貧困のため眼科治療が受けられず、失明の恐怖に怯えるベトナムの人々を救う実在の服部医師をモデルにしたNHKドラマがありました。先生はこれまでも様々なメディアに登場されているため、ご存知の方も多いでしょう。
HCM市では現地の日本人会がパーティを開催、京都では母校の府立医大有志が作ったNPO等の支援組織が出来ており、私の行く病院の医師も同級生とかで活動に参加しています。
18年位前、義務教育を受けられない子供を教える日本人が創った小学校に、失明に近い状態の女の子が居ました。だが此処では治せない。HCM市に来た事がある議員で布忍小学校のPTA会長に、資料を送って病院で調べて貰うと直ぐに手術しなければという状況。だがどうしても費用の工面が付きません。
今はかなり改善されましたが、当時の現地医療レベルは驚くほど低いのが実態。白内障でさえ手術は無理。検査機器は古くCTやMRI等は高額なので一部にしか設置していません。また介護人材をベトナムにも求めている我国ですが、現地の介護実態は遅れており用具は旧くシステムすらない。器具機械に薬品類の納入は、コネのある業者しかできない社会的悪弊が蔓延っていました。
服部医師の他に勲章を授与された物理療法の専門医は、JICAから派遣されHCM市トップのチョー・ライ病院で5年間指導。一旦帰国した後、勤務する大学を辞めてまで再来越。海外留学をした同僚のベトナム人医師と共に大学で講座を創ろうと手弁当で奮走しているが、理解が得られず認められない状況。日本政府のお墨付きがあれば受け入れる、職員を日本で研修させたいと支援を要請する。だが例え言葉を話せて現地事情も充分に弁え、国民の為と訴えても行政は重要さが判らず、一民間人となれば検討すらしないというのが裏話です。
留学や海外勤務で先端医療機器を使いこなし、高度な検査診断や手術ができる医師がいる反面、経験や自信がないレベルの低い名ばかり専門医もいて、素人でも疑問に思う事でさえ帰国を勧める(これは病院が治療費を返金した位)。
医療格差が地域、病院、医師間で激しい。ドラマで人体実験だと非難する場面があっても直ぐ仲直り。だがこんな軽々しいものではない。無知による誤解、経験不足と専門度の低さ、倫理性の欠如に、文化や制度、慣習の違いを観ます。
だが一方で、とんでもない片田舎に優秀で徳があり、貧しい故郷の医療に情熱と意志を持って携わる医師も居て、直に面会やお世話になったことがあります。
具体的な実情に関してはまたの機会にと考えますが、医は算術、金の切れ目は命の蝋燭が尽きる時。多くの国民は医療水準の低さを分かっており医心伝心、金持ちの多くや要人すらも近隣国へ治療に行くほど。
服部先生を支援するNPOアジア失明予防の会(https://www.asia-assist.or.jp/)
筆者:IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生