新日越ビジネス関係 実習生制度・留学生制度は見直す時期に来た

2020年12月10日(木)

この所、日本の各地でベトナム人の起こした事件が新聞に連続して掲載され、大変残念で情けない。不祥事の多くは不法残留者だという。
約41万人在住するというが殆どの人は真面目に仕事をしている。でも失踪は断トツ1位で約8千人、中韓両国を大幅に超え恥ずかしい。だが人を殺めるとか強盗や傷害、在留カード偽造など言語道断。昔は考えられなかった凶悪犯罪や集団が増えている。また寂しさから妊娠して嬰児を遺棄したとの記事もあるが幾ら何でもそれは違う。言い訳にも程があります。この原因に付いて、COVID-19が原因で解雇され生活が出来ないとか、それが理由で帰国できなかった辛い事情もある。これは会社に大いに問題がありJITCOや組合などが収拾すべき事。だからと言って犯罪は決して許されるものでもありません。
ひいては外国人の在留に関して否定的な考えを持つ人を増長させ、それ見た事かと筋違いの方向に転嫁する言質を与える事となり、この上ない裏切行為です。
残念だがこれらごく一部の人に自国や同国人の評価を貶めた意識は殆どありません。事件を犯す人の背景には、成長の陰に隠れた教育レベルとモラルの低さ、格差社会、貧困が改善されないことに起因する深い根があると考えられます。
勿論これを理由に自己弁護は許されないし、特有の我儘に甘えにも限度がありこれを弁えるのも必要だが、派遣する際の評価に厳格化が求められます。
さらに彼らを食い物にする業者の徹底排除。元手なしの外貨獲得のために労働輸出を年間目標にする送り出し体制にも一介の問題があり見直しが必要です。
日本にも本来の目的とは乖離し、単純労働者として事実上の受け入れを認め、悪徳受け入れ会社を見過ごしてきた根本的な問題と責任がある。普通に暮らす彼らを社会の構成員の一員として共生する態勢作りを論議し考えるべきです。

・経済発展に寄与 日本と関りのある人達の流れは脈々と続く

いまベトナムは経済成長まっただなか。日本との関りを持つ人は大勢います。
これまで九州大学・京都大学に留学。外国人初の農学博士となりベトナム農業の先覚者クア博士。また最近は東大(院)で博士号を取得しメコンの籾殻処理に貢献。大学教員になったタオさん。お二人は既にコラムに登場しています。
戦後に社会主義を採り入れたベトナム。中国紛争にカンボジア侵攻で国際社会から長きに亘って閉されてきた歴史があります。このため海外から支援や投資は期待できないため国民は耐え切れない位の超インフレに喘ぎ、貧しさを分かち合うなんて都合よく解釈をしていた混乱期を経て、ようやく豊かになりたい我慢の限界からドイモイ政策(刷新)に舵を切ったのです。
この言葉を初めて提唱したのは、グエン・スアン・オアィン博士。日本へ留学、第三高等学校から京都大学経済学部へ進学、京大で博士号を取得。卒業後にはハーバード大学大学院へ行き、其処でも経済学博士号を取得。教鞭をとった後IMFにも在籍しています。帰国して後は経済担当の副首相(南ベトナム)に若くして抜擢されました。これは日本人が殆ど知らない事実だが、日米で学び近代経済学を身に着けた実務派の優秀な逸材。こんな結び付きが根にあります。
新政権になってから農業政策、社会主義国特有の計画経済は悉く失敗。理由は北から南に送られた経済音痴の政治家と役人。理想とした社会主義国建設を焦りました。実は1990年代に進出した日本企業を悩ませた原因にも通じます。戦争で武功を上げただけの経営を知らない、ビジネスに疎く、能力のない人物が合弁先の国営企業の社長になった不運な草創期と符合します。
徹底的な社会主義を進めようとする保守派。このままでは飯は食えない。対立する南部を中心とするオアィン博士など改革派と、一部の賢明な北の指導者が動きました。
自由主義経済の実験を行い配給制(バオ・カップ)など廃止、ようやく新経済体制が稼働しましたが、博士や南部出身の書記長、首相の英断と努力がなければ今の成長は無かったと考えられます。

・若い世代が台頭 新しい日本とのビジネス関係構築に目を向ける必要

IT化やスタートアップが進む現在、日本に留学して起業。僅か8年で大企業に成長した実例がある。この企業、立命館大学、慶応大学の留学生・卒業生の多くが起業。この経緯(敬意)から頭文字を採り社名としたリッケイ・ソフト。AI技術で先頭を行き今やFPTの牙城を崩す勢いがある程に成長している。要因のひとつに、ベトナムでは数学教育に熱心で、有能な人材が育っており、この様な日越で活躍する優秀な経済人が増えてきているのは嬉しい現象です。
産業構造が急速変化しつつあるベトナム。世代が交代する中でチャンスを掴みました。新分野で能力を持つ若い人が大勢存在することを知るのも必要です。ともすれば識者の間から化学、科学技術が衰退されると危機感が出ている日本。これからは日本の一方的な進出ではなく、ベトナム企業が日本で活躍する場が広がり相互の人的交流に期待が持てます。また本来の目的から逸脱した実習生制度や歪な留学生制度を変革すべき時期で、企業にとって国際化をどのように進めるか、生産性をあげるか等を真剣に捉える切掛けになったと考えます。
立命館APUの学長、出口治明氏は、日本人には危機感が無く正しい現状認識が出来ない。このため、国籍も年齢も双方向で混じらなければ人は育たない。純粋培養では革新的な技術やビジネスは生まれない。と説き、大学で自ら実践している様に伺います。私のVN人同僚は越日中英語が出来、30歳を過ぎてAPUに留学。現在ベトナム人学生は3番目に多く夫々に活躍しています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生