COVID-19禍の中で実習生はどうなった④

2021年8月12日(木)

・高額手数料にメス 日本も実習生の失踪で受け入れ停止措置

日本にいる実習生の失踪が続いたことで明らかになったのは、送り出し機関が受け取る高額手数料問題。今頃になってと思えなくないが、このほど現地報道で明らかにされたことは、ベトナム政府監察院の指摘によって海外へ労働者を派遣する監督官庁が、実習生の支払う高額手数料について何ら保護を講じなかったと遅きに失しながらも批判したのです。
ベトナムの送り出し機関が受け取れる手数料の最大額は3600ドル。しかし殆ど守られず場合によっては1万ドルにもなる事もある。こうなると一般的な所得の数年分。しかし日本に行けば1年程で元を取れるなどの甘言に乗せられ払ってしまう事実があるのです。これは留学生と称する似非日本語習得の場合とも同じだがもっと悪質。堂々と看板を出すが明らかに嘘っぽい。鉄槌が必要。
かつて実習生は都市部近郊でも容易に見つかったが、徐々に地方に行かないと確保できなくなってきています。そこで地方政府の役人と組んで人を集め易くするとか、ブローカーに頼む場合もある。そうなると様々に費用が嵩み、日本旅行などのご招待などで忖度しなければならず頭が痛い。また日本の受け入れ側も接待するなど、何かと人を集め、派遣するために金が要る。これが高額になる理由の一つ。そこに遅ればせながらメスを入れたという次第。
韓国の様に民間業者が中に入らず、政府が直接採用する方法をとれば公平性が担保されて望ましい。双方の行政に利権が絡む構造や役人の天下り先確保など改革しなければいけないが果たして可能か。

監察院の指摘で海外に派遣される事業へ影響が何かしら出てくる必然性もある。ベトナムは21~25年の5年間に、50万人を海外に送る計画をしているが、これは労働輸出と称した投資が要らず、効率のいい外貨稼ぎなのです。
2020年度は海外から約170億ドルの送金があり、これをGDPに占める割合でいうなら5%という莫大なもの。これがどうなるか思案のしどころ?
政府は日本へ実習生を送りたい。理由は賃金が高いという事で在住ベトナム人の平均月収が1200~1400ドルとなっていて、台湾の7~800ドルと比べると割がいい。現在も入国制限で予定通り派遣できない状態なのに、先のような事態の発覚で派遣に制限が課されるとなれば、タダでさえ人が不足している日本の作業現場はどうなるのか深刻に捉えるべきです。

日本でも6月13日付朝日新聞で報じられたのが、外国人技能実習機構に拠るベトナム側送り出し機関5社への実習生の新規受け入れ停止。何とこの理由、ベトナム人実習生の失踪が多い事に拠るもので、当然ながら余りの酷さに腹に据えかね腰を上げ、お灸をすえた他ならないが、低質化にも原因はあります。
6月1日付けで労働傷病兵・社会省、海外労働局へは通知済。2カ月後を目途に実施するとなっているという。何かしら暗黙の了解がある様にも!
機構は海外労働局から実習生派遣に伴うデータ提供を受け、日本側の受け入れ機関との照合で失踪者を調査。そのうえで失踪者割合が平均の3倍以上出している現地送り出し機関5社を特定、この措置を講じたが少々遅くて甘い措置。
現地に地味ながら地道に事業を行っているところもあるし、大手で日本人職員が常駐して日本の行政機関と連携、日本側の資金援助でビルを建ててアピールする所もあるなど玉石混交。派遣後は知らぬ、存ぜぬ。こうした表面を繕える機関もある実態。強い姿勢に出て徐々に成果が表れるのは結構な事。真面目に仕事をする若者が損をする事が無い様に願いたいものだが、見落としは無いのでしょうか。失踪の根本的な原因は何処にあるか考えないと解決はできません。

・特定技能

日本政府が2019年に新しく創った在留資格。建設、介護、農業など14の分野が対象となり5年間働くことが出来ます。
政府は導入してから5年間で最大345,000人を目標にするも、今年3月末時点では僅か27,567人だった、と出入国在留管理庁が発表しました。

飲食料品製造が8104人(35,9%)、農業3359人(14,%)、建設2116人(9,4%)、機械製造1937人(8,6%)、介護1705人(7,6%)となっており、ベトナムが一番多くて14,147人。如何に頼っているかが分ります。続いて中国・2050人、インドネシア・1921人。
COVID-19禍で外国人の出入国ができないため、日本国内では技能実習生からの資格変更で特定技能へ移行しており割合は80%となっています。
この場合はあと2年間就労できるが、実習生に比べると待遇が良くなり、能力次第で給与が日本人と同等以上になる場合もあり得る。
従来の3年間ではやっと慣れたころに帰国。勿体ない実態が掴めない所が行政の限界で現場知らずだが、2年延長もお茶を濁すだけ。
たった5年というのは何とも可笑しなこと。理念である技術を海外に伝えるというものでは無く、明らかに短期労働者として受け入れるという整合性が無いのを証明した他なりません。
この様な矛盾を行政自ら是認していること自体、移民政策を否定していないと暗黙の表明であり、本来はこの辺りを有耶無耶にせず健全な制度に改革すべきだと考えます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生