ベトナムで製造業を行うには、政府が認可した工業団地の中で操業するのが一般的です。ベトナム計画投資省の最新の発表によると、ベトナム国内の工業団地は約330カ所あり、その中には日本の商社が運営する日系の工業団地や、非日系でも日本人担当者がいて、様々なサポートをしてくれる工業団地もあります。本稿では日系企業が進出する際に適した工業団地選定のポイントについてご案内します。
工業団地のタイプ
工業団地のタイプは大きく次のような3タイプに分かれます:
- 土地分譲:工業団地の開発会社が土地をテナントに分譲し、テナントがその土地に工場を建設するというパターンです。但し、土地を購入した場合でも、土地の所有権が最大で50年と定められているため、所有権の残年数を確認することが重要です。
- レンタル:工業団地の開発会社が標準仕様のレンタル工場を建設し、それをテナントに貸し出すタイプです。レンタル契約期間は通常3年以上となっています。初期投資を抑えることができ、万が一の際も撤退が容易なため、中小企業が進出する場合はリスクが軽減できると好評です。
- BTS (Build to Suit):工業団地の開発会社がテナントの要望に基づいて、自社の土地に自社費用負担で工業を建設し、その建設費用を月々のレンタル料に加算してテナントに請求するというスキームで、通常5年または10年の契約になります。レンタル工場の標準仕様では不都合だけれど、土地を購入して自社で建設する初期投資を抑えたいという場合には、お勧めのスキームです。
工場の規模、予算によってどのタイプが相応しいかは異なってきますが、通常は5,000㎡以上の規模の工場の場合は、土地を購入して自社で工場を建設した方が効率的だと言われています。
工業団地の開発会社は3種類
ベトナムの工業団地の開発会社は大きく分けて3種類に分かれます:
- ローカル資本:ベトナム資本の工業団地は当然数の上では大半を占め、土地代やレンタル代は安いですが、インフラや言語対応の面で問題がある場合が多く、余りお勧めはできません。
- 日系資本:住友商事、双日などの日本の大手商社が投資した工業団地は、日本人の担当者がいてインフラ面でも充実していますが、土地代やレンタル料はその分高めに設定されています。
- 非日系外資:日系ではなくても欧米やシンガポールの外資が開発した工業団地があり、インフラ面でも問題がなく日本人の担当者を置いている所もあり、日系と比べると土地代やレンタル代が低めに設定されているので、お勧めです。
基本的に進出する際に必要なライセンス(会社設立、投資許可、等)の申請は、工業団地の開発会社が行ってくれますが、ローカル資本の工業団地ではベトナム語でしか対応してくれない場合が多く、非常にハードルが高くなってしまいます。また、進出後のトラブル(例えば工場で雨漏りがあったり、シャッターなどの設備が壊れた場合)もベトナム人対応になってしまうので、迅速な対応は期待できません。
前述のように土地を購入するのか、レンタルにするのかをまず検討し、次に日系にするのか非日系外資にするのかを検討することが第1ステップになります。
米系資本で建設されたレンタル工場
レンタル工場の内部
日本の商社が開発したテクノパーク
(BW Industrial Development JSC 日本デスク 齊藤 公)