文化の違いから 経験したお話3つ

2020年11月9日(月)

現地発のブログをみていると、離婚や夫婦間で喧嘩の原因の多くは文化の違い、育ちの違い、価値観の違い、共通言語がないからでしょうか、とされます。国際結婚は実に3年以内に半数がサヨナラするとさえ話す経験者も居るほど難しい。これ以外には年の差は近過ぎても、離れ過ぎもダメ。摘み喰いは世界共通の要因になるとか。
文化の違いは、所変われば夫々に異なるので、どちらかが折れるか、慣れなければ仕方がない様です。だが馴染めば意外に楽しいことがあるかも。

・散髪屋の話

此処の散髪屋が髪を切るのは殆どがバリカン。ハサミでのカットは多くなく、聞きもしない。それでいて店内にはファッション髪型雑誌があって、現地の人はこれにしてとか頼んでいる。何処でも若者はお洒落には敏感だしマネしたい。
シャンプーは何人かの女の子が控えていて、一応は順番で(指名もOK)客に付きます。場所を移動してベッドに上向きになり、シャンプー台に頭を入れると出て来るのは「水」。南部は年中暑いのでいいが、湯を使う所は滅多に無い。シャンプーは誠に丁寧。難点は力を入れ過ぎてゴシゴシ、爪を立てられるので困るのだが、本人は一生懸命。殆どが田舎の出身者なので入れ替わりは多い。
マッサージも付き物。要らなければ断ればいいが、安くて実に30分は掛る。

以前、内装の仕事をしていた時。東京の有名店が進出するため一軒家を借りたのです。設計担当者はベトナムが初めて。一戸建ての大邸宅を改装して丸ごと美容室にするので設備もそれなりにと言うが、日本と違って建築方法や構造も違う、天上高も日本と比較にならない。給排水に必要なスペースに配管もなく二重床にするかだが、エアコン設置や電気配管をする場所にコンセントもない。
照明設備を設けるのにこれまた二重天上にするのか。それ以上に設計する上でベトナムの慣習、少なくても若い女性が憧れる「白亜の美容の館」を手掛けるにしては余りに当地の文化事情が分かっていない問題点が露出しました。
中でも設備図面の中には温水器がいっぱい。「これは?」との問いかけに、ごく自然に「シャンプーに使う」と何十台もズラーとならんだシャンプー台を指差して言います。「都市ガスはありません。プロパンです」。しかしもっと基本的「ベトナムで洗髪にお湯はどうなのかな?」といえば、「???」。「ボイラーが要るかな」。「ブロー」をするのにも電気容量が全く足りない。
ここでは水でのシャンプーが当たり前。会社が採用した女性に聞くと口を揃えて湯など使ったことがない。「これを店のコンセプトにするのかどうか?」。
この大邸宅、非難設備(屋外階段)、熱感知器やスプリンクラーなども全くない。これでは消防のチェックに引っ掛かる。何しろ外国の会社、厳しく指導される。VN企業であればまずはツー・カーの間柄、これまでは消火器を置けお咎めはなかったのですが、これはやられるかも、大掛かりなことになるぞ、と懸念。根本から図面を書き換えなければならないし、予算も見直が必要。まして申請は地元の設計事務所で役所にコネを持った所でないなど心配の種が多すぎる。
だがこの結末。かつて私が日本で勤務していたゼネコンに横取り?されました。オーナーのご指名とか、「次がありますから」と申し訳なさそうな所長。何処でもこんな試しは絶対にない。美の館だけにリップサービスか。アホラシ~。

・包丁の話

外国人に人気の日本包丁。刀が基本で独特の合わせ鋼に鍛造の技は世界にない。綺麗で繊細な日本料理には何十種類もの包丁があり、用途にあった使い分けをしますが、外国人の多くは器用でなく、職人の仕事など出来ない位に難しい。
昔は一般家庭でも出刃包丁に刺身包丁、菜切り包丁さらには用途によって各種ありましたが、今は文化包丁一本が多く、何にでも間に合わせます。
殆どの日本人はベトナム人家庭の台所やレストランの厨房に入ることがないだけに、目につかないのが包丁と使い方。そこは料理上手な私、ベトナム人経営の日本レストランに大阪のお好み焼きの作り方を伝授したこともあります。
日本人は果物や野菜の皮を剥く時、魚などを捌くときに手前自分側に刃を向けます。これがベトナムでは反対、外側に刃を押し出す。だがこれでは我々にはなかなか薄くは剥けません。手前に剥く日本、自分が怪我をしても相手には負わせないという文化なのか、日本人の精神性はこんな所にあるのかと思います。
包丁は何種類かあっても多くは安物で切れない。また刃を研いでいるのを見かけません。良いものではないが砥石もあって職人は使いますが、家庭で上手く研げないようでは危ない。簡単研ぎ器を日本の土産にすれば喜ばれます。

・料理の持ち込みと 余り物の持ち帰り

日本では飲食店に外部で買った飲食物を持ち込むのはタブー。一方ベトナムは高級店でない限り、基本的に持ち込みは無料の店が多い。例えばピザハットでビザを注文して食べながら、別の店のハンバーガーを食べたとしても注意を受ける事はありません。誕生会でもケーキ持ち込みを見かけますが、普通の光景。一番気になるのはやはり酒類。事前に聞けばいいけれど若干取られます。
また余った料理は何処でも白いスチロールの箱を持ってきてくれるのが嬉しい。どの店もいつも通りで気にもしないし、料金も要らない。日本は食中毒が問題だとか、衛生上とか御託を並べるが、食品廃棄は世界一1900万トン。食糧を輸入しなければ貧もじい日本、勿体ない精神は何処へ行ったのかです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生