DELTA ARCHI TECTS VIETNAM CO.,LTD.
代表取締役社長 三角照夫
敷地面積6,400平方メートル、建物面積3,200平方メートルの大きさの工場建設。生地の裁断機、ミシンを使った縫製工場である。建物としては1つの建物だが、 中は3つのエリアに分かれており事務所棟、工場棟、食堂棟の構成になっていて、事務所棟、食堂棟は2階建て、工場内はワンフロアーの吹き抜けとし、事務所棟2階から食堂までは工場エリア上部に設置するCorridor(廊下)を渡ってアクセスすることができる。この時、見学者などがこの工場を訪れたときにはCorridor(廊下)から工場内を一望できるようになっている。これは中野社長たってのリクエストだ。工場棟は機械の製作工場とは異なり、全体の機械の荷重自体はそれほど重くない。それでも事前に地盤調査を行い、そのデータを基に構造計算をして杭の位置や本数、長さなどを決めている。さらに試験杭を3本打ち、規定の時間放置し、沈下率を計測、許容範囲内であることを確認後、1本1本打っては計測を繰り返し、トータルで207本のPC杭を土日も休みなしで毎日打ち続けた。おや待てよ、、ローカルの連中は交代で休んでいるが、検査の確認は私のサインが必要なので私は休めないじゃないか?
ある日、台風のような雨、風が吹いている中、平気でPC杭を吊り上げて作業をしているじゃないか?「ちょ、ちょっと待て、ストップ、ストップ」一旦、風が収まるまで作業を中止させるが、午後から少し風が収まってきたので勝手にまた工事を開始している。要するに杭工事に来ているワーカー達は杭を打ってなんぼの世界、ノルマの本数の杭を打たなかったり、工事が遅れるとお金を貰えないのだ(貰えないわけではなけど)だから明け方近くまで作業をしている。このような工事の受注体制が結局ベトナムにおいて、いい品質のものを作るということが、あと回しになっている原因だと私は思う。手間ひまをかけて丁寧に作り上げても彼らがもらえる金額は同じなのだ。とりあえず作ってお金を貰ってハイさいなら。なのでますます私は休めなくなる。何しろずっと現場、作業を見ていないと心配なのだ。
もうひとつ感じたことは、杭を全数打ち終えたあと、日本ならお疲れさまと飲み会を催したりするのだが、ローカルゼネコンにその企画を話ししても、あくまでワーカーはワーカー。そんなことはしないのだという。一緒に達成感を共有することはないのだと思った。そこにはチームワークや一つの建物をみんなの力を合わせて建てる。という感覚がないのだろう、私に取ってはとても寂しい限りだ(もっぱら日本の現場でも飲酒運転の事故などの問題から、現場での飲み会は無くなってしまっている)また、ワーカーが仕事をサボっていた場合などは直接ワーカーに注意をするのではなく、その親方に言う。そして親方から注意してもらう。甘い顔をしたら親方もつけ上がるのだと現場監督は言う。
確かにワーカー(働く人)という言葉通り、彼らは毎日その仕事、作業を行なっているのではなく、普段は農業をしていたり、家の手伝いをしている人たちなのだ。だから私はあえて職人とは書かずにワーカー(働く人)と書いてるのだ。
日本だと様々な資格の種類があり、それが技術の向上につながり、品質の向上にも繋がっていると思うと同時にそれが足枷になっている場合もあるのだが、ベトナムにはワーカーを評価するシステムがないと言うことは、ちょっと寂しい気がする。安全と品質には当然お金がかかるのだから。
そして杭を全数打ち終えたその夜、誰にも褒められることなく、誰とも慰労することなく、私はホテルの部屋でひとり安いワインボトルを開けて飲んだ。
霧だろうが、夜だろうが、打設!杭打ち機
次回予告:
MAC BOOK PRO 壊れる