太ったね という言葉は文化世相の反映?

2022年11月4日(金)

ネット記事をみていたところ、ある日本人女性が久しぶりに会ったベトナム人の友達から「メッチャ太ったね」と言われたとある。話題になったのが、次にくる言葉。なんと「すごく可愛くなった」と彼女に言ったとあります。
このように言われて件の日本人女性はどう思ったのか。気になるところだが、本人は素直に嬉しかったと話しているのが爽やかで気持ちいい。
で、この素直な女性。実は摂食障害の過去があった。これは精神的な病に近いものがありいわゆる拒食症も含まれるのだが、実に怖い。だからこそ「太った」と言われるのが嬉しかったと記事に認めてある。

太ったね、は多くの場合ほめ言葉ではなく、如何にも嫌味か不健康な生活をしているとするマイナスイメージを想像させ、同情の余地なしが日本人です。
先の場合は魔法の言葉になっているが、本人の過去の事情と、友人の出身国の誉める文化を理解していたからこそ問題は無かったのと思われます。
概ね日本人は他人には寛容だが、こと肥満に関するとそうでもなさそう。一般論からすれば日本では痩せ願望が強く、若い女性に向かって肥満を云々するのはネガティブに捉えられる可能性が高い。もう少しスマート(痩せていれば)なら可愛いのに、といった表現が平均的な日本人の美的価値観なのでしょうか。
だが「美の巨人」に出て来る仏像を見ればふくよかなお顔、たおやかなお姿をしていらっしゃる。南洋の島国などは太った女性は健康的で如何にも生活力がありそうで、美の基準でもあり、写真をみて痩せた人は一人としていない。
これに反しアメリカ企業。肥満者は絶対にエグゼクティブに成れないと聞いた。即ち自己管理出来る強い意志がなければトップには不向きとされる所以だが、飲酒に脂質・糖質が多い桁違いの量といった食生活にも問題があるのは確か。
だから日本食が好まれるのか。
書店に行けばダイエットの本がズラッと並び、テレビではぶよぶよの腹が✕✕kg減量してすっきりしたクビレを披露。いくら払ったのか知らないが、教室での痩せ効果をPRしている。しかしそれでいて普段の食事通りで良いとは、ワケが分らない。所詮は飽食が原因でありエネルギー摂取過大だが、こうなるとケーキバイキングに通う免罪符になり、現実逃避して自己に都合のいい解釈に終始、直ぐリバウンドする危険性が孕んでいるのです。
もはや高齢の域に達したもん同士が集う我が高校の同窓会。河内のおばちゃん、おっさん同士が「あんた。しばらく見んうちに肥えたんちゃう?」と相手への気遣いなど一切せずグイグイ攻めて来る。あからさまでなくても「服ピチピチやんか」とか「お腹でてきたやろ」など、今や一歩間違えばセクハラとなるが、これに対して「ヤラシわ」と、嫌味でなく挨拶代わりに笑いながらの会話を飛ばせるのは伴にテンゴした仲間だからこそ。「うち 痩せてん」と真顔で言われる方が病気したんかなと心配するが、痩せ=病が潜んでいる場合もある。
病的な肥満は別として適度のBMIは心臓にいいし長生きするなんて説もある。減量効果を謳う側、少々肥満気味が良いとする側、何れに軍配があがるのか。しかしリスクを回避し健康寿命を左右するのは本人の心掛け。
太ることに罪悪感を覚える必要などない。程度の問題はあろうが、世の中には病気や体質的に太れないで悩んでいる人も居る。柳腰の女性を美しいと思うのか、平安朝のふくよかな体型が良いかは本人の自由。合併症に留意して体調を自己管理、最良の状態に保てばそれでいいのでは。

(ベトナムでは!)
ベトナムはどうなのだろうか。この記事に様々な意見がある様だが、観光に行った時に感じたベトナム人女性のアオザイに触れていました。これに拠ると多くの女性はスタイルが良い。ぴったりのアオザイを着て何とも美しいとある。
だがアオザイに既製服は無く、全て着る人の体位の寸法をくまなく計って仕立てており、多少襟の高さなどあるけれどピタッと収まる訳です。出るところは出ているが、これはパットを入れているなど涙ぐましい努力の賜物。
また戦中戦後に生まれた人の多くはヒモジイ食生活。栄養が充分でなかった為すっきりと見えるが、歴史的背景がそうさせているのです。

ベトナムでは乳児が1年育てばお祝いする。何度か招かれたけれど、一族郎党、親戚知人に友人が集まって祝う文化です。両親や祖父母から金製品の飾り物、友人などからも様々な祝福の品が贈られる。
なぜこのような儀式があるのかといえば、乳幼児の死亡率が高く、一年の間、無事に生きていてくれた。感謝とこの先も安寧に過ごせる様に切なる願いから。
だからまるまる太った子供は健康であり、長く国は貧しかったけれど、親がお金持ちでしっかり食事を与えているという証明でもあったわけです。
特段知る必要は無いにしろ、こうした文化や歴史を分らすに、知った被りは恥を掻くだけ。ポチャリ体形は不健康だとか言える筋合いはありません。
Beo Xinhという言葉。Beoは太った・肥えている、Xinhは綺麗・可愛い、という意味なのだが、まさにベトナムの子供への誉め言葉です。
だが食生活は大きく変化。健康的とされる伝統的ベトナム料理からファスト・フードへ。フライドチキンにハンバーガー、アイスクリームなど若者が好む高脂肪、高カロリーの西洋化が進み、過度の肥満に高血圧、肝臓病などが増えており健康を蝕んでいるのが現実。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生