トルコ南部が震源地として発生した世界最大級の大地震。多くの方が亡くなった原因の一つに挙げられているのが建物の崩壊。いとも簡単にクラッシュしているが、これは違法建築だそう。前回の地震の際に耐震構造の見直しを行ったので強度はある筈とか。だが多くの建物で手抜き工事が行われていました。
見るからに鉄筋は細く本数も足りていない感じ。柱、梁も小さく壁は煉瓦で耐力のなさが見て取れる。
在住日本人建築士の話では6割以上がこの様な違法建築。後で手数料を払えばいいとあるが何ともいい加減。200人が逮捕された様だが後の祭りです。
日本でもこうした違反が絶対に無い訳ではないけれど、地震が起きる度に耐震構造が逐次見直されてきて新築の建物には新基準が適用されている。
こうなると建築工事費がかなりあがり、販売価格にも反映されるのは開発業者としては実際に辛いものがあります。構造計算のし直しで鉄筋量が増えるとか、コンクリート量が増すほどに柱や梁などが大きくなりその分は意匠で苦労する。
しかし古い建物には適用されないので、資金が無いので耐震補強工事を行わないまま放置されているのは公共建築物にも多く存在する。たとえ地震が来ても少なくても崩壊せず人命が救われることになる訳で、これはやむを得ません。
また大手建設会社などは耐震もさることながら、免振に研究を重ねてきたので日本の建物の多くはかなり安全になってきていると考えられます。来るべき大地震に備えて出来る限り被害を少なくする技術は日々進化していると思えるが、それでも実際には何が起きるか、その時誰もでないと知り得ない。
阪神大震災の際、西宮の親類宅に幾らかの食品を持って行ったことがあります。
阪急電鉄は線路が使えなくなり、やむなく途中から徒歩。新築間なしのことだったので、それはショックであったけれど家はびくともしていなかったという。しかも箪笥が倒れたけれど壁に当たって家人は難を逃れたのは幸いと言えます。
駅前の喫茶店はこうした人々のため、無料でコーヒーを振る舞っていたのだが、こうした時に経営者の考えが形になって現れます。
地下鉄も梅田までしか運航していない。会社のある西中島南方までは歩いたが、淀川から神戸方面が煙に包まれていたのが見えて愕然。早速所属する課の全員の確認を行ったが、西宮在住の社員は一人どうしても連絡が付かず、どうしたものかと不安な一日を過ごしたが、翌日に要約連絡があったので一安心。
ところが社員一人のマンションが被災。購入して間なしなのだが、転宅前の家は売れないままにこれも被災してダブルパンチ。彼に降って湧いたのは天災とはいえ多く負債だったのです。
他にも全壊の知人宅もあったが、命あって物種。とはいうものの圧し掛かるこれからの人生は辛いものがあり、本当は慰めにもなりません。
トルコの地震の大きさは阪神淡路の20倍とか。余りにも広範囲だが、ある街の町長は違法建築を認めなかったため、其処ではこうした建物への甚大な被害はなかったと報じられていました。
海外で金さえ出せば何とかなる、という事は珍しくないが、中にはこの様な方が居て町全体が救われた模様。しかし勇気のいることだし、ともすれば誰かの手に掛って消されてしまうことも無い訳ではない。
日本でマンションを購入する際に、その建築を担当するゼネコンが何処か気になるのだが、価格は高くても安心できるのはほぼ間違いありません。
やはりこれまでの信用は絶大で、業界に居たことがあるのでどの下請け企業を使っているかも分かっている。工事報告書もしっかりしていて特に必要箇所の施工写真も添付され、設計指示通りの鉄筋が入り、コンクリートも強度試験やスランプ値もきちんと明示されている。一般の方には馴染みはないがこうしたことも一つの選択理由にもなる。しかし杭長が足りず建物が傾いたりする場合もあって、こうした場合、日本では管理組合がしっかりと機能することも大切。
かつて筆者が居たマンション。上場企業だが、施工不備がありこれを理事会で追求。大手建設会社の設計者が居た、有名弁護士が友人という理事長も居た。
事業主は初め応じなかったが、彼らの弁護士と当方の弁護士は大学の知り合い。
話し合いでうまく補償を取り付けたが実は珍しい。だが裁判をしてまでというのは日本ではなかなか馴染まないのでかなり難しい。これは管理組合に費用と専門知識が必要であるという事だが、資産として将来居住者の利益となることを全員が認知し、これを誰かが纏める力が無ければ何ともならない。また販売会社に知識や経験が無い場合がかなりあるのも事実です。因みにこの時の支店長とやらは銀行からの出向者。これでは務まりません。
・ベトナムで地震が起きたなら
HCM市はデルタ上に形成されているので、安全とされるその支持層まで20~30数メートルに及びます。日本でも埋め立て地では40mなどという場合もあるので、しっかりと然るべき杭を打てば一応は安全と解せられます。
だがこうした地盤は出水が多く工事はかなりシンドイ。仮に杭工事が進んでもこの家庭で隣接家屋が傾くなんてことは多々あって、これを何度かHCM市内で見たことがあります。
こうした状況なので、まして一般の市民が住む戸建ては軒を並べており、一軒が傾いても連なる家で支えられるか、将棋の駒、ドミノ倒しになるか。一般的に平屋は杭を打たないでいいけれど二階建て以上は杭が要ると言われています。だが殆どの家は敷地が狭く、進入道路も大型車が入れないのが実態。
ではどうするかと言えば杭は現場で制作する。あまり長くのは造れないので精々10m。これを溶接して繋ぐのです。コンクリートも現場練りだが、混合の割合などは全て経験則、さらに充分に強度が出ないままに打設するのです。地盤は豆腐の様な具合なので、面白いように沈んでゆきます。
一軒家の場合、柱型の大きさは10cm角、中に入れてある鉄筋は丸筋(SR)10mm。これを4本入れているのだが、スペーサーは無く適当。
こんなに細かったら、地震が来たら一発やな。現地に来た技術士が驚いたのは無理もない。そのとおり。地震が無いという前提だが、誰も疑わないし、地方でも同じ。然し絶対に地震が無いという訳ではありません。筆者は在住17年でただ一度遭遇。部屋の照明が落下したことはあるが、それ以上の大きな被害はありませんでした。だが此処には断層は無く火山性でも無いので何が原因なのか良く解かりません。
さてこの杭を打ち込んでから、この上に柱を建てていくのだが、多くの場合は地中梁を造りません。また1階の床も土を入れてその上にはモルタル仕上げが多く、従ってクラックや沈下が後で出てくる可能性が高い。さらに壁も煉瓦を積むのでこれでは万が一の場合、なんともなりません。だが人間の知恵、この穴あき煉瓦の空気層が断熱効果と湿気を遮断する効果があるのです。とにかく暑くて湿度が高いと来ている。また各部屋の階高は高く最低でも3メートルは確保しており、暑い空気が抜けるように自然管機構が備わっている。もちろんエアコンが無いという前提だが、このところは設備にも変化が起きています。
この様な具合なので、地震の規模が大きくなくても倒壊とかの被害はあるかもしれません。またその他の社会インフラはどうなのか。これは全く予想がつかないが無傷でいられない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生