ベトナムは世界に通用するブランドの構築を目指す

2026年4月21日(火)

数年前だったか、ベトナムの観光業者であり、政府の観光行政に携わった経験のある人がPhoをベトナム大使にしよう、なんてネットにあげていました。
日本でも多くのベトナム人が在住、至る所にベトナム料理店が出来ている中で、多分もっとも知られているのはこのPhoとバインミーだと思われる。
ところがこの御仁は世各国を訪れたけれど、アメリカ、フランス、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、リトアニア等々にも行ったけれど、何れの国でもPhoを食したとある。しかも料理人や店のオーナーがベトナム人でなくその国の人だから驚いたという。それほど世界中にベトナム人が住んでいる証明であり世界各国で親しまれているのがベトナムの食文化。これで他国との結びつきが強化され、文化交流が進み親しみの機会が増えているとした。
これが中国のパンダ外交と同じであり、日本や韓国のポップカルチャーを通じたソフトパワー政策としています。国際的に観光客をベトナムに惹き付ける手段でもあり、これが国家のブラをンド力だと書いていました。
Phoという食文化だけを以って国家ブランドとするのはマイナーで少々弱い感じもしなくないけれど、観光に関わった方であるならやむを得ないことかも知れません。それだけ他に無かったのかと思ってしまうのです。

・イギリスのコンサルタント会社の評価とは

英国のコンサルティング企業ブランドファイナンス社が纏めた、最新の世界で最も価値があるとする100ブランドのリストで、ベトナムは最も成長の早い国家ブランドとなり、この価値は29%も急上昇して3190億ドルにも達し、33位にランクインしたとある。
投資、ブランドファイナンスは商品とサービス、社内の3つの柱に基づく国家ブランドの価値を測定するという。そして強力なブランドは投資にとって極めて魅力的な環境を示し、対外貿易を促進して輸出する製品に付加価値を高める効果があり、観光客を惹き付けるとしています。特にベトナムはCOVID-19の対策に熱心であったので感染者に死者が低く、中国からグローバル企業の製造拠点が移転するなど、東南アジアでも最も主要とされる拠点の一つとして浮上、経済成長が続くという投資家にとって魅力ある国になっているとしています。
この様な状況からベトナムがリスト上で上昇しているのだが、この理由については政府が定めた基準を満たす製品やサービスを提供する国家プログラムと、政府による経済成長促進のため集中した取り組みがあるとしています。しかし現地事情を本当に分かっているのかと思いたくなるほど迎合しているし、数値での評価が無いのは不可解。因みに一位はアメリカ、中国、日本と続いている。

