ハノイの中価格帯のサービスアパート賃料が高騰

2025年7月24日(木)

・サービスアパートとは何なのか

サービスアパートとはキッチンがあり、家具・什器、各種電気製品にあらゆる食器などが予め用意されている賃貸マンションのことです。
ベトナムでは主に外資系企業に勤務する駐在員が住んでいるが、こうした部屋を借りると室内清掃とベッドシーツ交換は基本的に週2回ほどしてくれるし、建物内にあるレストランでは栄養が偏らずに日本食が食べられるので便利。
また電気代(ベトナムではエアコンがフル稼働する)と水道使用料は基準内であれば賃料に含まれているし、独身者や単身赴任の場合、ほとんどの人は料理が出来ないので有難い存在。洗濯機・乾燥機はランドリールームが別にあって、自由に使える所が多い。
他に一戸建てを借りて此処に社員を住まわせる企業もあるけれどこうなると、ハウスキーパーは必要だし、日本食が料理できる人を雇わなければならない。
反って費用が高く付き手間も掛かるため大変です。

極端に言えば日本から持って来るモノは何ラ不要。生活に必要とされる最低限の用具が揃っているのなら便利に違いありません。だが生活スタイルや食文化の違いから、例えば米を炊く炊飯器が無いとか、包丁は日本の様に切れないし、魚を捌くとか野菜を切るにも不都合、まな板も使い勝手が悪い。
さらに海外やベトナム資本ならスタッフは英語しか話せない。日本人駐在員と家族の多くは思うよう外国語を話せないので困る。どうしても意思疎通を計るためには日系企業が運営しており、少なくても日本語が話せる現地スタッフがいなければ安心できないのです。
少々賃料が高くても特に家族で小さな子供が帯同しているのであれば、リスクなどを考えるとセキュリティーがしっかりして、しかも24時間体制、この方がいいのに決まっています。しかし、時として現地スタッフだけの場合、盗難の被害が報告され、中にはセフティーボックスが開けられて保管したある金銭などが盗まれたという問題もある。実は設置してある金庫な簡単に開けられるのだが、日本人は安全と思っているだけ。こうした予期しないトラブルも海外では実際にあるので充分な注意が肝心。決して油断してはなりません。

HCM市内にはこの様なサービスアパートが早くから複数棟稼働しているが、中には大手企業が運営する部屋数の多い所や、中心の1、3区はビジネス街、工業団地の近くにも建設されており、こうした所は外国人が多く住み、何れも生活には何ら支障なく過ごせます。特に7区は日本人学校が近く、またPMH新都市地区は外国人用住宅、商業ゾーン、レストランなどが充実して便利になったが、それでも中心部が良いらしい。
広さは1DKから家族用の3LDKもあるけれど、部屋面積が広くなるほどに賃貸料はあがってきます。随分前だが、一人用が40㎡で600ドルとか家族用であれば80㎡が1200ドルなどもあったが、しかし中心部になれば家賃は高くなり、日系で日本のゼネコンが建設したアパートなど月額3000ドルでも空き待ちだったということもありました。此処は日本人のコミュニティーやジムなどがあるので高額でも企業としても安心度合いが高いのでしょう。

・注意すべきこと 経験上からピックアップ

日本と異なり海外での生活には幾つか馴染まなければならないことがあります。
日本人に必要な浴室、日系であれば湯船が付いているけれど、そうでなければシャワーだけが殆ど。日本人の様に湯に浸かって疲れを癒す習慣がないためで、従って充分な湯量を確保できない場合が多々ある。また地方などではシャワーを使うにしても勢いよく出ないことも頻繁。大きなアパートはボイラーが有ることもあるけれど、電気湯沸器は貯湯式でも湯量は少ない。因みにガス設備は無いのが基本、高層住宅で使っている所はごく稀です。(一般住宅ではキッチンにプロパンボンベを置いて使用)。電気は210Vなので日本から持参した電気製品にスイッチを入れると即時に壊れます。
バスルームはトイレ一体型で日本の様に分かれていません。だが一住戸に2つ以上バスルームがあるのは嬉しい。最近はシャワートイレもあるが、地場系などこうした設備はないし、使用する衛生陶器も日本製品でないことが多い。
水は見た目綺麗だが安心できない。これは給水システムに原因もあるのだが、飲料には適さないのでボトルをフロントに注文します。

