外資系企業がベトナムでIT人材を募集しているけれど難航しているという。
有能な人が足りない、のが理由。年俸40億VND(約164,400ドル)もの高給を提示しているが、このところベトナム人技術者の需要が急増。だが供給は追い付いておらず、人材紹介会社でも採用活動が滞っているとのこと。
日系の人材紹介会社にも日本企業から求人が殺到しているが、ベトナム国内で多くの企業がIT関係の事業へ一挙に参入したため、このニーズが高まった。ところが適切な候補者さえ見つけるのは容易でない。やむを得ずシンガポール人を採用しているとあります。
言わば産業構造変換の渦中にあり、今回のバイデン大統領の来越の際にも政府は支援を要請しているが、国内で急速な世界の変化に対応できていないことが判明したことになるし、人材面では全く成長の見込みが立たない状態。これではせっかくの事業機会が減速しかねない大問題なはず。
データに拠ると、ベトナムのITスタッフは労働人口の1,1%。これに対してインド1,78%、韓国2,5%、アメリカが4%となっており、人材育成は急務なのだが、ほとんど進んでいないというのが実情です。
IT人材の多くは実は日系企業で働いており、日本企業のオフショアの70%を占めていると伝えている。だがこの所、欧米企業も人気。
ベトナムの人材会社に拠るとIT上級クラスのスタッフは6千万VNDの月額給与を得ており、経験4年であっても4千2百万~7千万VNDを受け取る事が可能とあります。
さらに地場企業でも質の高い人材が不足しており、4000ドルで上級管理職をヘッドハンティングしようとしている。地場企業はそれ以上の給与を出しても確保したいとしのぎを削っているのだが、上手く行っていません。
ところが地場企業と外資系企業では賃金格差があるうえ、福利厚生面でも優れているため、ベトナム人のIT経験者は外資企業を選ぶ傾向にあるという。
例えば日本企業のITバンク企業は、経験あるベトナム人スペシャリストには4700~7000ドルを払っている。こうなると仮に4000ドルで募集しても地場企業に行くはずはありません。どうしても15~20%もの給与格差があるのなら優秀な人材は、外資系企業に採られてもやむを得ないのが現状。もはや人材争奪戦が酷くなったベトナム国内IT業界の実態です。
これがベトナムのIT最大手企業FPTは、ベトナムに40万人いるIT人材だが、新たに年に5万人が卒業する。だがこのうち僅か30%しか企業が要求する基準に満たしていないギャップがあると報告。このままだと地場企業は外資系企業に勝てず、衰退する可能性もある。やはり教育での遅れが露呈している。
HCM市調査 求職者の約5分の4が大卒者
このほどの現地報。HCM市が調査したところ、市内32,300人の求職者のうち77%が大卒者であることが分った。おまけにそれ以外のグループより適切な職を見つけることは難しいということも判明したのです。
これは第3四半期に14,500の企業、32,300人の求職者に企業に採って実施したものだが、大学卒の資格(学士号)を活かせる企業とか、仕事の数はわずかに24,6%しかなかったのです。
最大の募集はブルーカラー、すなわち工場勤務者だが、求職者の0,5%でしかなかったと報じている。これは完全なミスマッチであり、地場企業であっても、製造に携わる人しか要らない訳で、需要と供給に大きな違いが判明している。この理由のひとつが求職者の求める月額給与。調査で分かったのが40%以上の人が2千万VND(約820ドル)を期待している。しかしこの給与を出せる企業は15%しかないというギャップ。だが仕事への遂行能力は未知数です。
此の給与額に驚くのは地場企業だけでなく、数年前に現地に居た駐在者かも知れないが、此処まで初任給水準が上がってきているのです。
要するに求職者に対して、雇用者側は給与と職務(期待)能力に差があり大卒者は仕事を探すのに苦労しているけれど、好みや期待感だけで選んでいられる状況にはないとも言えます。
またもう一つ驚く事実があって、これは失業者の36%、即ち3の1が学卒者であることでした。無理して入社したか、能力にそぐわなかったのか。しかし転社・転職は彼らにとって人生の中であまり重要な意味は持たないのです。
さらにこれまでにも書いてきたけれど、企業が求めるのは職業経験があり、直ぐに仕事を始めることが出来る人材。新卒者にとって仕事を見つけるのは苦労する状況は変わらない。要は労働力を売るだけで企業風土に馴染む必要はない。
こうした思考は日本では考えられない状況。だがこの原因を考えるとベトナムは労働集約産業から未だ脱し切れていない。第三次産業の比率が増えているし、IT産業を重視するけれど、実際には学卒者のレベルを要求しない企業が多いというのは企業自体がその様なレベルにないという事実でしかありません。
実際に外資企業の輸出割合が70%を超え、国内では一次産業と、もの作りであっても殆どが新興国の産業の特徴である靴・履物や繊維製品が企業の主力であるという事実。これが今以って顕著であるとの証明なのです。
進出を考える企業は貿易数字やこうした実態を知り、よく見て、今のベトナムの現状を理解するのが肝要だと感じる。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生