ベトナム日系工場建設奮闘記 ~ナカノアパレルベトナムNghe An 工場~【第30回 最終回】毎週更新

2022年11月30日(水)

 建物というものは実際に使用してみないと、なかなかわからないことも多く、ドアの不具合や使用感が設計時に考えていたものと違う場合もある。できるだけそれをなくすため、いろいろなことを想定して設計するのだが、ベトナムにももちろん建築基準法、消防法があり、それを遵守しながら設計することは当たり前であり、特に消防法に関しては近年、火災による死亡事故が多発しているため、特に厳しくなってきているのが現状だ。他の現場や既存のレストランでさえ、消防局が立ち入り検査を行い、営業停止に追い込まれているところもあるので特に注意しないといけない。
 また、9月27日には過去最大級の台風が中部地方を襲い、特にDa Nang では猛威を振るい、ここNghe An市内でも死者が出た。しかし工場としては幸いなことに引き渡し前の耐久テストができたので、不幸中の幸いだった。
 数カ所雨漏りしている場所があったのだが、これら全ては原因がはっきりしており、すぐ改善できるものばかりだったし、工業団地内には調整池や排水設備、電力設備が完備されていたし、地盤面から工場のフロアーを上げた設計にしていたので浸水の被害もなく、計画したとおりだったのでひと安心だ。これ以上大きな台風がくることは、以降あまりないだろうと考える。
 工場内で使用する機械の搬入もほぼ完了し、あとは消防検査を行い、引き渡し、竣工という流れになる。
 今年2月の旧正月明けのまだコロナ過が納まっていない時期から、ずっと休みなしで、ローカルゼネコンと一緒に、日本人はわたし一人の状態で現場を監理し、竣工まで漕ぎ着けられたのは、やはりNghe An 市に住むローカルの友人たちのサポート、ベトナム人スタッフ、もちろん最後まで責任を持って建設してくれた建設会社のTAS社、幾度となく意見が合わずやりあったこともあったが、よくついてきてくれたと思うし、また最後まで安全第一で、事故もなく完成したことをありがたく思う。
 この工場に携わってくれた全ての皆さんと、最後までこのブログを読んでいただいた読者の皆様、そして最後までブログを掲載していただいたVACサイゴン税理士法人事務所 社長の迫川氏に感謝。

台風一過のあと、まわりの水溜まりは池ではなく、浸水している。
赤丸部分が工場で、サイゴンからビン空港への飛行機から撮影
工業団地内は浸水していないのがよくわかる。
最後に中国戦国時代末の思想家・儒学者、荀子の言葉を
「君者舟也 庶人者水也 水則戴舟 水則覆舟」

DELTA ARCHI TECTS VIETNAM CO.,LTD.
代表取締役社長 三角照夫