不動産詐欺事件が続いているベトナム

2023年3月15日(水)

日本には地面師というヤカラがいる。5年前に大手不動産会社でさえ網にかかった有名な事件があり、経験豊富な用地担当者まで貶めるのだから生まれつき騙しの天才。
舞台は元高級料亭、念の入れ方も半端ではなくあたかも所有者に成り済ました年増をおかみに仕立て上げ、イケシャアシャアと物件案内までして信用させる。相手が女性だから納得。印鑑証明等の公的書類も偽造するか、本物を手に入れてあるから担当者は掌の中、すっかり信じ込ませているから微塵の疑問さえ持っていません。
手付金どころかご丁寧に残金まで払い、いざ登記に移ろうとしても出来ない。やっと詐欺に気が付くが金を騙し盗られ蛻の殻。
何しろ三十億円もの金が消えるから企業の評価はまさか真坂の下り坂。後の祭りとはこの事。この事件で会社は内紛の事態にまで発展したが、筆者の経験上、完全な会社側の甘さ、手落ち、手抜かりだと考えます。
司法書士まで見抜けないことがあるくらい手が込んでいる事もあるが、とにかく揃い踏みの役者の方が何枚も上だし仕掛けも巧妙とくるから真に迫っている。

因みにこの事件は結局未解決で、払った金の行方はいまもって分からず。
この土地は別の企業が真の相続人から購入し、現在タワーマンションを建設中。
4億円近い物件が売れているというから、この会社が一番利益を得たのは皮肉。

この様な不動産詐欺事件がベトナムで市民を餌食にして大規模に起きたのです。
HCM市に拠点を置く不動産開発会社アリババが運営するプロジェクトに投資した結果、4000人以上の人が騙されて無一文に。銀行から借りた人などは借金地獄に陥ったとあります。因みに中国のアリババとは無関係。
この会社2016年に設立。ドンナイ省、バリア・ヴンタウ省、ビントアン省に58ものプロジェクトに投資するとして22の子会社を設立。大きく出た。
ところが捜査に拠るとこれ等の物件は全てが農地で案件は違法。実際に顧客を安心し納得させるため虚偽の方法で宣伝を行う。あたかも開発地が存在するかのようにマッピングしたというのだが、端から騙すつもりだから大きい仕掛け。
報じられるところ、まんまと騙されたダナンの人は、南部に居る子供と一緒に暮らすためブンタウの2区画を5億8千万VND(24500ドル)で購入。その三分の一を保証金として支払ったとある。だがこれも初めから怪しい。
営業担当者はこの前に幾つかの区画を案内し、購入後1年以内に権利書が発行されることを保証するとし契約書にサインを求めたというが、もちろん嘘。
またドンナイ省の土地を購入した人は、105㎡を2億VNDで契約したが、営業担当者は、権利書は18カ月以内に発行されるが、そうでなければ会社が150%の補償金を支払うと約束。また投資に対しては15%の利息を支払うと勧誘。彼は親切心から友人などに合計10区画の土地を儲かるからと勧めた。わずか半年後に彼は3000万VNDの高利益を得たので、さらに追加で購入させられました。この時点でこんな話などあり得ずおかしいと気付くべきだが、人の心理はそうなっていない。美味しい話の裏には毒がある。
実はこの土地は近くに新空港が出来るため価格が上昇するなどと言い含められたようで、こいうったうわさ話は随分あり手口に使う道具としては世界共通。実際にロンタン新空港建設地周辺の地価上昇はウソでなく、道路アクセスなど地域整備も並行して行われており、公表されているから騙され易い。

こんな事情もあってかすっかり信用したけれど、この土地は実際には開発会社のもので無かった。自分で物件を調べるなどしないし法的知識など一般の人は持っていません。日本とて同じで被害者を責める訳にいかない。
欲に駆られ騙される方も責任はあるけれど、詐欺師はそれを上回ったやり手、人を欺くなど朝飯前。これと見込んだ人に喰らいつき、これでもかと巻き上げ、被害者の生活など何とも思わない悪質な手口など常套手段です。

おかしいと気付いたのは権利書の発効が遅い。電話してもノラリクラリで要領を得ないどころか別の物件を購入するよう摺り替えて来る。土地購入なのか、投資なのかもはっきりしないのも変だが突っ込まれると断れない。
とうとう事件が発覚して経営者が逮捕されたというけれど、出した金は戻ってこないどころか、借金しても出目論んだ高配当も消えてしまった。それ以上に殆どの人が高金利や値が上がると言われて購入したけれど、一銭も戻ってくるなどはあり得ない。全てを失い家族不和。親切心が仇、友人や親戚まで巻き込む結果となり精神的に落ち込んだとある。
一見親切そうな好人物は危険な臭いがするし、彼らは殆ど不動産関連や建築の知識など持っていない。ある程度知識を持つとか業界関係者が共に立ち会えば化けの皮が剥がれることだってあります。
HCM市人民裁判所は早計4560人から聴取する意向だが、もちろん被害者は出した金を返して欲しいけれど無駄な抵抗。さて裁判の成り行きは如何。

不動産詐欺事件はこれだけではなく、ビンユン省でも警察が摘発して経営者を逮捕してとの別報道も。12月に入ってから摘発が増えたようだが4年前位からこの詐欺集団は蠢いていたのです。
この開発地と称したが所にはご丁寧にゲートまで造って本物らしくみせている写真も掲載してあるくらいで、此処までくれば難なく騙されてしまいそう。
何しろ不動産会会社の歴史が浅い。一般の人でも信用調査はできるはずだし、他開発地の完成物件だって確認できるが、一刻の手間を惜しんではなりません。

ただ日本と違って境界杭など入っていないし、物件の公図(聞かない)や権利確認を役所で出来るとか、道路関係や地下埋設管の位置を図面で見る(あるのかも不明)など開示していないので、市民なら誰でも公的資料を自由に調べることが出来るようにすべきだろうと考えます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生