ベトナムの教育②

2021年5月7日(金)

・留学生も急速に増えている

また海外留学も増加し2019年度の108,527人。アメリカが最も多く23,777人で全留学生の2,2%、出身国別では217国中6位と大健闘。
前にも記したが20年程前、関西にいる留学生は30名程。この費用を賄える資力がある家庭はほんの一部。この時でさえ富裕層の子弟はオーストラリア、インド、日本などへ高校から留学しており、特にアメリカは憧れの国。ボートピープルなどで渡米した親類等を頼って渡米する人も居ました。
イギリスから一時帰国した知人の息子の同級生は綺麗な発音と垢抜けして一層美人に成長していたが、元々恵まれた家庭環境に育った才媛。
こうした留学生の中から起業する有能な人が出ており、日本にも支店を置くまで成長していて頼もしい。先進国へ留学、グローバルな知識と知恵、ビジネス・スキルに人脈を得られたのは間違いありません。

・現地での体験的教育実態

頼まれたもののご縁があって小学一年からケアしていた子が幼稚園教諭になりたいと、HCM市中央師範CAODANに念願叶って入学を果たしました。
CAODANは短大もしくは高等専門学校にあたると考えていい。
ここは全国から学生が集まってきて下宿や間借りをして通学。年齢はバラバラ、高校を卒業して入学した人もいるが、北部ヴィン市から来た学生は20歳。様々な事情があるのは先刻承知で誰も気にも留めない。
期間は三年間。授業は朝7時半~夕方迄が月曜~金曜日にあるのでかなり厳しい学生生活。朝5時に起きて節約のため弁当作りから一日が始まります。
早くも幼稚園で実習があり喜んで参加。元々ひとりっ子のためお姉さん気分で喜々としているが、教材は自分で作るため随分手伝わされました。
中学生からの夢を実現。目標を持つことは大切だが、ベトナム人にとって得手ではない。早くから「将来何になりたいの?」と誘導していました。
ベトナム人も読書時間は少ないというデータがあり、本を買わない、読まない。本屋が少なく纏め買いもしないので書店へ行き本を買う事を習慣付けました。読めば知識の泉湧く。美しい文章は感性と表現力が必然的に豊かになり、学校が教える以上のものが身に付いてゆきます。
さて本人がこの師範学校に決めた理由は授業料が無料だから。母子家庭なので子供の時分から生活は楽ではないのを分っていて、親に負担をかけたくないという気持から。ピアノ(殆どの家庭に無く、習わない)実技は必須でないが、アオザイを着てダンスは入学式当日から披露。

・教育格差

ベトナムは富の多くが都市に集中。地方には回ってこないので経済発展の恩恵から外され、家庭の収入が少なくて能力があっても上級学校への進学を諦める若者が多い。これを沢山見てきたが非常に勿体ない事で大樹にも成れる芽を摘み取っている。山間部の奥地にも小中学校はあるが教育環境は良くなく、僻地や困窮家庭は教育の恩恵に与れない子供は多い。
実際に彼らの家庭を訪問すると想像できないくらい粗末な家というより小屋。市内でも壁屋根は煉瓦か椰子の葉にトタン、土間に電灯が一つ、水道にトイレは屋外で共同。雨露凌いで寝るだけが関の山が実態。殆どの家庭では父母が働き子供同士で面倒を見る、ろくな道具が無いのに炊事洗濯などは子供の役目。これでは今日生きるのが精一杯、明日の事など考えないし夢も希望もない生活、病気になっても方策はありません。

こんな所に日本の学生を連れて来て実情を見せて話をすれば、想像を絶すると涙ぐむ人もいるほど厳しい現実が眼に映ります。
かつて立命館大学産業社会学部では、1994年からベトナム障害者実態調査グループを組織し学術的アプローチから研究。その延長でスタディツアーとして毎年夏にベトナムの大学とセミナーを開催して学生たちと学校や施設を訪問。また夏休みになると沢山の若い人がネットで検索。自ら施設でボランティアをするため来越は頼もしい。
だが我々の時代と異なった自由で豊かな時代に生まれ、ベトナム戦争など知らない世代の学生は現地の貧困層の実情を見てショックを受けます。
日本はカネだけ出す国。人的支援は行わないと揶揄されたが事実は全く違う。混血児を多く作りながらも金も出さない某国・企業がある中、日本はODAだけでなく民間団体・個人が多大な貢献をしているが殆ど知られていません。

・現場での実態

新年度は9月に始まり翌年6月頃に終業、テト(旧正月)を境にする二学期制。テト休みはほぼ9日、夏休みは6月頃~8月に約2ヶ月間。授業は月~土曜が一般的に補習などあって休みは多くはない。何れの学校でも進級試験、卒業時にも試験があり不合格の場合は留年。進学できない厳しい結果なので嫌になってもう行かない、というケースが多いが教師は一向に構わずに放置。

義務教育は無料だとあるが、制服に体操着、学習用具などにお金がかかり、他にも何やかやと徴収され雑費がどんどん上がっており、親の負担は相当なものになっています。
保育園・幼稚園では0~5歳児を夕方6時位まで預かります。市内には小さな民家を借りた小規模、教会が運営する規模の大きな幼稚園、民間の結構立派な幼稚園まで種々見かけます。5歳児の85%が幼稚園に通っているとのこと。7区に居た時はキリスト教系の幼稚園が近くにあり、知り合いの子供が通っていたが親が朝な夕なにバイクでの送り迎えをしています。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生