ベトナムの不動産市場 東南アジアで最も透明性が低い

2024年10月17日(木)

ベトナムは東南アジアで最も透明性の低い不動産市場と評価され、評価対象6カ国中、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンに次ぐ最下位になったと現地メディアが報じています。
ベトナムは不動産コンサルタント会社JLLの2024年度世界不動産透明性指数において89カ国・地域中49位となった。 東南アジアではシンガポール13位、タイ32位、マレーシア33位、インドネシア40位、フィリピンが45位だったとあります。
この指数は、対象市場の151都市から得た定量的データと調査結果を組み合わせて透明性を評価したものとなっているが、よく分らない。
各市場は投資パフォーマンス、規制・法律、市場のファンダメンタルズ、取引プロセス、コーポレート・ガバナンス、持続可能性の6つの要素に基づいており、低いほど透明性が高いとされる1~5点のスコアを獲得。
スコアが1.96未満の市場は 「透明性が高い 」とされ、それ以上の市場は 「透明 」から 「不透明 」までの4つのカテゴリーに分けられるとあります。
ベトナムは半透明市場に分類され、投資パフォーマンス、規制・法制度、取引プロセス、持続可能性の4つの分野で最下位。アジア太平洋地域では、日本が最も透明性の高い市場として11位にランクイン。なお今年のアジア市場では2022年に最も改善が見られ、特にインドが世界でトップの改善をしている。
また記事の中には建物性能基準の義務化、エネルギー使用量の公開は透明性の高い国でされているけれど、逆に透明性の低い国はしていないようにあります。
JLLの投資市場担当CEOは投資家が透明性を重視する傾向が高まる中で、特に明確な価格設定と堅実な要因を持つ市場が不動産の流動性の回復をリードする可能性が高いと述べている。

どだい調査会社とはいい加減なもの。彼の国での取引を担当者が実際に売買をした経験則からではなく、建築性能基準に関しても本当に分っているのか疑問。その多くはヒアリングや伝聞に頼って意見を纏めているだけの話、本来は数値で計れるものではないため、絶対的に正しいといえるものではない。
また全ての国の不動産法規制や真の不動産取引の実情や実態に精通し、理解できているのか分らない。だがベトナムは不動産に関して透明性が低くアジアで順位が最下位なのには納得できるが、それでも半透明とするのは同意できない。

不動産取引といっても開発・分譲(販売物件)なのか、ビルやアパートを保有して賃貸物件を扱うオーナーか企業、また仲介なのか、これでは分らない。
多くの国は自由主義社会、土地は私的所有が認められているけれどベトナムは公有制であり何人も所有権などありません。ここに多くの問題が介在、役人と結託する者が出て来る図式は多くのこのような体制である国の特徴でないかと考える。これは外国との資本取引でも現れ一方通行、公平さは担保できない。
一般市民は都市計画などには蚊帳の外に置かれ、一般に公表されることは少なくそこに利権が絡むことになる。結局は金のある人が、権力と権限を有する者と繋がれば、意のままに動かすことが可能なので、捉らえ方は色々あるけれど、これが社会主義の権化でもある人治国家と揶揄され、良くない意味で使われる。
となれば何しろ役所の権限が強く、法律には不備が多いし地域の慣習が罷り通るので、公明で誰にも正しい取引が為されるのには極めて疑念を持っています。
未整備な法律故に問題が出てくれば、権力者の勝手な解釈が幅を効かせる事で利益を受ける開発関係者に有利な方向に差配される結果となるに決まっている。巨大開発などはインサイダー情報として、権力側から一部の特権階級に出回り荒れ地を安い値段で購入。大儲けをもたらすことだって過去にはある。しかし時としてニセ情報に惑わされ、何ら知識のない人がデマに乗せられ有り金を失う場合もある。何れにしろ、都市周辺での大規模開発で追われるのは貧困層。
有無を言わさずに沼地でニッパヤシの葉で造った家(壁・屋根、屋内は完全な土間)まで安く買い叩かれるとか、奪われ追い出された歴史だってあるのです。
戦後のドサクサに紛れ、レッドペーパーが無いのを知りながら安い土地に家を建てた人は法的保護が無く放り出される。こんな場所もある。こうした戦後間なしの時代の申し子だが無策の行政、誰も地域一帯の開発に抵抗できません。
この辺り法が出来ていなかったとか、すでに家を建てているが違法だとしても一文も貰えないのは、法制度が不透明だと問われても仕方がありません。

