火災より窃盗を恐れるベトナム人

2023年7月18日(火)

ベトナムでは全国で過去5年間に17,000件以上の火災が発生し、433人が亡くなっていると公安省の統計があります。また今年1~4月迄の統計では522件、即ち一日4件であり、死亡者は46人となっていてかなり多い。
火災は都市部が60%を占め、その原因の一位は電気設備や電気設備のシステムに問題があったからとし、45%がこれに依拠している。と現地のメディアが報じていました。日本と違い構造は煉瓦の組積が主だがそれでも起きている。

HCM市一区、地下鉄新駅ができるベンタン市場の近くで10年数前に発生した火事の原因も漏電。この火災で若い従業員が数十名亡くなった時、偶々近くに居て、サイレンが近いので何処かな!と思ったくらいだが、もうもうと煙が上がっていました。この時驚いたのは消防車に載っている吏員、何と上半身裸。
幾ら暑いとはいえ開いた口が塞がらない。噓みたいな記憶がある。まさか今の時代にこんな狂態があろう筈はないが、慌てて駆け付ける演出とも思えません。
面白可笑しく書いているのではなく、実際に目がテンになるほどの衝撃であっただけ、目に焼き付いています。

では、家の躯体はほぼ不燃なのにどうしてこんなに火災事故が起きているのか。
建物の老朽化で配線などに問題がある、というのは当然だが設備の点検などは行なわない。共通するのはバイクの話で、無料点検には行くが、調子が悪いと思っても販売店に持ち込むことはしません。壊れるまで使い倒すというのが習慣のようで、要するに金を掛けてまで保守点検しようとする気がありません。
先の火災では逮捕者が出たけれど、そんなことよりなぜこれ程までに多くの命が失われたのか。
建物の出入り口が一つしかなく非常階段はない。火災報知機やスプリンクラーなどの防災設備もない。燃えやすい建材と構造、古い建物にはこういう盲点があるのに追加設置していない。付け加えると、電気工事は極めて粗雑であったと考えられるが普段のことだし、何しろ電気技術者の国家資格などありません。
さらに日本のような消防署の定期点検とか、査察など当時は無かったのです。あっても幾らかの金銭でその場を繕っていたのかも知れないという悪習。これ等が混じり合って尊い若い犠牲者が出たと思える。いわば人災、火災より厄介。

流石に今ではこんなことはない。多くの商業施設でも見掛けるし、以前に日本の大手美容店が同じ一区で結構大きなヴィラ一棟を借り受けて、内装をしようとした。東京の設計事務所から依頼があって見積もりしたのだが、この時に、消防は非常階段が無いとして設置を義務付けてきた。これにはビックリ、何を思ったのか、前と違っていると思ったが、進歩というか改善されていました。
因みにベトナムは6階以下の戸建てに消防法の消防安全義務は課されてない。
5月の国会で議員から建設大臣に対し、ベトナムの消防法は厳しいとの意見があり、答弁に立ったギー建設大臣は住宅や工場の安全基準はむしろ全体的に低いとしています。これは工場建設で使用する塗料の規定に関しての質問だが、ベトナムの消防上の安全基準は公安、建設、商工、科学技術省が各省で纏めていてバラバラ。
各工場の建屋や工場は地域の消防署が権限を有していて、国の統一基準がありません。大臣はこれを建設省の研究所に命じて纏めているとしています。
問題は緩い既定なのに議員は厳し過ぎ罰金を課される企業が多い、基準や規格を改正しろと要求。このままであればCOVID-19で苦境に立った企業が数千社倒産するとまでいう。即ち安全基準に満たない企業が多いとの裏返し。
事故が起きてからでは遅いのに改正して緩和しろという発言は言語道断です。
厳しくするだけでは脳が無いが、こういう甘さが未だに各種あるのがビジネスにも影響してくる。

