金融と不動産の動きについて

2023年4月5日(水)

昨年はHCM市とハノイ市の両証券取引所に上場している株式の80~90%が下落。年初来も下げて取引が行われたのです。
不動産開発業者のFCLの92%下落が大きく関連。またノバランドも84%、ファットダットも81%近くの下落。また銀行でもTPバンクが最も下落して49%。鉄鋼株でもVG鋼管が72%。非上場株式は平均68%となっている。

不動産企業関連での金融問題は、1月に社債と不動産債権が満期となるため、この巨額償還が17兆5千億VND(96、3億円)にもなるとある。昨年に不動産開発業者は約52兆VNDを発行しているが、貸す方もどうかしている。果たしてこの売れない時節、返済できる企業があるのか懸念されています。
返済できないなら倒産しかないが、こうなると不動産市場は失った信用を取り戻せず、完成在庫だけが増えて空き家だらけの混沌とした状況が続くだけ。
また銀行自体にも課題を抱えていると現地報は語っている。すなわち不良債権が増加するという大きな問題があります。
今年も金利は上昇傾向にあるとしています。しかし経済の回復度は速くは無く、不動産開発業をみると販売しようにも売れない、売れないから値段を下げる。また様々な詐欺行為が昨年摘発され急速に信用が落ちた。こうなると殆ど動かなくなるので資金が回らない。負のスパイラルに嵌った。しかし不動産業だけではありません。
2023年度にはこの総不良債権は約4%になるとの予測、アジアでも高い方だとされています。

ベトナムの銀行の自己資本比率は商業銀行で約12%。これは主要国では低いとされている。また銀行のシステム自体が脆弱なので、依然として増資が難しい環境にあるため外国の投資家を見つけられないとしています。
次に指摘されているのは流動性の低さ。預金などの流動性の高い資産は減少し、28銀行の昨年の預金総額は176兆VND、年初から48%も減少しました。
この様な状況の中でベトナムの投資家は、主要世界市場でインフレ傾向にあるとして今年利益を上げるため金、株式・債券、デジタル通貨に焦点を当てているという。スタンダードチャータード銀行の分析では彼らの関心は金。しかし実際は投資家の50%が株式、44%は債権、さらにデジタル資産にも投資しておりその比率は80%を超え、世界標準の66%からみてもトップクラス。暗号資産FTXが破産、なのに損を承知でなおも大半がデジタル投資を継続するというほど魅力を感じているというが、これはれっきとした投機に過ぎません。
現在の世界情勢とベトナムの不動産絡みの株式と債券市場を観て、80%の人は不利な市場から投資先を変更。さらにインフレの予想から、資産をプロの優良資産運用会社を選ぶようになったのです。
調査ではこれらの運用会社は、投資ポートフォリオの株式比率を10,9%から7,5%に引き下げる予定だとあります。
ベトナムの機関投資家がどれくらいの資金を運用しているのか、充分な資料を見つけられないが、日本人と比べ少数ながら資金運用量は半端ではありません。
個人株主が余剰手持ち資金を手慰みで投資。僅かの儲けで喜び、日々ボードを見て一喜一憂するのとは訳が違う。これを考えればポートフォリオの株式比率低下は大きく、株価に影響が無い筈がないと考えても可笑しくありません。
こうした一連の状況を考えると、今年の株式の見通しは芳しくないかもしれないとみるのが適切な感じがします。

・不動産の動き まずは業界の専門性の低さ

現地で発信する不動産の専門ネット記事には毎日何本か掲載されています。
多くの人は住宅に関心が高く、素敵な家に住む事を誰しもが憧れる。建築雑誌も出版されているけれど、外観や内装・設備、間取り写真などが数多くあって気を引くが、素人向きでそんなにレベルは高くない内容だと感じるのです。
不動産専門の媒体や、物件情報を全国ネットで扱う企業もなく、売買の際には業者の店舗に行き仲介を依頼。個人で新聞に広告を出すとか電ビラをベタベタ貼り付ける。オンラインも普及しているが、何れも信用度は低いかと考えます。
ベトナムでは何れの職種でも専門的な業務を行うについて、本来必要であろう国家資格はないのでバラつきがあり、全国レベルでの標準化もされていません。従ってTOEICやTOEFLなど国際的に通用する英語力スコアは別として、不動産業に於いては中古・賃貸媒介にしろ、新築物件の販売であっても、関連する高度で幅広い専門知識を持っていない人は実に多いのです。単なる斡旋、顧客にとっては一生に一度かも知れない不動産を取り扱うのでさえ、歩合のセールスにしか過ぎないので、勉強しなくても千三つで仕事が出来るのです。
事実物件を調査している訳ではなく、充分な予備知識も待たずに案内するため客からの質問に答えられない。代わって売主の筆者が説明したとか残金決済時にも業者の立ち合いなどなく銀行で買主と待ち合わせ。互いに意思疎通が出来たために事なきを得たけれども、普通はそう簡単にことは運びません。
日本では測量士や土地家屋調査士、登記するのに司法書士と極めて高度な資格が必要だが此処にはありません。その地域の顔役のような人物(素人)が常に役所に出入りして小遣い稼ぎを行っていました。本業では無いので期限は守らない、正確ではないなど極めて無責任。しっかり費用だけは請求してきます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生