絶対に見ておきたいベトナムに関する映画② (ベトナム人監督・外国作品)

2020年7月29日(水)

最近のベトナム映画、日本ではミニシアターで上映される事が増えましたが、スクリーンの大きなコンプレックスでなく、ロングランでもないのが惜しい。
個人的には古き良き、ゆったりとした時が流れるベトナムを描いた映画が好み。
文化・歴史や風俗・習慣に興味が湧き、どこかしら懐かしみを感じます。
活躍しているベトナム人監督は、フランス在住のチャン・アン・フンが有名で、1990年代に作品を出しています。彼が褒め美術監修を務めたのが35歳の新進気鋭の女性監督、脚本も書く米国在住のアッシュ・メイフェア。HCM市の出身で、14歳から海外の高校、有名大学・大学院へ進学。知性とセンスの高さは群を抜き、本物だと感動を覚えるほど一押し。この先が楽しみな才媛。日本でも公開された「第三夫人と髪飾り」には、フンが監督をした三部作に出た俳優陣が多く出演し演技力の高さはピカ一、美術演出とも最高のタッグです。
日本文学をよく読み、谷崎潤一郎に感化され、映画の根底にも影響が認めます。
今の日本の映画やドラマはつまらない。演技の基本すら伴っていない人気先行の若手歌手や芸人が多く主演。技量の底の薄さと軽さ、品格の無さを感じます。

・真っ先に挙げたい「インドシナ」仏映画・1992年、159分の超大作

主演カトリーヌ・ドヌーブ。独身で美貌の経営者エアリーヌ。物語は1930年代、ベトナムがフランスの植民地であった頃。友人の安南王族の遺児であるカミーユを養女にして遺産のゴム園を運営、平穏な生活を送っていました。
カミーユが学校へ行く途中で発砲事件が起き、これを偶然に助けた仏海軍士官バティストと恋に落ちます。このことでエアリーヌと喧嘩になりバティストは左遷されます。時あたかも独立機運が高くなってきた時代。幼馴染と婚約をさせられるが、彼も独立運動に参加と円満に解消。カミーユは家を飛び出し一人バティストを追って左遷先のドランゴン島へ向かいます。財も立場も捨てて。
辿り着いた島は仏軍が管理する奴隷取引の拠点。此処で兵士を射殺して今度は一転追われる身に。バティストと共に地下組織に匿われ、やがて男の子を出産。
だがバティストと子供は捕まる。彼は殺害され、子供はエアリーヌの許へ托される。エアリーヌはフランスで子供を育てることを決意。
二人が逃げ回る全国の風景が銀幕に次々に出てきますが、ロケハンが良いのか、さながら有名観光地を回っている気分。綺麗に映され、圧巻の美しさ。
5年後に釈放されたカミーユはそのまま独立運動に参加。彼女達の努力の結果、1959年ジューネーブ協定で戦争は終結。だが国家は二つに分断。すっかりフランス人になった息子は母に会おうとしませんでした。年老いたエアリーヌからは自身も生まれ育ったインドシナが消えてゆきます。

・「ラマン/愛人」 仏英合作・1992年 マルグリット・ジュラスの自伝

フランス植民地時代、15歳のフランス人少女と中国人青年との禁断の恋愛。現在のドンタップ省・サデック。此処で教師をしている母親は騙されて不毛の土地を購入したため貧困家庭に落ちぶれます。兄は仕事も無くブラブラ厄介者。
少女はサイゴンの寄宿舎で生活し休日に帰郷。その時裕福な青年に見初められ隠れ家で密会を繰り返す事に。官能のシーンには嫌味が全くなく、優雅な夜のひと時が過ぎゆきます。しかし青年はシキタリで親が決めた女性と結婚。
少女の家族は生活が苦しくなり、帰国の途に就く。出航のシーン。少女は甲板で柵に寄りかかって港を眺める。黒塗りの車が。青年がこっそり見送りに。
密会の場はチョロン、現在の5区・中国人街。周りはフランスが大元の阿片窟。
未だにロケをした家が残っています。寄宿舎はレ・フォン・ホン高校を使用。
歴史ある優秀な高校。サデックは花卉栽培が盛んな所、今ではメコン河に橋が架かっていますが当時はフェリー。船のシーンはサイゴン港での実写です。
セットでなくふんだんに現地ロケをした綺麗な映画。文庫本で原作が読めます。

