テト(旧正月)のこと

2020年1月20日(月)

2020年のベトナムのお正月、テトは1月25日。この前後5日間が祝日となっています。しかし殆どの店は最低2週間ほど休むのが慣例。中には一月位休みを取るところもあるので機能は完全マヒ状態。
テトが近づくに連れ従業員は気もそぞろ。故郷に想いを馳せ、早く帰りたくて仕事どころではなくなり、日がな一日ボーっと夢見心地。

テト前には主要な公園で花市が開かれ、特にグエンフ・フエ通りのフラワー・フェスティバルは毎年テーマがあって豪華。多くの見学者がやってきます。
各家庭で飾る花は、南部は黄色い梅の花、北部は桃の花ですが、HCM市には北部出身者が多く住んでいるため、花市では桃の花の他にも金柑や菊花なども売られ、縁起物なのでお客は少々高くても買って行きます。
黄色はVN語でVANG。金と同じ発音なので、金持ちになれるというゲン担ぎ。だが日本と違って大きな花弁、香りはありません。
近所にこの鉢植えを栽培している圃場があり、この時節を狙って出荷。たった1週間で一年の糧を稼ぎ出しますが、花は最終日になると半値、8掛け、2割引と値が下がってくる。花市にはこの他一筆書き(墨書)、食べ物屋なども軒を連ね、夜も明かりが灯され賑わいます。

長期休暇が極めて少ないベトナム。多くの人にとって待ち焦がれたテト。都会で働く地方出身者は家族の許に帰郷。友人知人に想い人とも旧交を温め、積もる話に夢中になる。困るのは、酒を飲み過ぎて帰ってこないとか、友人同士の情報交換では互いの給料の話が出て来る。少しでも高い所へ行きたくなるのが人情。このテトが終われば、さて何人戻ってくるのか気が気でないのが恒例、胃が痛いのが会社の人事担当者。
また都会育ちの人は国内旅行に出かけることが増えました。だが早くに飛行機や鉄道の切符は売り切れ。バスも書き入れ時と値段が上がるし、ホテルも稼ぎ時なので2~3倍に跳ね上がり、時として宿が無くなれば一般家庭も部屋貸しをします。ダラットなど有名観光地には都会から親戚知人が来て、知らぬ同士が鉢合わせなんて経験も。
市内を走るバイクなど見かけない。店の多くは休んでしまうが、開いていれば正月料金と来るので、買い溜めのためスーパーに足しげく行かないと食い逸れ。折角の長休み、近隣国へ旅行をする駐在者も多く居ます。
都会に残る家庭では、家の修理や電気製品を新しくする、また市場で買い出しをして正月の準備を始めます。
五行を表す5色の果物が入ったカゴと正月料理を用意。親戚が集まり、先祖や神仏に日ごろの感謝の意を表してお祈りをします。この後に酒が入れば恒例karaoke 大会の始まり。

ベトナムにも新春の2年参りがあります。普段はお寺にも行かない人も、年末年始はお寺に参ってその年の家内安全、商売繁盛、五穀豊穣、試験合格を祈願。ひたすら長い線香を両手に持って御仏に拝み続けるのです。
このお寺Chua・Baはビンユン省にあり、遠くメコン地方などからも大型バスで参詣に来るほど霊験あらたかだとか。殆どがローソクを買って帰ります。他にその年の吉凶をお坊さんが占ってくれる所もあります。
家に戻ると紙で作った(Ma)金ぴかの服に靴、時代を反映した家具に最新式の家電製品やPCから新車にスクーター、洋風の家から高額ドル紙幣まで何でも揃っていますが、これを火にくべて煙にのせ冥界のご先祖さまが何一つ苦労なく過ごせるよう天上に送り届けるのです。

家族にとって一番大切なのは正月初めての来訪者。この行事をXong Datとも言い、その人が家族にとって一年の運を決めると信じているのです。以前親しくしていた家庭から、時間を指定されて行ったことがありますが、それまでは誰が来ても出ない徹底ぶり。この他にも新年に掃除をしてはいけないなど風習があって信じられています。さらに日本と同じくLi Xiといってお年玉があり、ドル紙幣、赤い色の紙幣が良いとされます。中には長距離バスの客にも200VND札を配った会社もある位だが、気は心。
また西瓜を2玉貰ったことがあるのですが、これはお世話になった印。切って中身が赤ければ赤いほど良い年になると言われましたが!

民族大移動が終わりに近づくと、近場(100キロ程度)の実家にバイクで帰っていた人が沢山の荷物を載せて戻り始めます。疲れて当分仕事にならないが、途端に街が勢いを取り戻し、静けさは消えて喧しくなり、埃っぽく感じる現実に目覚めます。
さて、日本でもこの時期には大阪や神戸など、ベトナム人が多く住む地域ではテトを祝います。近年、在住者に留学生、実習生が増えたので交流する機会が増え行事を楽しむことが出来ます。
昨年はベトナム人がオーナーの会社でも行い、関係する日本人やベトナム人も来て、TV大阪が特集として取材に来るほどの盛況ぶり。
今年は京都にあるベトナム料理の店では旧正月のつどいが開かれますが、特別に正月にしか食べられない料理(北部)を味わえます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生