少額輸入商品への課税案を検討 1

2024年11月6日(水)

・EC急拡大と現地の商業流通

Eコマースが急速に普及しているベトナム。今年度1~6月のベトナム大手企業上位5社の上半期の売上額は、前年同期比の55%増、143兆9千億VND(約8800億円)となったほどの盛況振り。今後も成長スピードは急カーブを描いて上昇するであろうという見方が強いのです。
実際2023年の東南アジア主要8ヵ国におけるEC市場でのベトナム国内取引額は前年比34,1%増となり、これは伸び率で2位となる好成績だったとあり、今度も市場は拡大の一途が予想されます。これは社会と一般市民の生活環境が急速に変化していることが一つの要因と考えてもいい。

ベトナムは百貨店やスーパー、ショッピングモールなどの商業流通が段階的に徐々に発展してこなかった歴史がある。極端な差が無くほぼ横並び状態が続いた出店で混在しているが百貨店は後回し。HCM市に出店した高島屋は今後は外商に力を入れるとする戦略を打ち出したが日本の様には行かない。
さらにコンビニエンスストアも群雄割拠状態。外資系が先に進出し、遅れて地場が出店するも大したノウハウなど持っておらず真似事。HCM市内でも小規模店舗の乱立状態。まるで駄菓子屋に行く様な感じがしたものです。
地場企業には小売業としての企業思想や理念が殆んどなく、マーケティングとか店舗開拓戦略、商品企画など戦略面に於いて先進国に後塵を拝している状態。商品に魅力がないのは致命的な痛手。このため外資系資本の軍門に下った地場企業もあるが、PB商品開発や社員教育には誠に無力だったのです。
また都市部はまだしも地方であれば、小売り量販店の出店を未だに見ない所もあるし、専門業種に特化するとかセグメントされた業態の進化がないまま、兎にも角にも出店攻勢を掛けていました。
要するに店舗の数は多かったけれど、企業にすれば売上はあるが利益が伴わない実態が続いていて台所は火の車。これでは経営者としては失格です。
消費者も対面型伝統的小売り形態が日常生活の基本。ご近所なので融通が利くしネギ一把でも買える便利さは近代的小売り形態にはない。こういう状況が急に覆る訳がありません。しかしこのところ、都市部から徐々に地方へという流れがようやく出て来たのが国内小売事情、フエにイオンが初出店する。
ところが徐々に力を付けて来たのが通販。韓国系のCJビナ社がスタジオを持つほどに成長、専用のテレビチャネルを使い海外製品を販売したのです。
これは高齢者にとって大変ありがたい事。欧米や日本のように一方通行だが商品を画面で見て説明を聞くので分り易い。この多くは韓国や日本製だった。
さらにそれ以上に急成長したのがEC市場。スマホの普及と物流の進化が促進したと筆者には思えるのです。
何しろ海外から国境を越え簡単に商品が得られる。しかも都市部だけでなく地方の農村部だって全くリアルタイム。支払いも電子決済だし、何と手軽で早いこと。こうして文化的生活格差はどんどん現象していったと考えます。
今では大手EC企業は商品配送のため、工業団地内に仕分けセンターを建設しこれを自動化するほど受注を処理しきれないとある。

中でも若者に人気は化粧品。何と中国製が増加傾向にあり80%を占める。
Shopee、Lazada、TikiのECサイト御三家の売り上げは約1兆VND(58億円)。毎年増加し一年で3倍強。これ等は中国から個人宛てに直送だとか。
このままでは物理的に課税できない。
日本製などの高級品は百貨店やショッピングモールでの販売。コンサルティング販売とかで消費者と向き合って実物を確認してから購入できるのです。
だが中国製品は何しろ安価。品質の程は分らないにしろ爆発的に支持されるのは商品力よりも価格。こうした事例はEV車でも起きており、中国企業の安価な自動車がベトナム市場を席巻する恐ろしい可能性は否定できません。
迎え撃つ地場企業に基礎体力が無いのではやむを得ない。マーケティング的側面からすれば消費の二極化は何れ始まるのだが、もはやこの兆候がECという新形態から始まっているとするのは穿った観方でありません。この現象を現地の行政や経済学者はどのように捉えているのだろうか。
ベトナムでは国産品を買おうという運動があり、ベトナム製品は高品質とのシールを地場企業の製品に貼ってある。しかし実際にはそんな事は無く壊れやすいので国民は所得が増えると高品質で多機能、デザインが優れ、耐久性のある製品を購入するのだが消費者心理としては当然の成り行きです。
ところがこのECで本来得られる関税に関して、現在は徴収できていない、黙って指を銜えたまま見過ごす訳にいかないとある専門家が異を唱えている。

・郵便税関と蔓延り一向に収まらない汚職

その前に、日本からベトナムの友人・知人宛てに誕生祝いとか結婚祝いなどで品物をEMSで送るとする。ベトナムではどうなるかご存じでしょうか。
これ等は先ず全て郵便税関に留置かれる。受取人には郵便局から通知が来て、此処に受け取りに行くことになるのです。
HCM市ならあの観光地でもある中央郵便局でなく、近くの郵便税関事務所。
はがきを見せると職員が送って来たBOXを持ってきてくれる。さあ、ここからがベトナム流のやり方なのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生