建物にしても鉄筋コンクリート造ではなく、壁は煉瓦の組積。従って断熱効果はあるけれど音は壁越しに隣室へ伝わることが考えられます。
また床面はタイルが殆ど。これが一般的なので慣れるしかない。但し入浴後に滑らないように注意しなければ大怪我をすることも考えられる。
天井は日本(基準は2400㎜)よりも高いので広く感じるし、気分よく過ごせるが、照明器具の掃除と球の取り換えは不便。二重天井は殆どありません。
玄関で靴を脱ぐのは意外にも一般的な習慣なので、下駄箱は付いている場合が多い。しかし収納(クローゼット)が少ないのが欠点。
建築の考え方と建物品質の問題だが、サッシュの密封度は低く、また部屋内とベランダとは床が面一なので、ひどい風雨であれば室内に入ってくる場合があります。

・ハノイではサービスアパートの賃料が高騰

5月に書かれた現地記事では、この駐在員御用達のサービスアパートがハノイで急騰しているという気になるニュースがありました。しかも多くの人が有難い中価格帯クラスとあるから悩ましい。
これに拠ると、ハノイ市の中価格帯のサービスアパートの賃料は、今年の初めに14%上昇し、1㎡当りで月額25ドルになったとあります。この価格帯での稼働率は77%で概ね入れ替わりを考えるとほぼ満室に近いのです。
また高級クラスになると月額35ドルだが、こちらは安定していて変化はなく、稼働率は82%となっている。
大手不動産コンサルタント会社に拠ると、ハノイ市内の物件の平均では前年比で5%上昇、VAT控除前で23ドルとなっているが、これはエリアとか築年数、管理形態などに拠って異なるけれど、平均稼働率は86%で、前年第3四半期から2ポイントの増加。企業にとって賃料は低ければその方が良い訳です。
だが管理職クラスになれば安全面などもあり、どうしても職場に近く警備面からみても高級物件にならざるを得ません。筆者の関係先の大手企業では、一般社員と役員クラスとは住むアパートを変えていたほどです。だがこの様な賃料を出せる企業は殆ど大手。中小とか一人しか駐在員が居ない企業、まして進出間なしなどでは初期費用が嵩むので出費はかなり痛い。こうなると分譲貸を選ぶこともあり、そうなると自分で何もかもしなければならないが、海外に住むこと自体大きなストレスなので、こうした事情を本社が理解して快適に過ごせるように配慮するべきと考えるのです。
今年はこれまでにFDIが15億ドル、継続して経済成長しており、企業進出も続いている。北部ではハイフォン市、バクニン省、ハイユン省など近隣工業団地では供給が限られ、ハノイまで往復しなければならない可能性がある。
ベトナム、海外生活に慣れないていなければ、こうした都市部から離れた地域での不便・不自由な生活は当初は避けるのが良いと筆者は考えます。
また観光客の増加もサービスアパート市場を活性化しており、ハノイ市の観光客数は、第1四半期で前年比8,7%増加して730万人とされています。記事にはこれに比例してプールやジム、レセプションサービスなどの設備と警備が提供できる物件が望まれるといいます。
ハノイのサービスアパートの需要が増える傾向にあるとする理由は、環状道路、高速道路、交通などのインフラ整備が改善され都市と工業団地間の移動が容易になるため、そうすると賃料もさらに上がるとコンサル会社では見ています。
またサービスアパートの供給も増加すると予想され、コンサルタント会社代表のサヴィルズ氏は、今年度はハノイ市で7つのプロジェクトがあり、年内には完成。これ等の殆どはハノイ中心部にあり、1000部屋を超えるとしている。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生