我々にとって殆んど解からないベトナムの大学に関連して触れてみます。
JETROの資料(ベトナム教育訓練省)に拠ると大学237校、アカデミー校28校、大学院223校ある(2019年度)となっており、これ等の高等機関に在籍する学生は170万人程です。しかし大学となっているがいわゆる短期大学がこの中に含まれており、此処には反映されていません。
また2018年での卒業者数は、大学341,633人、大学院38,021人(修士36,476人、博士1,545人)となっています。
なお、アカデミー校とは高度な専門職や職能を持つ人材養成のために設置した大学で、各省庁や政府機関に属します。これには外務省が管轄する外交学院、国家銀行の財政学院、ベトナム伝統医薬学を習得する保健省管轄で100年の歴史を持つ薬科大学、文化・スポーツ省の国家音楽院などがあり、日本の海上保安大学校や防衛大学校の様な感じと思っていいが、大学卒の資格はある。
・国家大学
ところが日本の大学と違いその分類は異なっており、耳にされたかも知れないがベトナムは3種類に分かれている。即ち国家大学、国立大学、私立大学です。国家大学とは政府直轄の大学で2校しかない最重要とされる大学を指しており、ひとつは国家大学ハノイ校、もう一つは国家大学ホーチミン校です。
このHCM市国家大学を卒業後、日本の公立大学(院)を卒業して日本国内の有名企業に就職する際、現地でのレベルや提出された書類などがよく分らない。ある時、上場企業から教えて欲しいとの問い合わせがありました。
その履歴書にはこう書かかれていました。「ベトナム国家大学 ホーチミン市校 人文社会科学大学〇〇学部」。初めて目にする人事担当者はなんのこっちゃ?となるけれど、ややこしくて理解できないのはもっともな話です。
簡単に言えば幾つかの大学群から構成されていて、企業ならホールディングスが傘下に複数の企業を抱えているような感じと思ってもいい。
国家大学HCM市校の場合、工科大学、科学大学(旧自然科学大学)、人文社会科学大学など8校で構成され、それぞれの校舎は別の場所にキャンパスがあり、言うなれば学部が独立し、各々が大学になっていると考えれば分かり易い。
もうひとつ、一般的にホーチミン貿易大学と呼ばれているが、ハノイ国家大学 貿易大学 ホーチミン校。2002年5月に設立されたVJCC(JICAに属するベトナム日本人材協力センター)に隣接。こうなると余計に分かり辛い。なお同機関は日越両政府の合意に基づいて、市場経済を担う人材の育成のため設立され、日本語教育と人的交流、日本図書の閲覧、多くのセミナーや研修を実施。知人の中央大・故高橋教授なども訪越時には学生に講義しました。
初代所長はパナソニックの現地法人を停年退職した藤井元社長という実務派が就任。国際的ビジネスセンスを持つ人材を育成するにはもってこいの人材です。現地に詳しい民間人を登用したのは緒方貞子さん。これこそが真の国際貢献。
貿易大学学生の日本語能力には定評があり、現地日本商工会主催の盆踊り大会開催時には尽力を頂きました。また2009年、日越外交樹立35年記念の年に皇太子殿下(現天皇)が訪越された際に訪問、熱狂的歓迎を受けています。
余談だが、2月14日皇太子さまはメコン(ミトー市)訪問。道中は秘密だが7区の事務所前を通る筈だと日の丸を持って待機。こんなところに日本人!と往復の間合いを見計らって思い切り旗を振ったが?ガラスは真っ黒だし土埃が舞うために終ぞ窓は開かなかったが、外地で日本人のDNAが証明されました。
然しながらこれまで幾つかの大学が改組、合併、改名されてきていますから、以前の呼び方でしか大学名が分からない年配の方もいらっしゃるのは当然です。
・国立大学
国立大学には総合大学があります。これは教育訓練省が所管しているもので、中部地域のフエ、ダナン、北部タイグエン総合大学の3校であり、地方の中核を成す高等学府となっています。
だが南部メコンデルタの中核であるカントー直轄市にあるカントー大学。この地で実質的には総合大学であるけれど、そうなっていないことは個人的に残念に思う。此処は国内で7位という高評価を得、学生数も55,000名を有する総合大学並、9学部を擁する程でメコン地域の研究も行っている。
とりわけ農業に関してベトナムの食糧庫であるメコン13の市・省の高等教育を束ね、日本との関係も極めて深く多くの優秀な研究者を輩出しています。
此処には2度行った。日本語を話す教員が多く、日本企業にとっては残された宝のメコン地域に進出する上で極めて重要な大学であり、高等人材や研究者の育成に注力すべきと考えます。
その他の国立大学は所謂カレッジ(単科大学)だと思って貰えばいいでしょう。HCM市にも経済大学、建築大学、農林大学、師範大学、水利大学などがあり、いずれも地方の優秀な学生が集まってきます。
だが全国的にみて医科・薬科・歯科系の大学は9校しかなくまた医療レベルに問題がある。これを知り私が日本語を教えた学生はHCM市人文社会科学大学を卒業後に渡仏したと聞くが、日本語、英仏語が出来る優秀な女性だった。
国内の大手民間病院にはこうした海外で医学を学んで帰国した人が居て、診察と治療を受けたが、知識と診断技術の違いをかなり感じた次第です。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生