トイレは文化のバロメータ トイレに纏わる面白話①

2019年7月30日(火)

トイレ事情を知ればその国の民度が分かると言われるほどですが、海外の人が日本のトイレを観て余りの綺麗さと清潔さで驚愕。感想をネットに投稿しているのを相当数みます。
日本では普通の事。住宅にしても駅中や商業施設でも街中至る所、見違えるほど機器も設備も立派になっています。また使う人のマナーも然り。設備が良くても使い方が酷ければどうにもならないが、この躾も日本は良いとの評価です。
だが世界の30%以上の人は衛生設備のない生活。知識も無く屋外排泄のため伝染病や感染症で亡くなる人がいる地域もあります。また水洗化されて清潔で便利になったが、生活用水の30%がトイレのために使われているのが現状。水資源の無駄を如何に無くすか、世界の根本的課題です。

日本でカワヤ(厠)ともいいますが、大昔トイレが川に在ったことから「川屋」が語源。音読みが違う漢字に変換されたのです。ひとつの部屋として独立したのは室町時代との説もあり、平安時代はお姫さまでも野外が普通で消臭は灰を使いました。日本の消臭剤売り上げは世界一とか、香水を使って誤魔化す西洋とは異なる消臭文化の所以です。
隠語も様々あって、古くは雪隠。禅宗で使われたのが初めらしく中国より伝来。東司は京都東福寺で使われた日本最古の便所のこと。接客業などは色で告げるとか、登山仲間だと「雉撃ちに」、女性は「お花を摘み」など直接表現を避けるユーモアもありますが、大阪で子供の時から使ったのは「高野山」「奥の院」。ところで便所とは「鬢(髪)を整える所」というのが一説です。
トイレをベトナムではNha Ve Sinh、直訳は衛生所。またPhong Ve ShinとかNha Nho(小さな家)ともよびます。

トイレの神様はいる様で、イエローハットの創業者は高齢なのに毎朝のトイレ掃除が日課。ダスキンは「祈りの経営」で新人研修に家庭を戸別訪問して便所掃除を導入。松下幸之助は「決断の経営」の中で1923年末の出来事を記していて、年の暮れ工場内は掃除も完璧だったが、便所を見ると全く掃除ができていない。綺麗にしなければ新年も迎えられない。そこで自分がやろうと考え、バケツに水をくみホウキを手に掃除にとりかかったが、多くの工員はなにもせず見ているだけ。こういうような精神の持ち方なり態度では仕事の面でもいい仕事はできない。たとえ仕事に直接関係はなくとも人間としてのあり方、礼儀とか作法を知らないようでは松下に勤務した意義もうすい、ということを考えたと記載。
このような世界的経営者以外にも、木造二階建ての高校校舎のゴットン便所で毎朝歌を歌いながら掃除を欠かさなかった教師がいました。
修養と言えばいささか古めかしいが、日本人が得意な自ら率先して後姿を見せるのも大事な教育。トイレを常に綺麗で清潔にすれば運気向上、健康で金持ちになる本さえ出る位。何時の世でも何処の世界にも大切なたとえです。
日本でもベトナムでも同じだが、机上の整理整頓状態を見て仕事が出来る奴かどうかある程度見極めが付く。掃除は清掃人の仕事と言うのが理屈で、自ら動くなどあり得ません。

建築内装の仕事を請けていた時、発注者に少々費用を掛けてもトイレは綺麗にと提案。日本製の機器を使い、明るい照明とデザインタイルを貼り、面台は木や大理石を使用、換気も充分行ってウンキ向上を心がけました。
清潔感と高級感、取り分け女性に気に入ってもらえる雰囲気作りが噂になればお客様のリピート率は高くなるのが必定。このような細かい気遣いの大切さは日本人に理解して貰えても、目先の儲けしか考えない経営者はこの辺りの感覚が欠如しているというのがローカル事情です。
ベトナムのトイレはシャワー室兼用が多いため、内開きドアが多いのですが、外開き。これは万一の場合、人が中で倒れた場合には容易に助けられるため。
引き戸は殆どありません。また明かり用スリットを付けるのも日本人ならではの工夫です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生