火種が燻っていたベトナムの不動産市場。一旦収まったかにように見えた価格の上昇は留まる所を知らず、再び荒れ始める気配をみせています。
昨年はまだ買うべき時期ではない、と多くの人が様子を伺う間に上がってきたけれど気が付くともはや手遅れ。あっという間に価格が急上昇していた訳です。
結局は経済が回って好調、外資系企業進出も順調に増加。10月に入ってから、外資系金融機関などは今年の経済成長率を上方修正しているほど。そうすると都市部と周辺省などの生産地域に地方から仕事を求めて人が集まってくるし、外国人の現地駐在者も増えるのは自然の流れ。また投資家はゾンビの如く復活して目ぼしい物件を買い漁る。こんな価格上昇の筋書きが見えて来た。
需要と供給の関係だけでなく人の心理や思惑でも経済は動く。となれば偶発的に価格が急上昇する切掛けになり、ともすれば三度目のバブルもあるのではと思わざるを得ません。
不動産法を改正したけれど、実際には無駄で政府や行政は何の手立ても講じず野放し状態の結末、またも再燃するのは不手際とも思えなくありません。間違ってはいけません、此処は社会主義国なのです。
中国の様な国の経済や地方政府の根幹を揺るがすほどの壊滅的な不動産苦況とまでいかないが、またおよそ自由主義国でさえバブル期にあらゆる手法を講じ、新たに法律をつくって価格規制をしたくらい。これは競争原理を否定する事になるけれど、抑止力がなければ富の偏りが避けられなかったわけです。しかしこの国は総合的経済政策が分らないのだろうか、ほぼ野放しのような状況には開いた口が塞がりません。
不動産は必要があるから購入する、必要があるから売る。これが本来の姿だと考えます。そこに経済が発展し、地域特性や利便性、収益が望めるのなら自ずと価格に格差が出て来るのは仕方がない。だが投資家が投資とか投機のために保有資金を投入するとどうなるか。ましてインサイダー情報に拠って左右されるのならこうした自然の成り行き以上に一部の人の思惑で価格は動かされる。
となれば人為的。しかしこれを制御するための施策が講じられなければ、指をくわえているしかありません。
・アパート価格が急上昇 HCM市
ここ2年ほど、HCM市と近隣省の不動産市場は混迷から抜けられなかった。
経済発展が続いて都市機能が分化し始め、人口の集積も留まらない。
これでは市中心部でのアパート建設用地など望めない。このため郊外で開発が増え、価格も上昇の一途を辿っていった。ここ2年ほど、HCM市と近隣省の不動産市場は混迷から抜けられませんでした。
経済発展が続いて都市機能が分化し始め、人口の集積も留まらない。これでは市中心部でのアパート建設用地など望めない。このため郊外で開発が増え価格も上昇の一途を辿っていった。この状況は世界中ほぼ何処でも同じ傾向であり、地域差や道路・交通など便益条件、地形とか地理的要因や順序の違いはあるが、同心円が拡がるように都市化が形成されて行きます。
従って古来、都市の成り立ちはヨーロッパのように放射状に拡がるのが自然的成りゆき任せ。日本各地に見られる条里制は中国の都市建設方式を採り入れたけれど計画的、合理的、機能的に進められた人の知恵の集大成かも知れません。
HCM市の開発事情について筆者は、1990年代後半から7区の新都市開発エリアに居住し、仕事や現地の人との交流でくまなく市内を回ったことがある。その後トゥドゥック区に移ったけれど不動産の動きは頭に刻んできました。
20数年前、不動産の大規模開発はやっと幕が開き、HCM市と台湾との合弁企業がPMHでベトナム初の副都心開発を進めていきました。
トゥドゥック区は豊かな人が住まないまさに川向こうの地域、大潮ともなればサイゴン川から溢れる水で帰宅できない。用地が不足すると開発業者は用地を求めて此処にアパートの分譲を開始した。しかし売れないのでセールスマンがチラシを必死になって配っていた光景が思い出される。超高級住宅地と評価が高いタオ・ディエン地区も低地のため水に悩まされます。
ところが空港へ行く道が新しく開通し、サイゴン川を渡る新橋も架かるなど、インフラが進んだ結果、俄かに人が集まり始めて急速に高層住宅の開発が進み、建築品質も良くなり、これまでと違う。筆者が言う日本の公団住宅に毛の生えた様なレベルであった初期に分譲されたアパートから、デザインや設備、居住性なども格段に良くなった物件が急速に普及してきました。これはいける。
このトゥドゥック区にあるタンダ地区、半島のような形をしておりサイゴン・ツーリストが運営するビンコイ・ビレッジがあって楽しめる。半島の入口は戦争終結以前からある箱型の住宅(公団の様だが中廊下形式)が林立しているが、住人の多くは中部フエなどから来た人たち。だからチンコンソンが亡くなったときはビレッジで追悼演奏会が催された位です。入居した当時は市内から離れていて足場は決して良くない地域。何度か知人宅にお邪魔したが、住めなくはないけれど建物に設備の老朽化が激しくて、兎にも角にも狭小が難点です。
こういう所にかつて総合開発の話がありました。一時は資金を豊富に持つ外国企業が気に入ったけれど用地買収が進まずキャンセルした経緯がありました。ところがまたもやこのエリアで大規模な総合開発が復活する気配が出てきた。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生