また不動産に関連する事業や取引は超専門的業務なので、難しい法規を修得し、また充分な経験有するという前提ではない。さらに能力さえあればコネでなく仕事に就くことが出来る資格制度はありません。要するに誰でも出来るわけで、業者によっては素人で構わない。アパート販売員など単なる歩合セールスマン、知識など全く持ち合わせず売れればいいだけのこと。相手の事情は関係ない。
実際に筆者が自身のアパートを売ったとき、オーナーは知り合いで日本語が出来るため、日本人顧客が多かったのです。日本人も現地で不動産が一定条件下で購入できるけれど、この一連の状況から勧められるものではありません。
海外で不動産を持つのは夢に違いないけれど、何時法律が変わるか分らない。
自由主義経済下で法的に保護されていると勘違いしてはなりません。国内での不動産売買を前提という間違った考えは危険。現地事情を知らないまま説明会に参加する、現地も知らず、行った所で短期間なら理解できる由はありません。
多くの場合、役所との人的な強い繋がりがあり、例えば地元有志とか親戚知人など一族絡みで仕事が進む場合が多く、これには情実や金銭が絡むことは多い。日本の様な報酬額の規定や明示が無く、爾後に言われたままに支払う。これには相手へのリベートが含まれることだって大いにあるので、全く透明性はない。
さらにこうした低レベルでの問題ではなく、もっと政治的絡みで悪質な場合もあり、用地買収や建築規制だっておこぼれに与る可能性は高いし、事実いくつかの開発事業でこうした噂が出ているのは確か。誰もこれに関して文句が言えない。そこまで荒れている現状があり常識の範囲。すると金のある人がさらに増殖、何らかの形で報いられる訳なので、不動産関連の事業は実に美味しい。
これが取引のプロセスが最下位という理由なのだろうと思料します。これはかつて日本が役場や警察官、郵便局員などが村の有志の関係で成り立ったなどと同じであり、ある意味で世襲制みたいな感じであった時代とほぼ一緒の模様。

投資パフォーマンスは、このベトナムの物件価格を見ればビックリするくらいだから、昔と違って現在ではどれほどのリターンが見込めるか分らないのです。
外国人の滞在用としてであっても、企業間格差があり皆が住めるわけではない。
想定利回りなどあてにはなりません。これまで殆どの投資家は安定した利回りよりキャピタルゲイン狙い、それほどバブっていたのだから単なる転売ヤー。
プロが居ない、分析できないアナリスト、デベロッパーのいい加減さを知れば余剰資金があっても投資したくないのは当然の帰結、自ら墓穴を掘ったのです。

ではもう一つの最下位というのが持続性とあるけれど、このまま市場が安定して続くのかと言えば何とも言えない。都市集中は未だに続くし、人口はまだ増える可能性が高い。だが問題となっているのは高齢化と人口ピラミッドの魅力が徐々に無くなりつつある。また経済成長は当面続くけれど、書記長の死去に拠る交代で一層明らかになったのは中国寄りの姿勢であり、事実進出企業などへの影響が出ている。さらに先進工業国に変身、グリーンビジネスとか脱炭素、IT関係立国へという国家戦略だが、人材が揃わず能力が全く伴わないのです。
それ以前に今後予想される生産・工業団地の地方化。即ちコロナ禍で帰郷した人が都会へ戻らない現象が起きていて人手枯渇が深刻。だけど人材輸出を今も続け年間計画を実施。新規開拓先としてオーストラリアやヨーロッパへも進出。
こうなると人材、あるいはワーカーとなるべき人も居ない現象では物作りが出来ない。これまでのベトナムの魅力とか神話が崩れる。となれば、何れの国もベトナム自体が注視するインドへ目が向くのは確か。折角サプライチェーンを目論んでも、資源が無く部品も輸入、技術に研究開発も他国任せでは何がある。これでは遅かれ早かれ、逃げるが勝ち。どうも痴愚剥愚に思えてならない。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生