不動産に関する根本的問題 バブルへの道

2024年3月5日(火)

不動産に関する根本的な問題や原因とはそんなものではありません。ではこの起因するものとは何か考えてみることにします。
ベトナムの急成長した背景と不動産の関連性。これが全く思考の範疇にはない。またこの国の土地は各位がご承知の通り国が所有しているものであり、国民に所有権はありません。使用権のみであるけれど、自由に売買でき、高利益も認められる所に歪で幻想的な社会主義の土地制度が罷り通っている。
経済が発展してきて生活環境に極めて大きな変化があった。即ちと産業構造に変化が起きて現金収入が得られ、多くの人が豊かさと便利さを享受できるようになったのです。
味を占めさらに豊かになりたい。しかしこの国と地場企業には何の資本の蓄積、技術にノウハウがありません。あるのは兼ねてから言われてきた「若く手先の器用な人材が豊富」。そこに外資を導入する。すなわち海外からの投資により、資本と生産手段に経営管理能力を持ち込んでもらいモノを生産する訳です。
さらにこうした外資系企業が生産活動をし易いように、インフラ整備が求められるがこれも資金がないためODAと借款で対処することになる。こうなると何時まで経っても海外に頼り切りで、その呪縛から抜け出せない。
簡単に言えばこうして万年赤字体質から何とか脱却して貿易赤字を解消してきた訳です。だがこれはまさにサムスンの進出に拠る携帯電話の生産が始まってからだが、国内地場産業は未だに一次産業に拠る体質が強く、製造業にしても政府が目指したもの作り、裾野産業を育成できないままに下請け的に甘んじた。
外資系企業が生産する製品の輸出比率は年々上がっているのも実態。表向きはベトナム製となってはいても外資企業の賜物であり、これは輸出割合をみれば分かることで外資系企業は実に73%以上であり、減少するどころか増えている。要は地場企業と政府の自助努力が欠けていてR&Dなど出来ない。従って外資系企業進出に際し、近年政府が求めるのは技術やノウハウの開示であるけれど、こんなことを平然と要求しても簡単に応じられるわけなど無く、坊主丸儲けは通用しない。此処にこの国の弱点があるのです。

こんな背景の中で、先ずは地方から生産に必要なワーカーを調達するため人の都市集積が始まる。実際にある日系企業は社長秘書の出身地から年間500人を採用していたほどだが、当時は何れの企業も社員寮などの厚生施設が無く、彼らは狭い部屋を借りて数人で共同生活を余儀なくされていました。
これまで市中心部でも生活出来ていたけれど、人が増えるに従って住居が少なくなり、並行して部屋代は上昇するため郊外に分散してゆくことになります。
HCM市第一号の工業団地はタンビンEPZだが、その後アジア最大と言われたフリッピンのスービックを抜いた7区のPMH・EPZが、台湾企業と合弁で造成されました。しかし当初入居企業が少なく様々な優遇策講じ日本企業を誘致、成果を上げていった。進出企業が増えるに従って周辺省にも工業団地が急拡大していったのだが、これに並行して不動産開発が行われ土地価格の上昇が起きたけれど、筆者はこの時期に在住、流れと経緯をつぶさに見てきました。

あさましいのは人間のサガ。ありもしない開発計画をでっちあげたが、これに乗せられ不動産素人は、一攫千金を当てに大枚をはたき、金が無ければ無理に借金をしてしまった。まるで原野商法と同じで、大手企業が一帯を地上げして大規模住宅地を造るものでは無い。単なる区割りをしただけの図面を見せられ、
「私は此処を買った。将来儲かるよ」と親切に勧めてくれたのは日本企業に務めていた頃からの知り合い。姉の経営する不動産屋に転身したが、怪しいので止めろと忠告したが後の祭り。金持ちになりたかったが価格は急降下の白日夢。
この土地騒動は全く法律(整備されていない)、建設に知識など無い者が扇動。あるいは地区委員会と有力地主がつるんで台本を描いていたケースもあったが、ゲームと同じ、人の噂なんて自然に大きく膨らんでゆく連鎖の怖さがあります。
要するに経済発展で地方から現金収入を求めて人がやってくる。このため住宅が必要になる。また外資系企業の進出と工業化が発展してきたため、省がこれは金になると、工業団地をドンドン造成していったという過程がありました。

・金融の流れ 利益を手中にした金持ちが再投資を繰り返す

不動産価格が上昇する要因のひとつに挙げられるのが株式市場。ベトナムでは2001年にHCM市に市場が開設されている。当初は日本の野村證券が支援するという筋書きだったが、国内の問題でシンガポールになったという事情があります。結局少し遅れたようだが関心を呼んでいました。だがまだ一般市民が口座を開設して投資するという状況になく、金融に慣れていないためであるけれど、事情に通じた人ならばこの当時は株式分割や株配に配当額も結構多く、堪えられない面白さがありました。外国人は口座開設できない頃だったので、こうなると名義借りだが、金にまつわる実に多くのトラブルが発生したのです。
HCM市に資金を持った人が北から来て、インサイダーの情報を得て投資する。
この時分はHCM市で様々な儲け話が仲間内での裏社会で蠢いていた。
株で儲けた金はしっかり賃貸アパートに投資。外資系企業が増えだした結果、外国人が生活できる設備と警備があり、安全な高級アパートなどそれほど多くなく高額でも借り手は数多居た。利回りなんて考えなくても8年経たずに償却できる訳で、面白い程に金が入り笑いは止まらず目いっぱい買い漁ったのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生