3月25日に開催された労働者新聞社(Nguoi Loa Dong)主催の民間セクター開発に関するフォーラム、ここでベトナム投資発展銀行(BIND)のチーフエコノミストであるリュック博士は、ベトナムが世界経済の動きに追いつくために民間企業の数を大幅に増やす必要がある、と強調したと現地有力紙であるトイチェが報じています。
BINDはベトナムの四大銀行のひとつ、文字通りベトナム経済の発展に寄与するために投資に関して熱心な銀行であり、経済分析・研究も行なっている。
今回、なぜ労働者新聞がこの様な経済フォーラムを開いたのか余り理解できないけれど、ベトナムが現在の世界潮流の中で、経済発展しているけれど、経済専門家からみると不十分。その原因は民間企業の数が圧倒的に少ない、中国に比べて5500万の企業があるけれど人口はベトナムの15倍にしか過ぎない。ベトナムは目標としている100万社ではなく、この数字は極めて控えめなので少なくても400万社を目指すべきだと述べている、とあります。
ベトナムでは国有企業の存在は大きく、民間企業に転換した事例もあるけれど、中小企業を併合・再編して大きくさせた企業もあり、企業数だけ見ると減少したけれど、働く人の数、体質とか中身そのものは殆ど変わらないと伝わる。
一方中国の5500万社はかなり小規模な裾野まで含めた数の様で、彼は単なる数字だけを言うのではなく基準を設定しなければ比較調査するにしても充分とは言えないけれど、数値目標を上げたことに一応の理はあり、評価できます。
またベトナム経済研究所の元所長であるThien准教授は、FDI企業が国内の民間部門より優位に立っているけれど、民間企業の規模は小さく、多くの課題がある。だがこの部門が経済に対する需要な役割を果たしているにも拘わらず、市場から撤退する企業の数は、新規参入する企業数よりも多い。と述べている。起業する人は多いけれど、閉鎖するとか休業することが実際に多い。これは、経済成長は続くけれど、充分な経営能力に資金、製造業なら技術力、三次産業ならマーケティング力やセンスが乏しく継続できなくなるのです。起業し易いというのはベトナムならではで、筆者は日本の様に失敗を周囲が許さず再起するのがかなり難しいものでなく、其処まで難しく考えず繰り返しは可能である風土があるからと考えている。また転職も多くの人は深く考えないで給与が少しでも高ければ何の連絡もせずに即時実行する。これは帰属意識が極めて低い事を意味するのだが、しかし他社へ移るだけのビジネス力や専門的な技術力があるというものではありません。この辺りを勘違いしてはいけないのです。
要はベトナム企業の理念、技術や研究開発力、資金、マーケティング戦略など経営力、またそこに働く従業員の資質に海外企業と比べて劣るのは、企業の数が少ないこと、また経済成長を海外企業に頼らざるを得ない地場企業の経営力と製造に必要な資源、アッセンブリーに重要な精密部品を海外に依存しなければならない実情をこのフォーラムでは明らかにしているのが重要だと考えます。
彼は状況に対して正確な評価とアプローチの根本的な転換を求めたが、これはベトナムが世界的なサプライチェーンに参加するため、革新的経営とか技術を推進できる新しい世代に拠るベトナム企業を構築するため、大胆な変革が必要であると指摘しています。要するに現在の地場企業の状況のままでは世界標準に対応できないというのが実態であると示唆している訳で、民間企業への経済自由度を上げることが国の成長を左右するとする講演内容であると考えます。
この考え方は正しく現在のベトナム企業の本質的な部分を見事に言い当てていると思えます。即ちベトナム企業はまだ世界の企業と対等に評価できる企業は少なく、後塵を拝しており、世界的部品供給網のベトナムへの移転にしても、十分対応できるうる能力がある企業は少ないとの実情を物語っているが、率直に受け止めて改革をするのは教育の改革であり、若くて頭の柔らかな海外事情に精通し、留学経験や生活体験に就業経験のある人達であると考えるのです。
外資系企業の輸出は70%を超えており、自国企業は僅かに30%程度だし、輸出品目にしても世界の先進・先端を担うものでなく、一次産品とか繊維産業、靴・履物、木工品などで構成されており、重要な戦略的輸出品ではないという事を暗黙裡に講演しているのではなかろうかと考えます。
しかしながらシンガポール国立大学のクオン教授(ベトナム人)はベトナムの民間企業が、世界競争力の戦略的エンジンになる可能性があるとしています。
上手に管理すれば大きな成長が見込める。だが制度的なボトルネックが依然として大きな制約であるともしています。具体的な内容は書かれていないけれど、これは恐らく行政手続きの煩雑さとか、時間が掛かる、賄賂などの阻害要因ではないかと思える。これは実際に経験しなければ分らないのだが、未だに国民でさえ社会が監視するという制度が機能し、表向きは自由だけれど様々な制約があり場合によっては指導されるという体制。これを理解する必要があります。
そこで、彼の提案は、シンガポールにタスクフォースを派遣し、ガバナンスモデルを修得するため一週間のスタディツアーを行なうのが良いとしています。海外、しかもアジアでも最も経済発展している国の制度をみて改革する必要性を述べているが、華人が考える経済成長の国家戦略とベトナムのそれとは大きく異なるので、都合の良い所だけをどの様に切り取るのかであると思えます。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生