・ベトナムはアジアでリードするブランド構築を目指す

チン首相は2026年から2030年の期間で、ベトナムの海外イメージ向上戦略なるものを発表した。これは国のイメージ促進を対外コミュニケーションで重要なものであるとの認識からであり、長期的かつ包括的な意義は国全体での発展戦略と密接に結びついているとしています。
2045年までにベトナムはアジアの主要国のひとつに位置付け、ASEAN地域内で3位、世界でもソフトパワートップ30に食い込むことを目標にしているとあります。
ではベトナムに関するイメージ?とするけれど、具体的に何を指すのかだが、計画によると、国家イメージは外交、経済発展、文化、国防、安全保障、人的対話、DXに密接な関係があり、国際的な信頼性、地位、影響力の向上を目指すという。ベトナムは平和的で安定した国家、ダイナミックで創造性と責任感がある国として、強い存在感と深い国際センスを持つのを描くことを目指すとあります。言いたいこと、将来にしたいことに目標は実に明確で良く判るが、5年の短期間でという計画、一気呵成に出来るというものではありません。
政府は国際メディアやDXにおける国の認知度や評判は年間少なくとも20%の増加を目指しているという。そのため対外的な人材育成は外国語教育、技術スキルに関して能力開発に重点を置き、専門人材の教育も行なうとされる。
こうした目標を達成するために6つの戦略を示すとあり、一方的な宣伝から、体系的な国家イメージ、ブランディングの構築に転換することに重点を置くとしており、新しい段階に来たと考えられます。
また地方自治体は、地域アイデンティティーに沿って独自の戦略を策定、国に対する国際的認知度を計る指標を確立することを求めている。こうしたコストは各省の資金から拠出する。またこれに対する全体的な調整は文化スポーツ省が主管するとしているけれど、何でこの省が実施するのか不可思議。
要するに経済発展をして来たけれど、国際的にはまだ十分認められていない。従がってベトナムの評価をあげて行きたいけれど、このためには国のイメージを上げたいというのが政府の意向、国のブランド向上という次第です。
そのために何をするべきか。この点に関して、この国の決定的な弱点であるとする技術とスキルに欠けているから、この能力向上のため専門的な能力開発と人材育成が重要とするのです。即ちこれまで筆者が書いてきたこの国で遅れている高等教育を見直すという話だが、外国語教育など無理筋で焦りが目立つ。
だが経済発展をしてきて、振り返れば自国、地場企業に独自技術が無かった。
研究開発も自力ではできなかったということを証明しているだけの話、具体的にどの様にして自助努力を行って行くのか全くシナリオがなく分からない。
経済力がある、というのは一つの大きなパワーであるけれど、ではこの経済力は現段階で確認すれば、輸出が答になっている。それは進出した外資系企業の製品割合が75%にも達し、自国企業の輸出品目は第一次産品とか靴履物、衣料製品などが主力で付加価値のある製品は造れない。それどころかさらなる外国からの投資を得ようとし、また自力でのR&Dや技術開発を考えず、進出企業からの移転に頼ろうとしている。確かに貿易黒字が続き、外貨積み立額は急増しているけれど、この理由も外資系企業の所以でしかありません。
経済的に自立する気があるのなら、この様な事情を考慮し地場企業の体力強化、経営資質向上をしなければ未来永劫、外資企業の自縛からは脱出できない。
それでいてラム書記長は、ベトナムを中所得国から高所得国へ上げようという究極の目標を持っている。そのためには経済発展を進化させなければならない訳で、何とかして科学技術、デジタル化、グリーンビジネスなどの産業構造を転換して行きたいし、金融にしてもアジアの中心となる目標を掲げています。
何れにしても基礎力を付け、そのうえで創造性やR&D、総合経営力がなければ大目標を達成できる訳など到底あり得ません。
では地場企業の状況はどうか。政府は民間企業を主軸にして発展をさせてゆく方針を示している。確かに急速に巨大な複合企業が出現しているけれど、残念乍らこれらの私企業は資本と経営の分離が出来ていないという後進性がある。経済紙にはベトナムの大金持ちというタイトルでご承知の面々を取り上げているほどサクセスストーリーを記事にし、まさにベトナム企業が世界的な規模に成長したとでも言いたげ。だがこれ等の企業はその株式保有が身内で固められていて創業者グループの利得となっているのが現状。屋上屋を重ねる様にこの資金で系列企業を一層増殖させている錬金術をみるのです。また競合する事業が他に余りなく、これでは各企業、技術者が切磋琢磨するなど考えも及ばない。
高度な化学分野、プラント事業なども自国企業での操業は不可能。巨大企業に成長しても未だ草革の時期、バラバラでしかなく、連携を提唱した大企業経営者もいるけれど、その後の状況についての音沙汰は一切記事に出て来ません。
地場大手企業であっても独自技術にノウハウはなく、開発研究をできるだけの施設に人員を抱えているものでもない。鳴り物入りで南北新幹線を地場企業で行なうとしたけれど、自信がなくなったのかVinグループはさっさと撤退。他の企業にしても外国の技術が無ければ何にも出来ない状態で、付焼刃に過ぎない実態を本当に理解できているのか、疑問でしかありません。
一方で政府が100%保有する国営企業は現在でも473社あり、徐々に減少しているけれど経営の中身にほとんど変化がなく発展も進化も認められません。
政府は民間企業に経済発展と新時代の産業転換を任せているが、なぜこれらを解体して民営化しないのか疑問。日本でも国鉄、郵政民営化を断行しています。
では文化的とあるけれど、これは如何?それ以前に考えなければならないのは、何時になれば真の民主国家に成れるのか。平和で安定したとあるけれど、これはあくまでも現国家体制の中で権力構造に立ってのこと。1月の共産党大会でも発表されたけれどますます社会主義路線堅持が表明され、国の方向は書記長の一言で決まるが、権力集中と権限がより明確になり、これを支える10人の政治局は殆ど息の掛った人物で構成され、北部出身者7人が中心となっている。
だが唯一、失脚させられた元首相グエン・タン・ズンの子息が南部・HCM市からこの中央政府の重臣である政治局員に入っているのを見て驚かされたけれど、これはラム書記長のズン氏に対する公安の誼というか、必然の流れなのか。
ラム書記長は実績を最も尊び、清廉潔白、徳・力・才を登用の原則にしている。しかし取り巻きを固める上でこの様な一見身贔屓人事も、彼の将来への布石となるという計算も動いているのではないか!と思ってしまうのです。となれば前書記長から続く汚職撲滅に影を差すという認識もなくはないが、これは例えば外交省採用でも行われているのを聞いた事があるので慣例なのかもしれない。
さらに経済成長以上に抱えている問題解決も並行して行う必要があるけれど、これは都市間と農漁村格差解消、環境問題である。
経済と政治とは切り離して考えるというのも一理あるけれど、この先は不透明で分らない。確かにラム氏は科学技術振興を目指し国の経済力強化を図ろうと必死の構え。これは確かに国のブランドイメージ向上戦略につながると言える。だがこれまでベトナムの国家主席は就任すれば必ず来日して、それなりの礼節を尽くした。それは我国が世界一のODA援助国であり、また訪日の度に新たなる支援という形でのお土産があったけれど、ラム書記長は二度目の就任なのに一度もこの機会を持たない。それどころか前チョン書記長が死去してラム氏が登場する前後の期間での党・政治局内部の権力闘争、一般には知られていないが、相当ヤバイ動きがあったとの分析報告もある。このため国家主席に国会議長が辞任、政治局員も複数去ったが、これはラム氏が公安上がりなので公安を動員したとする、いつも通りの粛清話も伝わっている。
また中国との結びつきも、前書記長から引き継いでラム氏の時代に強化されているが、今回の第14回共産党大会の成果を、わざわざ外相を派遣して習近平主席に報告するために訪中させているのです。その前には王毅外相と会談し、中越運命共同体を重点的に捉えていることを確認しているとの報道。これらは何を意味するのか。もはや日本の役割は、はいそれまでよ、と言いたげなのか。チン首相の立場は、言わば行政の担当者、ラム書記長の番頭でしかなく、経済発展と裏腹に、また全方位外交を標榜してやまないけれど、その実、中国との連携強化はむしろ進んでいると言えよう。

