現地からの報道で、4月8日にHCM市で誘拐された3歳と7歳の少女が救出されたとの記事がありました。結論としては公安の捜索で無事戻って来た。
以前このコラムに未だベトナムでは誘拐事件は発生しており、特に若い女性を狙った誘拐があり、これは嫁不足が深刻な中国の農村へ売るとか、風俗業界へ売り飛ばす組織があって、現地と中国の組織が結びついたルートが出来ており、双方の警察ではこれを壊滅するために懸命になっていたとあります。
酷いのはベトナム人の恋人や親友が言葉巧みに騙してこの組織へ売り、僅かばかりの小遣いをもらったという、信じられないほどの悪質な事件もありました。また信じていた同性の友達にも裏切られたとかもある様で、中には中国に売られた女性が成人して帰国、実の母親にようやく会えたなんて記事もありました。
さらにずいぶん昔のことだが、ハノイに駐在していた日本人の子供を誘拐して、身代金を要求した事件もあったけれど、これは現地の公安が全総力を挙げ威信をかけ外国人の子供を取り返したのです。捕らえてみればハノイ市に住む老人。金欲しさのゆえだが、外国人であれば金を持っているという単純な動機からの犯行。後先考えずだが、この当時はまだ豊かな国ではなく仕事にあぶれると喰って行けない。日本の様な福祉制度など無いため喰えなくなっても行政は生活保護などしてくれる訳ではない。となれば何らかの犯罪をしなければ金や食料品が降ってくるとか湧いてくるものでもありません。捕まれば割が合わないのだが、ド素人が切羽詰まった末、手取り速いけれど白昼の誘拐だったのです。
外国人が住むとか、富裕層が住む住宅地やアパートの出入り口は警備室があり、24時間フルタイムで警備員が監視をしているのがベトナム。見知らぬ人間が居住者の部屋を訪ねるとするなら、此処で行き先とか要件などを効かれることもあるが、こうしたセキュリティーが厳しい所に駐在員が居を構える際、その賃貸するうえで安全上の絶対要件として考慮する会社も結構あるくらいです。
誘拐はこの国では、例えば知人の子供を黙って連れて帰っても誘拐とみなされる場合もあるし、国際的には実の子供でさえ離婚後に連れて帰国しても誘拐とされるなど法的には厳しい。最近は日本でもこうした国際化の波を受けて判例も厳しくなっています。
親の責任とまでは行かないにしろ、子供は小さければなおのこと自由気ままに何処にでも行く。はぐれて迷子になる可能性もあるのだが、そうしたことで紐を結び付けるグッズも売られているけれど、そこまでしなくても目を離さずにしっかり目線を外さないのが一番肝心だと言えます。
さてこの誘拐事件、過ぐる3日の夜のこと。母親であるチーさん(27歳)が10歳になる娘に生後9か月の赤ちゃんを抱かせ、ドンコイ通りでキャンデーを売るように指示。本人は残る二人の娘を連れて、この通りの反対側で菓子の販売をしていたという。
7時位にチーさんが、近くにいた飲み物を売る人に子供たちをみていてくれるように頼んで、100メートルほど先に居た借金取りの所へ行ったとある。
そして僅か5分ほど後、戻ってみるとこの二人の娘の姿が無く、10歳の長女に聞いても知らないと言ったので、1区の公安に届け出たというのです。
観光客が必ずと言っていいほど訪れるこのドンコイ通り。土産物店が多いので多くの外国人が来る。これを目当てに物乞いや(今は強制的に排除されたが)菓子や耳かきなどの小道具を売る子供やスリがいます。
多くは胴元が居て、子供を使ってこの様な商売をさせているが、他の観光地でも事情は同じです。また事情がある親が子供に売るように仕向けていて、これが夜になるのだが、行政は、例えば児童福祉法などで指導するなどありません。
誘拐された子供の父親もこれに該当するが、記事には二人いた?という夫は、子供が生まれた後、一緒にいることを拒み何の援助もしなかったとある。
さらに子供たちが行方不明になったとき、この二人にも連絡したが、子供の事は知らないと言われたと書いてあります。
母親のチーさんはフーイエン省の出身。両親は高齢で病気がちでもあるので、子供たちの面倒を見ることが出来ない。こうした不幸な事情がありました。
また借金取りという言葉があったが、これは頼母子講の様なもので、資金を持たない人に毎朝一定の金を貸し、その日の夜に金利を付けて返させる金貸しが居るのだが、まだこんな制度が残っている。法的には違法の様だが、質屋はあるが、質草がないし、金が無ければこの年で田舎から都会に出て来て、こうでもしなければ子供連れでは稼いで生きて行けない事情があります。
届を受けてHCMの公安は200人の捜査員を動員し、付近の娯楽施設や公安などを捜索したが見つからない。乗用が判明したのだが、若い女が子供たちに近づき、配車アプリを使ってタクシーでサイゴンパール(超高級アパート)に言葉巧みに連れて行ったことが分ったのです。
HCM市公安は捜索の後、二人をビンタイン区のアパートに踏み込み、監禁していたティエンザン省出身のヴィー容疑者を誘拐容疑で逮捕し子供2名を救出。事情聴取をしたところ、金と食べ物で誘い連れて帰ったが暴力行為などしていないと供述。現時点で単独犯としている。こんな高級アパートに、賃貸か分譲か分らないが、21歳の女性が何故住んでいられるのか疑問でしかありません。
1区の公安は起訴され拘留中の容疑者を尋問したが、当初は子供を育てる目的で誘拐したと供述していたという。しかしこれは全くのうそで、実際は子供の猥褻動画を撮影するための誘拐であった可能性があり、撮影した動画は海外に居る共犯者に送信される予定であったとしている。また多くのポルノビデオが発見されたというが、海外から多く註文されている証拠も掴んでいる。
このアパートが外国人男性の名義で借りられており、これで謎が避けた訳だが、室内を家宅捜索したところ、その証拠が多数見つかったとも報じています。
現在公安では事件の背後関係を詳しく捜査中。しかし如何にも雑過ぎる犯行。犯人の写真が掲載されていたけれど、田舎から出て来て恐らく工場で働いていた様な感じでしかない貧相な娘。多分に金欲しさであったろうと推測できる。同じように貧しい環境で育ったと考えられるが、そうした同情心はない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生