トイレは文化のバロメータ② ベトナムトイレいろいろ話

2019年8月3日(土)

ベトナムのトイレ事情とは如何なものでしょうか。
所変わればずいぶん異なるが、ベトナムは水洗式が多くこの意味では衛生的と言えます。これはこの国がフランスの植民地であったことから当時の都市計画で排水管が敷設されていたという訳で、市内中心部でも、新都市や工業団地、また地方のホテルやビルなどにも処理施設があり基準は厳しい。一般家庭でも水洗式が広く一般的。だが以前に書いた様な状態で、大都会と言え戸別浄化槽を経て河川に行きつく所もまだ多いのです。
特異な例では、養魚場には池の上に簡単に囲ったトイレがある。魚に落下物を餌として食べさせる仕掛けで、事情を知っている市民は絶対に海の魚しか食べない人も多い。また山合の村にあった食堂のトイレは、母屋から離れた傾斜地に作ってある小屋。組んだ木材の上へ架けた床板には切り込みが入れてあって跨ぎます。下からは風が抜けてくるのだが、見下ろすと地面が見えてしまう。緑に囲まれて気分は良いけれど、気配を察した豚が何頭か集まって待ち構えているのはエサとなる糞便。トンでもないようだが、これぞ究極のエコトイレ。
国鉄でも普通列車のトイレは軌道へ落下型。枕木を見ながらゴットンゴットンとレールの継ぎ目に合せたリズムを聞き、時たま風が舞い込んでくる次第。
50年ほど前のJRも同じだったので大きなことは言えません。

ベトナムには日本メーカーが進出。TOTO、LIXILの大手、マイナーだけれど朝日衛生陶器も進出しています。中国・台湾などの安い価格の海外勢と競争していますが優位性は圧倒的。
腰掛型のデザインは良く、洗い落とし式でなく節水型サイフォン・ジェット式など静音式で種類が多い。また手洗いが付いた機種もあるが、他国製には様々な機能はありません。温水シャワー式は価格面で一般市民は手が出ないが徐々に広がっています。
一般的に当地で使っているのは手動式シャワー。これを手に持ち、おもむろに目標めがけて発射するシンプルなもので、もう一方の手を使って菊座を洗わなければ充分ではありません。出るのは水だけだが、暖かい土地なので問題なし。
水栓に接続するだけで数百円とチープ。初めて使う際、どの方向、発射角度は如何ほどかコツを掴むまで試行錯誤です。
また一般家庭や外国人が利用する飲食店でも、アジアで広く普及している安価なしゃがむ方式の便器がいまだに多いのが特徴。これは初めての場合どちらが前か後か分からないし、排水のために床より一段上がっていて、今どきの若い日本人には苦痛の業です。
水洗式と言っても、使用後は備え付けてあるバケツや甕から水を汲み、自分で勢いよく流さなければ流れ落ちない。市内のレストランでもこれは未だに多い。
床周りにも水を掛けるので水垢がこびり付き、足元はベチャベチャして気持ちが悪い。従業員が此処でシャワーを浴び、洗濯をするのもその理由。
機械換気がないので蒸し暑い。おまけに蛇口からチョロチョロと水の出が良くない所が多いのは困りもの。
気になるのが便座の汚れ。座るのではなく、此処に足をのせてしゃがみます。注意書きにはそうしたことは禁止とあってもお構いなし。

トイレットペーパーはだいたい置いてあるが、プラスチックのゴミ容器があって近代的ビルやオフィスでもそこに捨てなければいけないのが不文律。これは下水処理施設の技術レベルが低い問題と、紙質が良くなく細い排水管に詰まるため、そのまま流すことが出来ないのが理由です。地方に行くと紙と手洗水の用意がない処も多いので、ポケットティッシュやウエットティッシュをお持ちになる事をお勧めします。
ハンカチを持っているのは日本人。ベトナム人は持っていないから手を拭くのにペーパーを無駄遣い。時たまハンド・ドライヤーがあるけれど、殆どが近隣のアジア国製で音が喧しいだけ。一応温風が出てくるのだが風量は極めて弱いため乾かない。こんな所にも日本製品の優秀さが認められます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生