ベトナム人労働者の現地における仕事の実態

2023年8月3日(木)

筆者が日系企業で勤務した時に感じたこと。ローカル事業を行なってきた経験。日系企業の工場内や事務所で見たベトナム人ワーカーの勤務態度。ベトナム人の知人が日系企業で社長をしていた時の状況などから纏めてみます。

・事業を始める際に注意すべきことがある

先ずは現地の文化、一般的な生活習慣にビジネス慣習を知ることが肝腎です。気候風土もこれに影響する事が極めて高く、さらにその国の現在に至たるまでの歴史、その当時の社会背景などを把握しておくのが大切。これらは一般的に云われる国民性に繋がっていると言えるのではないかと考えます。
また現地でビジネスをする上で、現在の政治体制、行政、また法律上の課題も数々あること理解しておく必要もあり、何らかの問題が生じたときに対処する糸口、相談できる弁護士も選んでおくのがいい。
多くの書物などに、ベトナム人と日本人は似ているなんてとんでもないことを書く人がいるが、それは違います。価値観や経営観、仕事観には違いがあり、都合のいい部分だけ切り取って真に受けるとえらい目に会うだけ。
日本に居れば当たり前でも、海外、特に新興国となれば何かにつけて未成熟な部分は多々あるのが当たり前。なにかに付け格差があるのは常識と思うべし。
企業間やビジネス上での慣習が通じないのは何れの国にも歴史上、熟成されてきた彼らのやり方があるためで、これを正面から否定することなど難しい問題。
仮にグローバル・ビジネスで相手側に瑕疵があったとしても、簡単に認める訳はないし、無茶振りもされる場合もあります。これは行政も全く同じこと。
ビジネスでのトラブルには仲裁機関があっても機能しない場合が多く、かつてフランス企業が勝った時はこれでこの国も普通になったと感じたものです。

・仕事上での問題 大なり小なり多々起きている

スタッフの仕事への姿勢や、行政の態度にしても正しいものではないにしろ、受け入れざるを得ない無念は山程あるとの認識が必要。理不尽、不条理な目に遭った事は誰しも経験するが、やり過ぎると睨まれ、大人しくても付けあがる。
日本の商工会、大使館もビジネス上で起きる問題を把握、ことある度に改善を要望しています。だがなかなか進展していないのが実情で解決する気が無い。
要するに進出した海外企業は何らかの不満や改良改善への要望を持っているが、良い方向には必ずしも向かっていないし、法律も制度も不備だらけが実態。
政府は外資系企業の進出を促進したいが、手をこまねくだけで具体的な防止策など講じていません。
国際感覚でのビジネスなど通用しない、国や企業、労働者が真に発展して行くための親切心、アドバイスであっても、相手が受け入れるのとは別。ヘタすると反感を持つので押し付けは良い効果を生じません。
これは即ち、こちら側の論理であって、仮に正当事由としても相手社会に馴染まず文化を否定する可能性が無いと言えない以上、拒否されるだけなのです。
企業の歴史が全体的に浅く急激に成長した為に理念や文化、風土が無く、人材に乏しいのが一般的。こうした所では社員の教育や育成が出来ていない場合が多く、さらにモラルに欠けている。取引先から賄賂を引き出そうとするけど、これは国内でも同じで、良くないとは誰もが思っていても断れないのです。

問題事例を挙げると、日本人社員がベトナムに来たくなかった、会社命令だから仕方ないとうっかり失言。すると誰も彼を信頼しなくなり仕事が捗らない。現地スタッフが居なければ仕事は出来ない。プライドは誰にだってあるので、この言い方は不遜行為に当たる。現地スタッフ全員が突然来なくなり黙って辞めてしまう。上下関係はあるとしても口や態度に出してはいけない不愉快な事は御法度です。
筆者の経験だが、私が直接採用したベトナム人。日本への実習生で行き日本語も出来るレストラン部門の担当者。夜に食堂で缶ビールを一本盗んだという。
だがこれを見ていた人が居た。毅然とした態度をとったのは女性管理スタッフ、何と即座に辞めさせた。普段は大人しい人なのに助けられた思い、敬意の念は今も忘れられません。優秀で見識のある人財は能力を評価し登用すべきです。

地場企業でさえもトラブルは付き物だが、外資系企業に勤務する現地職員への懲戒に関しては、場合に依って一歩間違えると微妙な問題に成り兼ねません。
ビジネスではやはり一人の人間として対等に接する時と、ルールやマナーに厳しく向き合う場合と、バランスが必要です。しかし多くのベトナム人はまた、これが理解できない。自分に甘い人が多いのも事実なので、対処は難しい。
とはいうものの、実際にはイライラするし、腹の立つことは多い。しかし相手の多くはビジネス音痴、技術的に未熟、先進国並みの訓練などされておらず、基礎的教育はされてない。まして技術が必要であっても教えられる者はいない、
先進機械や設備、道具類も不足、ノウハウも無ければ、必要な教育制度も無い。
優秀な人が居ても、ボタンの掛け違いがあり過ぎる。これまでベトナムは外資系企業の進出で経済成長してきただけ。自助努力では成し得なかった。
こうした現実に遭遇、筆者が関わってきた26年間、殆ど変わりがないのですから、解決には相応の時間が必要と割り切り徐々に改善して行かなければ一挙には不可能で、無理難題が満載です。

・自ら経験した実態の一部

中国人経営者の言い分は、外国人には納得できることが実際に多くあります。
筆者が現地で受けた日本人の飲食店の内装工事。外国企業での仕事経験が無ければ五時には終業する。それどころか片付けもせず、明日の準備もしないまま帰宅。要するにキリを付けられない。段取り(計画性)が頭の中に無いのです。
さすがに一緒に仕事を始めたベトナム人は、日程を考えて夜も共に頑張ったが、仕事に対する意欲や意思の無い者は続かなかった。
約束の時間に打ち合わせに来ない。その会社にも連絡してこず、何が起きたか。何しろバイクが移動手段、途中で事故?なんて心配したけれど、子供が熱を出したと平然という。家族思いというのは一見良いように思えるが、連絡・報告・相談、決済権限には従わず、自分で勝手気儘に決めるのがベトナム人。それでいて迷惑を掛けておきながら詫びの一言もなくあっけらかん。
多くの会社や工場でも仕事の依頼を受けたが、監督が居なければ仕事をせずに隠していた菓子を食べ、おしゃべりに夢中。
ある工場では決められた規則を守らない。食品工場は氏名と髪の毛などを貼り付け社員に公表していた。別の工場、絶対に錆びが生じると没になる製品なので手袋をして製造するのだが、外していたのを見つけられた。
こうした製品が日本で発見されれば全量廃棄。損失を補填しなければならない。
仕事への誇りとか、気概はない。単に労働力を売って対価の賃金をもらうだけ。
会社への帰属意識はないが、プライドだけは妙に高いのです。
大手は流れ作業なので手は抜けない。だがある下着メーカー。帰社時には検査があって持ち出しは不可。だがB級品や余り物をトイレで身に付けてバレないように持ち帰りが横行、女性警備員を配置し身体検査を厳格にした。
自分の金は私のもの、会社や他人の金も私のもの。経理は一切分らず丼勘定、金のある所から取る、借りても返さないというアジア的思考が蔓延っている。
アバウトさも此処までくれば呆れるだけです。しかし中には遅れると電話する子もいるし、事情を言って休む人もいるが少ないのも事実。家庭での躾が一番の問題。他人に迷惑を掛けてはいけないとの社会概念は日本人だからこそ。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生