもう22年の付き合い。今は有機農法でコーヒーの栽培を行うと地方の山間部に土地を買ってご主人が開墾中。本人はその後大手新聞社の広告部に転職。こんな独自のしっかりとした人生観を持っている強い女性もいるのがベトナム。
さてこうなると暫くバイクを押して歩かなければならないが、これが結構暑くてしんどいのです。この記事には修理とチューブ代に60万VND払ったとあったが、日本円なら3300円程度か。結構高くなりました。私の居た頃だと精々700円程度。経済成長が続けば物の値段は上がってくるので仕方がない。
だがワーカーなら3日分の賃金に相当するので腹が立つのは当たり前です。
バイクは通勤の手段だけではなく人やモノの運搬にも使うので危険この上ない。
ヘタすると転倒事故はかなり危険度が高い。骨折で済めばいい方だが、万が一、頭を打っていれば死に至ることもあります。日本のように救急車など直ぐに来てくれるわけでなく、病院にMRIやMRAなどがある所は殆どなく、まして脳外科医の専門医は数える程の貧弱な医療体制。幾らヘルメットを被っていても事故は避けられない事もある。
こうした迷惑行為は警察も分かっていて摘発に乗り出したが、なかなか捕まりません。いったん沈静化したけれど、このところまた増えだしたというのです。
修理屋がパンクさせたなんて現地の人でさえ話していたが、敵もさる者、場所を変えて互いに分らないように工夫しているともいうが何とも悪質。交通警察の裏をかいて犯人を追跡しにくくして、分かりにくくする悪知恵。それだけではなくワザとやっている節もある、いわば愉快犯。これはほって置けません。
近所の人たちはこういう事態を受けて朝から掃除を始めたとあるが、毎朝至る所に散らばっている数百もの金属片を拾っているという。
これはれっきとした犯罪だが、事件として立証するのはかなり難しいという。だがもし本当に死亡事故が起きればどう贖罪するのか。いまだに子供を何人も乗せる場合が多い、となればタダでは済まなくなるのです。こんな時ベトナムの公安は日本のように甘くはない。徹底的に叩く。
実はこのケース、罪に問われるとなれば刑法261条が適用され、故意に釘や鋭利な金属片を路上に撒き散らし、人を死傷させたりすれば1億~5億VNDの罰金、もしくは6カ月以上3年以下の懲役刑に処せられるとなっています。
また民事上での賠償もあるけれどとても貰える状況では無いのが実情です。
公安では犯罪を防止する意味で、周辺地域の家主に疑わしいと思われる修理屋との賃貸借契約を解除する様に働きかけているというのだが、この辺が此処の怖い所で、契約には解除条項があっても意味はない。今月で契約終了するので出て行ってくれ。これでオシマイ。こういう不条理なやり方で日本人が何度追い出しを喰らったか。補償など一切なく、すでに次の借り主が高い家賃で契約して入居を待っているのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生