・国家ブランドはベトナムを発展促進する

別の経済記事だが、ベトナムの外交的メッセージは「ベトナムは開かれていて世界と友好関係にある。ベトナムの労働者は賢く勤勉である」と歯の浮くような詭弁を平然と書いていました。
ナショナルブランドという概念は1990年代半ばに初めて導入されたとあり、これにマーケティング専門家が国家はある意味で製品や企業に似ていると考えていたという。平たく言えば、広告を出し、ブランドを組み込めばより魅力的に見せることができるとした。全ての国には地理的、文化的、社会的特徴があり、これらに結び付いた生来のアイデンティティーがあるとしています。
そこに日本の紹介があって、世界中で何千万人ものインタビューの結果、日本は科学技術での貢献、製品への信頼性と魅力、創造性個人能力でトップにランクインしたと報じていました。この所のインバウンド状況を見れば容易に理解できるけれど、彼らはもはや主要観光地を訪れるゴールデン地帯だけでなく、日本全国に跨って団体でなく個人で足を向けるようになった。それほど日本には地方に多士済々の文化を醸成、四季の実りと豊かな自然環境により創造され歴史に培われてきたモノが備わっている。さらに日本人の持つ誠実で忍耐力に優れ、決して他人の所為にしない品格、如何なる努力を重ねて信頼ある世界に冠たる製品作りをして来たのか。そノ深い精神性と、古い文化と新文化が見事に共存、100年以上の歴史を持つ企業が4万社以上もあるのは世界的にみれば稀有で信じ難いということに気が付いている。
この指数ではベトナムは60ヵ国中47位に位置しているという。だが特徴とされるものは何一つ無いとされ、国際的には発展段階にあるにも拘らず意図的な活動を行って自国ブランドを築くのに注意を払っているとしています。
ベトナムにとって国家ブランド構築は未知の領域にある。政府は2021年に国の信頼とイメージ発信のため、外交文化戦略を発表。それまでは僅かに複数の省庁ごとにMadeInVIETNAM、観光業界では魅力発信した程度で限定的だった。
これでは戦略的な国家ブランドでなく、単なる観光や製品の紹介だけで終わる。国家の多様性を示し、国際商取引や投資の促進手段だけでなく、国際的優位性を持つことは社会を前進させる重要な要素として捉えるべきとしています。
しかし未だ以ってベトナムが埋めるべき国家ブランドとの差には大きな開きがあり、ブランドを造るためには、価値ある投資が必要としている。経済、外交、文化機関や独立した、クリエイティブなコンサルタントの協力が必要だと記事にしている。だが幾ら金を使ったところで、歴史的に社会に生きる市民が創造してこなければ所詮は付焼刃でしかなく、身の程知らすに終わってしまうだけ。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生