・ベトナム人の考え方と防犯

日本ではマンションなどが完成すると消防署が検査に来る。設計通りに工事が出来ているかを立ち会います。消防ホースの格納に避難通路、バルコニーには
避難用の開口部があって、梯子が収納されている。各住戸には熱感知器や煙感知器の設置。廊下などへのABC消火器の設置に駐車場の消火設備等々がある。
最終的に消防のOKが出ないとビルや建物は使用できません。こうした設備などがあっても、それでも火災は起きる。

私が購入したアパートもご多分に漏れず、何もない。2階だからまだいいけれど、3階、約10mとすれば、この高さから飛び降りると先ず死ぬと言われる。
バイクの駐輪場や階段には消火器はないし、かつてガソリンを抜き盗られた事があるけれど、もし火災が起きてもゲートに居る警備員は為す術はありません。
またアジアに共通するのが鉄格子。流石にこのアパートにはなかったけれど、一戸建てには窓、バルコニーにまで鉄格子をはめ込んでいます。日本でも設置しているが万一の場合は内側から外せる構造。だが此処ではしっかりと埋め込んでいるし、巣材が鉄なのでビクともしません。これが多くの死者を出す原因になっていると伝えていますが、さらにこれを虎の檻と呼んでいる。鐵工所ではこの鉄柵の依頼が増えているとも報じているのは気掛かりです。

アパートの住民でさえ進入と盗難を恐れて鉄格子を注文する。実は勝手に自室の窓に設置するのだが、本来は認められないけれど誰もが平気でやるのです。
ベトナム人は結構家に侵入され、盗難被害に遭っている。こうして自己防衛をせざるを得ないとも言えなくないが、釈迦に説法、糠に釘。

ハノイ市では2021年に住宅の消防対策規定なるものを発行し、避難経路の確保や、鉄格子のを出入りが可能な隙間を空ける(意味が無いので反発)などなど、火災発生に備えた設備の義務付けを規定したけれどなしの礫とか。

市は市民が火災対策より防犯対策を重視する傾向が明らかだとしている。盗難対策にはこの所、指紋認証のドアロックやカメラ内蔵のインターフォンもあり、設置する住人は増えたとあるが、火災警報器や熱センサー、消火器を買わない。
ではその思考とは、もし火事になればドアを開けて逃げればいいというのだが、最初の2~3分が勝負、生か死かの分かれ目だというが、学校でも避難訓練などはしておらず、生徒は怖さがまるで分かっていないという。
ベトナムには消火器を製造している日本企業の工場も進出し販売しているし、防犯カメラの販売も急速に増えている。2021年には年間400万台が売れたとあるけれど、ベトナムは世界の住宅用監視カメラの設置率が世界のトップ10に入っているほど意識は高く、その市場性も盛り上がっている。けれども火災用の設備機器を買う人は滅多に居ないと報じて居ます。
ではなぜベトナム人はこのように防火設備に無関心なのかだが、これは国民性にも拠り、識者は3つの考え方に起因するという。
それは、先ず心理的に油断がある。自分には関係ないというのだが、これは我々にも共通する事で、交通事故など起こさないというのと同じ理屈です。
二番目は実際に使うかどうかわからない。即ち火災が起きてからでは遅いのだが、万が一の為という物に金は掛けたくないと言い、それよりも泥棒に入られるのがもっと損するという考え。どちらが損か得かという勘定が先という感情。
三番目はこうした家庭用防火設備や機器の設置義務が法律や法令に無いという理由。仮にあっても無視が殆どなのだから言い訳に過ぎないのだが、なにしろこうした費用は設置個数や何を設置するかに拠って異なるが、数十万VND~数千万VND必要とされるのでは、事前の防災にせよ目に見える金の使い方をしたいとなる訳です。
だが中に近所で火災があり、このため住人が何億VNDも無くしたとし、少なくても初期消火が出来るようにABC消火器、火災報知機と、ハンマーが入ったセットを110万VNDで買ったとある。備えあれば憂いなし。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生