・「第三夫人と髪飾り」The Third Wife  Mayfair Pro・2019年

概要は昨年11月「ベトナムで映画などを撮影する話」で書いているので省略。監督自身の曾祖母の実話を基にした映画で、5年の歳月を掛けて完成。人工物は一切使わず、スタッフ全員が現地生活をして地元の慣習や生活様式を体験。異文化ながら自然に画の中へ入って行ける程、土と水と空気の匂いが感じられ、まさに桃源郷の世界が拡がる。主人公役は小学生の新人My、掘り出し者を発掘。監督の理念や想いが詰まっていて、静かに深く伝わって来る。特長は1:1,5のスクリーンサイズ。これが一段と水彩画の様に美しく見える独自の秘訣です。
ベトナムで上映が4日で禁止されるが、芸術が発展、伝統文化を保存する環境にないことが証明され、智と才ある人は海外で磨かれ伸びる印象を受けます。

・「季節の中で」原題バー・ムア(三つの季節)アメリカ映画・1999年

HCM市郊外を舞台に、ハンセン氏病に冒され世捨て人となり、屋敷で一人暮らす詩人ダオと、聡明な蓮の花を摘み街で売る少女キエン・アン。美しい詩を筆で書き留める手伝いをするアン、生きがいを見出だすダオだがやがて死去。早朝の蓮池、小舟を櫓で漕いで歌ずさみ、花を丁寧に摘む場面が何とも美しい。
蓮は花、茎、葉、根、実と全部を使います。だが本物の花より安い造花が売れるシーンの通り、時代がどんどん変わって世知辛いのは寂しい限り。
戦争中にベトナム女性との間に産まれた娘を探す元米兵ヘイガーと、タバコやガムを売りながら都会を生きるストリートチルドレン・ウッディ―との物語。少年が夜の雨の街中で商売道具の入ったカバンを探し回るのが胸キュンです。
てっきりヘイガーに盗まれたと勘違いするが、見つかって少年らしい笑顔に。
泥沼から這い上がることを夢見る娼婦ラン、ふとしたことから助けた彼女に心惹かれるシクロ運転手ハイ。毎日の送り迎えをするようになる。ある日ハイは熱が出たランの家に行って看病。鉄道が通る狭いヘム(路地)の家が煩雑なHCM市らしい。ハイが絶対に欲しい50ドルの賞金を懸けたシクロレースのシーンがあるけれど、こんなのあったかな。また地理的には彼方此方と飛んでいて場所が分かるとあり得ないが、良いトコ撮りは許せる範囲。
ベトナムは雨季と乾季、映画のタイトルは3シーズン。あれ?ですが、三者三様の人生の綾を織りなす物語。ラストの真赤な火炎樹の並木、白いアオザイで舞う象徴的なシーン。ハッピーになれた暗示か、最も綺麗な絵になっています。
全ベトナムロケ敢行。アメリカ移住のトニー・ブイ脚本と監督。

・チャン・アン・フン(陳英雄)監督の三部作

普通のベトナム家庭、ありふれた日常生活の中で起きる人間関係の素直な描写。

「青いパパイヤの香り」第一作 原題Mui du du xanh 1993年
幼い少女ムイが奉公に来た家の門できょろきょろ。始まりが可愛い。中庭に1本パパイヤの木があり実を剥いて食事の支度。この一家との生活が続きます。
画面は突如10年後の女のムイの顔。この家を出て音楽家クェン家で働く事に。彼には恋人がいたが信頼するムイと結婚。相も変わらずパパイヤの料理をする。
と言うことで、ムイの人生+パパイヤが主役。人の想い、越し方など何処も変わらない。今も家政婦を雇い家事一切、子供の世話をさせる家は多い。

「シクロ」 Cyclo 1995年
現代のHCM市が舞台で、スラムで祖父・姉妹と暮らす青年が主人公。仕事はシクロの運転手。女主人から借りている。ある時商売道具のシクロが盗まれ、
これが切掛けで裏社会へ入って行く物語。余り楽しい気持ちになれそうにない。
しかし、今ではシクロは市中乗り入れ禁止で、僅かに観光用に残っている程度。車が走り、地下鉄が工事中とインフラ整備が進む。今では物理的にも絶対に撮れない映画、こんな時代もあったのか、と思いに耽る日がきます。

「夏至」Mua  He Chieu Thang Dung 2000年
ハノイが主舞台。三姉妹と長男。それぞれが秘密を抱えた関係の中での生活。
噂好きなベトナム人にぴったりで、普通によくありそうな話。
世界遺産ハロン湾、ハノイの生活空間、食事・バイク・コーヒー等々、ありったけのベトナム情緒が欲張りなくらい感じられます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生

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