実習生に特別講義をやってみた

2019年12月27日(金)

古くからの友人が社長である現地送り出し機関。事務所に校舎をリニューアル。無理に大きくせず堅実に事業を行っているため、問題になっている逃亡は昨年1名だったとのこと。
ベトナムには800の送り出し機関があり千差弁別。9月には法律違反を起こした機関が政府より認可を取り消され、日本側でも処分しています。また日本の監理団体は3千あると言われ、ケアしないブラックな所もある実態。徹底的にいい加減な所は排除すべきです。
この会社の在留実習生、JITOCOが毎年行う優秀な実習生の表彰式では昨年2名が選ばれました。日本で働く実習生は急速に増え約16万人だが、此処は千人ほどなので快挙。
また副社長も21年前からの知人。まだベトナムへの進出など多くはなかった時期、HCM商工会議所のNo2として大阪で進出セミナーの講師で来ました。通訳なしに日本語で講演するため時間に無駄はなく答も的確。IBPC大阪の企業交流や難しい進出案件でもお世話になった事がある。日本の事情にも精通、広くて深いコネクションがあり、人材の確保には事欠かない強力な人財です。
さらに高校から日本で生活して慶応大学を卒業、日本国籍を取得したSさんもいるし、日本人も日本語教師の他、大手企業を退職したK氏は日本の生活や生のビジネス実態なども教えるなど人材は豊富です。
HCM市の学校ではほぼ半年、地方から来た実習生候補は日本語などを学習し、面接を経て日本へ行くことになります。此処は東京と名古屋に駐在社員を置き来日した実習生の面倒をみている。
なぜ大きくし過ぎないかと言うと、目が届かなくなるというのです。HCM市に来る前には副社長が面談し、家族の家を訪問して人物像を確かめる。来日してからは現地の様子を手紙で家族に伝える。帰国した実習生には現地で就職を斡旋するなどのきめ細かいケアをしている。さらに年2回、両親を招いて懇談会を開催しているが、なかなか出来ないこと。こうすることで、信頼感が生まれ、連絡を密にして、品行不良の実習生を生むことが無くなるのです。
時まさに日本での人が足りない切実な事情から、社長は日本へ毎月のように行っておりクタクタ。日本の人材不足から大手から大量の派遣リクエストがあり、病気をしないか心配します。さらには偶然。大学の後輩が転職したのが日本の受け入れ機関。もとはHCM市で大手企業の駐在員。ベトナムと関わりたいと選んだ転職ですが全てが重なり人とのご縁が繋がっているのです。
名前だけでの判断は何処でも、いつの時代でも禁物。これから国内業者の選別が始まり、また実習生が何処を選ぶのかが明確になり、さらに日本なのか台湾か等も選ぶ時代になると考えます。何しろスマホ時代、リアルタイムで日本での現況や写真が送られるため全てが筒抜け。日本側の受け入れ企業もいい加減な事は出来ません。
さて前回は東京出身のK氏から頼まれ、大阪に6名行くけれど文化に言葉が分からない。心配する実習生のため話をしてくれとの事でみっちり講義しました。
今回は関西と関東の違いを話すのが主ですが、ベトナムは北部と南部で1700キロも離れているのでもっと大きな違いがある。これ比較して現状を楽しく話すのが肝要。授業ではなく、実際に国内をあちこち転勤で生活した時の面白可笑しい経験談。日本の事情が良く分からないため、この方が相手も気軽で聴きやすい筈です。
多くの若者は海外の生活を知らない。何しろ飛行機に乗るのも初めて、電車も知らないなど、日本での実生活事情も組み入れました。さらに今年の法律改正による特定技能への移行も大きなプラス要素で、日本側にもメリットは大きい。
若い人だけに頭は柔らかい。言葉など日本に来て会話をするほど覚えられる。生活習慣も慣れるだけのこと。心配を除き、安心させることが第一です。
しかし、折角日本に行くけれど、彼らは何のために行くのか、何が大事なのか教えないと分かりません。この認識は薄く、殆どが家族のためにお金を稼ぐ事。事実はこれが殆どで大切な事だが、これだけではもったいないし寂しい。
学校や職場では目標設定を教えません。また目標をどのように実現するのかなども無い。自らのインセンティブ、目標を見失えばトラブルが起きる事は必至です。従って、自分が研修で受けた方法を活かし、実現の方法とご縁の大切さが話しの勘所。他所ではこんな事はしないけれど、彼らにとって一番大事だと考えるのです。
今までの経験から、ベトナム人は叱られるのを極端に嫌います。叱られた翌日は出てこない、無断で退職など日常の事。だが日本ではそうはいかない。
彼等には早く日本の社会や地元に溶け込んで欲しい。また受け入れる日本人も文化や習慣の違いに無関心か戸惑いがある。叱ったり、怒ったりするだけでは何も解決しない。齟齬を生み、勘違いが起きるだけです。
誰だって初めは素人。失敗もするけれど、素直に認める。分らなければ質問し、後で勉強するだけのこと。これからもどんどん進むであろう異文化との共生。もはや単純労働の担い手ではなく、受け入れる我々の社会が認知し、変わって行く必要があります。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生