ベトナムの農業 まとめ 3

2023年12月7日(木)

2050年を見越し、ベトナム政府は持続可能な農業・農村開発戦略なるものを実現するため、100万ヘクタールに及ぶ水田の高品質で持続可能な生産、についてプロジェクトを立ち上げています。
これは端的に言えば、機械化された大規模で高品質な米作地帯の改革を目指す、というわけです。
この所ベトナム産米は輸出が増加。品質も良くなって認証を80%の地域で取得、輸出の要件を満たしとの評価もあります。持続可能な開発と高品質な米生産地を実現するためには、米の製品価値、即ち米のブランディングを高め、米農家の所得を増加させる必要があると政府が考えているのは正解です。
農業農村開発省は商品価値を高め、温室効果ガス排出を削減するプロジェクトを展開するという。だけどこれは東京大学(院)で脱穀した後のもみ殻処理に関した論文で博士号を取得したTAOさんの研究そのもの。10年経ってようやく重い腰が上がった。幾ら優秀な研究者であっても、しかしそうした評価をこれまで充分してこなかったのです。これには一切触れていません。

高品質米の生産地として認証を受けるためには、米の品種、持続可能な農業、機械化、デジタル化、バリューチェーンなどの要件が求められるという。
これには4つの基本的条件があります。
先ずは国内外の消費者のニーズに対応するための米の品種を認証する。これは食糧の安全保障を確立し、栄養と高度な加工技術で付加価値のある製品を生み出すこと。だが食品加工より先に必要なことは前段階の精米であり、実際に使われている精米機は日本製が多い様です。
かつて大臣が来日した際に精米機を製造する企業を訪問したところ、自国に欲しいと言ったほどと伝わるが、流石に女性目線での評価。男には分からない。
街の米屋で買うと小石が混じっていたりすることがありました。こういう事は日本企業が現地で栽培委託し、スーパーで売っている日本種米にはなかった。
去年ST24とかいう新種を開発したのは民間人だが、改良を行う体制が充分ではありません。農業部門で野R&Dを政府が主導で進めるべきです。

次にあげるのは、持続可能な農業だが、温室効果ガスの排出を減らし、資源を節約、生態系の保護をしなければならないとある。米農家はもみ殻を河川投棄していたが、これは水質悪化の大きな原因。魚は酸素不足で棲めない程汚れるのだが、全くの無関心。実際にどういう方法で実践するかと言う事と、精神性に関しては触れられない。
3番目に生産農家と協同組合との協力・提携を促進。生産コストを削減して、価値を高め、利益を確保する。体系だった組合システムはないが、日本の様な農協問題が起きないようにするためには、どのようにするべきかには言及していません。総論賛成だけでなく具体的戦術展開を提議するべきです。

4番目には、大規模で高品質な米作地帯を機械化、よりインフラへの投資が求められる。デジタル化などで病気の予防、管理、自動散水の促進。
ベトナムの米作りは極めて小規模。ではどうして大規模化するのか。先端技術を以ってして実証実験は日本の支援で行っているが、たとえば農業機械の普及でさえまだまだ。兎にも角にも具体策が無ければ一歩も前進しない。このためには金が居るけれど、その手当てが無ければ意味を成さず、絵にかいた餅です。

何故このような話が出て来たか。ベトナムは米輸出で世界2位。圧倒的に中国、インドネシア、フィリッピンのアジアがお得意様で、インディカ米を消費する。
これを欧米も視野に入れ、世界市場として考えるのです。
このため農業農村開発省は、穀倉であるメコンデルタ各省、組合、企業と協力して温室効果ガスの排出量の少ないコメの生産地域を形成するため、参加者を募集しているという。だが掛け声はいいけれど、資金や技術が必要として時間が掛ると見込んでいる。
ならば何故、政府や行政が自主的に行わないのか。また大学農学部でこの様な研究を行なっている海外留学組の優秀な人材がいるし、民間でも自主的に世界に通用する米などを作っている人(企業)もあり、会って話を聞いた事がある。
こうしたノウハウや技術を自国で開発する努力、これに必要な資金を確保して分配するのが政府の役目だが、しかし技術の移転を挙げています。世界市場の需要増に応じて、米の生産を発展的に方向付けるために、国内外の研究機関は元より国際機関を挙げて支援を得る事は必要で、工業だけでなく農業分野でも安易に当てにしている。だが品種改良には時間が掛るし根気のいる地味な仕事。

首相が100万Hrの高品質米プロジェクトを進めるにあたって、その指示を各省、管轄官庁などに指示した後、実施計画を作成する方針が出ました。
だが具体的に該当する生産地域を指名した訳では無く、その様な生産地を形成すると解釈されています。要は現地任せ、特別な理由や基準は無いとあります。
業界や企業は農産物の品質や付加価値を確保するため、資材や資金を投入。消費に於いて主導的役割を果たす。これには各行政当局、産業界が共同で取り組むとされ、稲作農家や組合は標準化された工程に従って生産を担うとある。
では政府は何をするのか、丸投げ状態で、良く解からない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生