・昨年と今年の実習生送り出し状況
昨年日本に来た実習生は38,891人(うち女性15,900人)という。
ベトナムは計78,641人を海外に送り出したが、日本がほぼ半数を占め、圧倒的に多い。2位は台湾34,573人、3位の韓国(1,309人)以下の国・地域は極めて少ないのが実態。日本はそれほど頼りにしている。
労働傷病兵社会省は、昨年は派遣目標の約60%に留まったが、今年は9万人を派遣する予定だとしています。
・ここ10年の間のこと
しかし問題もある。人は居るが人財は少なくなってきた。
発足当初、当時の経済状況からみて日本に来られるのは限られたが、ほとんどの実習生はハングリー。とにもかくにも家族のために金が欲しい。家を建てて両親が楽に暮らせる様にしたい。弟妹を上の学校に行かせてやりたいのが夢。こんな人は多く居ました。実際実現した人は多いし、帰国後日本語が出来るので日本人相手に商売をしたり、送り出し機関の担当者になったりした人もいる。
私も日系企業に在職の際、2000年に採用した実績があるほどです。
また2000年代には政府関連機関の幹部を辞め、送り出し機関を作った人も居ました。もちろん事業として有望で利益があるためだが、これが今に至り、様々な問題として徐々に出て来る時期でもあったのです。しかし中には行政の送り出し部門の責任者が嫌気を差して辞職するという、硬派の人も居ました。
2010年頃、本人に人民委員会から帰国した人材を国内でどの様に活かせるか、再教育出来るかなど相談があったが、実現しませんでした。
僅かの期間で経済成長が加速。こんな手間を掛けるより、人は幾らでも必要で、まして外国語が分るなら進出日系企業は少々給与が高くても歓迎しました。
かつてはHCM市(クチ群など近郊)からも多くの実習生が訪日して行ったが、都市化が進行、海外企業も進出してきたので急速に減少。良い仕事が無い地方に人を求めるようになったが、彼等も収入に魅力を感じて日本へ行きたい。
HCM市や近隣省の工業団地にはメコンや中部など地方から多くのワーカーが戦力として流入してきたのです。古くから進出した日系大手企業、この会社の社長秘書は努力が認められ秘書にまで上り、新聞に出るほどの田舎では名士。採用時期になれば帰郷、一声かけば500人の若い人達が集まった位でした。
ベトナムは経済発展をするために外国企業に投資を求めている。人材の取り合いが年々酷くなっており、時代と共に実習生の獲得は、送り出し機関が増えて397あるというから競争も激しい。儲かると踏んで新規に設立するとしても簡単には行かず何かと物入り。さらに人集めには苦労、地方政府の偉いさんと上手くやらないと良い人を回してくれない。この国ならではの問題があり費用が嵩むが、全ては実習生にシワ寄せが行きます。余程しっかりと彼らのために仕事をしてくれる機関と、其処が日本の受け入れ側にもきちんと面倒をみてくれる所を持ってないと後々彼らが苦労することになります。(これらの事情は、先記のジャーナリストの記事に詳しい説明がある)
・鳴り物入りの特定技能は思うほど成果が出ない
特定技能は思う程に伸びず、昨年末で8,769人に留まり人気が無い様です。
むしろ3年間の実習を終えた人が最長2年間延長できる技能実習3号の取得者が増え、昨年6月には33,022人が資格を得ているとあります。
企業も実習生も実習終了後に試験を受ける方が手っ取り早く、仕事も慣れているので安心。そのうえで特定技能に移る考えがある様で合理的。こうする事で長く仕事が続けられる利点があり、双方に都合が良いのです。
だがこの3号の問題は実習生が仕事先を自由に選べないので、実習期間3年の間で如何に会社と信頼関係が出来るかに拠るため難しい所もあります。
こういう想定をして行政は考えないし、特定技能が絶対に良い制度だと考える。その原因は現場の実態を知らず、頭で描くのが原因。しかしこの方法も絶対的であるとは言えず、もっと実情を理解し、現実に沿った制度設計が必要です。
日本では恒常的に実習生が不足。また今後、世界的に経済の動向によって人の獲得が競争になる可能性を考えると、現行の制度だけで良いのか?根本的に考える必要があります。此のまま見過ごせば何れ日本へ来なくなるのは請け合い。
・場当たり的な受け入れは廃止 共生の道こそ本来支援の形
OECDでは在留3か月以上を移民とするそうで、それなら日本は移民大国の一つ。
実感がないのは、実習生や学生は単なる短期滞在者であると思うからです。
もはや実習生に頼らなければ日本の農業は壊滅状態。町工場も高齢化で後継ぎはいない。このままでは受け継がれて来た技術が廃れ、独自文化も歴史上から消滅する。しからば若者で行動力と志ある人に任せなければ仕方ありません。
実質的に実習生制度は日本人が嫌悪する仕事を安価に代替させ、留学生も軽便な作業に従事させるだけ。たとえ能力があっても活かせる術などほとんどない。来日して初めてこの現実と実態に気が付いた外国人が嫌になるのは当たり前。
人口減少が続く日本。社会や受け入れる企業が等しく活躍する場と機会を与え、人として同等の権利と待遇や立場を共有するべき。しかしこれには双方の国が先ず制度を抜本的に見直し基準と審査を厳格にして信頼を得る必要があります。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生