町の電気屋さん奮戦記① ローカル仕事の現実

2020年11月19日(木)

大型量販店で電気製品を購入するのは日本でも、また今のベトナムでも一般的だが、日本では昭和の時代は誰もが町の電気屋さんで買いました。大阪の下町、近所だから顔馴染みで少々のことなら料金も取らずに修理してくれる。何しろシャープの元本社に比較的近いので、商店街の一角にある同級生の自宅兼店もシャープの代理店。別の同級生はシャープに収める金属加工会社の社長の息子。クラブの後輩がいたアトム電気。いまでは全国展開のようだが、50年ほど前は町の小さな電器店、などなど家電王国大阪の話題にはこと欠かきません。
いま大手電機メーカーのTVCFをみると、何とこの町の電気屋さんのことを流しています。流通形態はどんどん変わって行ったが高齢化で地域に密着して安心、頼りになるので復活の様子だが、販売システムに変化がある様です。

・日本人初の電気屋をHCM市で開業

個人的な話だが、日系企業に居た私が会社を辞め、其処で採用したベトナム人と最初に始めたのがこの町の電気屋さんTUANKIM。KIMは木村のキム、ベトナム語で金に通じるラッキーワード。TUANはパートナーの名前です。
今でこそ市場形態は変化していますが、当時白物でもテレビでも新品は高級品。
ましてエアコンなどは高値の花。買えないので中古が売れる、テレビも修理屋が商売として成り立ちました。これから成長期に入れば電化製品は売れる、と踏んで設立したのだが、外国投資法に基づくものでは無いのでベトナム人名義。
本当は良い選択とは言えないけれど、当時は他に方法が無く仕方がありません。
店の内装から営繕工事まで全てスタッフが手作り。4人でのスタートでした。
勇んで始めたものの全く様子がつかめない。売れ筋が見えない、利益が出ない、ないないづくしの三拍子。中古の一台がやっと売れるというあり様。電球1個、蛍光灯一本、コンセント1個、電線5mなど侘しい日も。サンヨーの現地法人社長の竹岡さんに話すとこれから有望、と慰めてくださるが何時まで続けられるのか、心配が先によぎりました。
日系の電機企業は1994年にサンヨーがビエンホアに工場進出。冷蔵庫、洗濯機にエアコンを製造していました。他にもソニー、東芝やパナソニックがありました。

・ローカルスタッフの扱いに日々気苦労が絶えない実態

スタッフの意気込みは若いだけに凄いのだがそれだけの空回り。商いのセンスゼロ、客とは待つもの。開拓するとか、リピートオーダーをどうすれば取れるのか、何を売りたいのかも考えないという状況。いずれのお店でも同じですが顧客管理を口酸っぱくいっても程遠く、データもつけずに売ればそれっきり。客が来なければボーと日がな一日コーヒーをすするのみ。PCを覗くとカードゲームに興じる始末。おまけに目を離すと路上で足バトミントン、挙句の果てにこっくりこっくり。黙っていれば自分からは何もしない、商品の整理、店の掃除すらできない、考えない、すぐサボる。電話が無かった当時、いつの間にか勝手に故郷へ遠距離通話。請求書を見てビックリ。要するに自ら仕事を作ろうとか、情熱がさっぱり見つからない。中学さえ出たかどうかも分らない地方出身の連中。新興国の状況、殊にローカル現場は殆ど同じ状況。所詮ビジネスの歴史に浅いからと現地の経済関係者がいうほどだから無理ないが、実際の話。
商業高校も工業高校も日本のような高専はありません。ようやく日本の支援で高専が設立されます。中間技術者がいない。これでは裾野産業など程遠い。
殆どは親戚を頼って田舎から出てくる、貧乏暮らし部屋住みの食い扶持減らし。若年労働者といえども基本的な訓練すら出来ていない、仕事に必要とする最低限の基礎知識すら持っていません。力仕事ができるかといえばそうではない。金なし、能力なし、体力なし+コネなし+女は美形でなし。5Cがうちにくる。まして家庭での躾などまったく絶望的で、マナーに気遣いは期待できません。
厳しい親方がいて、そこに小さい時から預けられ、しこたま鍛えられ一人前の職人になって暖簾分け、という一斉風靡したおしんは大人気で再々放送なんてありますが、そんなことしようものなら彼らは一目散に夜逃げてもぬけの殻。
作業に使う道具は錆びようが平気、一日の仕事が終わっても整理片付けが出来ない。明日に備えて手入れもしない。日本の職人さんを長年見てきた私には、このずぼらさに、いい加減さは据えかねる。相手が日本企業なら腹が痛くなる。
事務所ではP/Lさえ分らない。金額が合わない。心を鬼にして月末の棚卸から数字の読み方、考え方まで教え込まねばならない始末。人が増えても糠に釘。

・ベトナムの会社は村社会

ベトナムの会社というのは日本企業のように人を育てる事はしません。優秀な人材を確保し、懇切丁寧にわが社風に育て上げるなんてことは皆無。そもそも企業風土なんて無いのです。企業理念もない、明確なコンセプトだってありません。ワーカーは、要するに給料とは単純に時間的労働対価(中身は別として)との引き換え以外何ものでもないため帰属意識は希薄なのです。
だからロイヤリティーはなく嫌なら即辞める。VN人は自分の領域以外の仕事は滅多にしないし口も出さずに知らん顔。さりとて仕事を死守するプライドもない、頑固親父の職人気質も持ち合わせてもいません。作ればいい、できればいいという感覚。良し悪し出来栄えは別の次元。我々日本人の築き上げてきた歴史ある伝統や物つくりの精神、思考回路とは遺伝子的に全く異なっているのが我々超ローカル現場の実態。余りにも落差は大きかったのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生

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