ベトナム通貨に纏わるお話②

2020年12月31日(木)

・お釣りは飴玉かチューインガムの巻

さて、スーパーで買い物をしてレジでお釣りを受け取った際に、時おり大阪のおばちゃんが大好きな飴ちゃんやチューインガムが混じっていることが往々にしてあります。これを初めて経験する外国人は状況が理解出来ずに、うれしいオマケ、ヒデキ感激!なんて言うのも束の間。理由はすぐに判明してくる。
ここでそんな期待をする方が大間違い。よく考えると釣銭の金額が合いません。然るにこの飴玉かガムが曲者、500ドン程度の身代わりの正体です。一応は彼らなりの気を遣っている証拠だと其処は前向きに考えましょう。実生活では殆どの店員は英語を解せませんから黙ってこれをするので、余計に意味不明。
もちろん彼らには普段通りのこと。親切心から渡すのならばまだマシ。しかし貰ったほうはすぐに理解できることではありません。というわけで外国人など一瞬唖然。話すことも聞くことも出来ないのでどう考えても理解不能の面。
しかるに計算機片手にパニくってヒソヒソ話すというのが大体日本人観光客。言葉は分からなくても互いに身振り手振りで何とか意思は通じるもの。アジア人は互いに恥ずかしがり屋なのだが、聞くべき時は聞くのが正しい。

薬局でベトナム版メンソレ-タムと言うべき頭痛歯痛等々に何でも良く効く「白鳩マークのエンジェルバーム」を求めました。ところがこの時お店の方が一生懸命説明してくれる。「お釣りが無くてごめんね。飴玉でカンベンしてね」。これ位はわからない訳ではないが一応敬意を表してOKOK!Cam On Nhe!と言えば、先方はすっかりスマイル・安心モード。普段こんな場面に遭遇しませんから、何と心優しき人なんてこちらが妙に感動してしまう。

飴玉のお釣りはまだ良い方。下二桁の処理は大きいスーパーでも四捨五入などしません。殆どが切り捨て御免の憂き目。例えば398VNDなんて場合があるとするなら、日本人ならどうするでしょうか?200VND玉2個をレジに渡すか、1000VNで600VNDのお釣りがあると考えます。だけど此処では絶対にそんな事はしない。500VNDが天下分け目。詰まる所少額の釣り銭はカット。これを菓子でないきっとカットといいます。商道徳などない。
唯一例外なのは携帯電話のプリペイド。チャージした料金は使った分だけ自動的に落ちるので一桁でも端数は残り、確認すると画面に表示されます。

さて釣銭といえばタクシー。全車がメーター制なので料金交渉する必要が無いのは楽だが、こちらは飴玉もチュ-インガムも用意していません。
タクシー会社によって初乗り運賃も、その後の上がり方も全て違ってくるが、ボッタクリでなければ、同じ距離を走るならそれ程の違いは出てきません。
お釣りをキチンと渡す心掛けのいい運転手は極めて少ない。指導が全く行っていません。外国人だと残りはチップにもらって当たり前と勝手に思い込むし、
中にはわざと釣り銭を持たないとか、持っていても無いフリをする悪質なのがいる。但し当方に小銭が無かった時、飴玉やチューインガムを渡しても向こうは絶対に受け取ってくれない、小銭をたっぷり用意してイヤミをしましょう。何とか頑張っているのは首位を走るマイリン。でもその差は日本と歴然。MKが進出すれば一躍首位は絶対に間違いないが、厳しい教育に付いて来られるか。

もともとこの国では本来チップの習慣は無かったので、渡す必要はありません。
それでも何かと親切にして貰うと気持ちが良い。感謝の気持ちという意味合いで心付けをすることも偶にある。だがこれが利に聡いベトナム人にインプットするとどうなるのか想像に難くありません。
もうひとつ。汚いお札、字が書いてあったり、破れたり、セロテープで切れ目を張りつけたお札は絶対に受け取りません。もしこれをもらった時は遠慮せずにその場でつき返し、しっかり取り替えましょう。これは当たり前の権利。
汚い札から順次お客に釣り銭として渡します。だから常にババ抜きの実践生活。こういう紙幣は銀行でも取り替えてはくれないし、一旦渡せば同じ店で使おうとしても受け取らない。自分の非を全く認めないこの感覚、潔い「恥の文化」を持つ日本人には分かりません。
万一不幸にもそうなったら帰国時に、空港の透明プラスチック製ドネイションボックスに入れてください。但し誰の懐に入るのかは不透明で、保証できない。
と同国人が注意する。
当地に初めて来ると、両替する時点では急に大金持ちになった気分に浸ります。しかも暫くこの感覚が取れない。しこうして頭の中はグチャグチャ複雑な交換レートが交錯します。観光の場合は多分帰国されるまで無理なお話でしょうがこれが危ない。お土産を買うとかタクシーを利用されるときなど、「えぇぇ~ こんなに安いの~ まッ、いいか!」なんて決して思わないでください。
夫々の世界にはそれなりの標準とか常識というのがあって、後で困るのは当地でPOORしている在住邦人。でなくても日本人は気前がよく金離れは最高!金持ちと思われており、たかられるのが関の山。
他国の人は自説を曲げない強さがあって出すものはだす。時に絶対に引かない英国女性の強引さにはうんざりだが、義務と権利はハッキリしていました。
北欧の人はなんだか気前よくて穏やか。寒い国から太陽サンサンの国は憧れ?それにしても価値が減少する一方のVNDです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生