ヨーロッパへの出稼ぎ

2024年5月15日(水)

また記事に掲載されている中でドイツを選んだ青年の一例を紹介している。
学校を卒業するに際して海外への出稼ぎを考えたというV氏だが、彼は多くの海外市場の事例を研究したとある。そこでこれまで長年に亘ってベトナム人の多くが憧れを持ち、魅力を感じた日本や韓国はもはや影が薄れており、手続きも面倒だと判ったというのです。

その結果、ドイツとは労働者派遣に付いて看護師以外に認可を受けた企業はないとされるため、初期費用に大きな差がないため料理留学。期間中は70%をレストランでの実習、残りの30%を無償で学校に通うと決めた訳です。
ドイツでは一週間に可能な学業・実習時間は40時間と決められているが、レストランでの収入は月額1000ユーロ。そこから税金と社会保険を引くと800ユーロが残り、家賃と生活費に500ユーロ。実家に300ユーロ送金が可能と目算しています。最低賃金は2400~2600ユーロだが、2年間の実習期間中の賃金はこれに比べると低いけれど、学校を卒業すれば資格を得られ正社員として採用されるとある。こうなると多くの収入が期待できると踏んでいるけれど、当然語学習得が前提となるのは同じです。

日本などはその実態が単純労働であり、しかし事前にその業種に付いて教育や訓練をされないまま、期待感だけで来るものだから、かなりの齟齬があると感じる人は多い筈です。また期間の差はあるものの実習期間が終了すれば帰国しなければならない。せっかく苦労して覚えた知識や技術は無に帰すという訳で、勿体ない状況が続いてきました。これでは双方の国にメリットがある訳ではありません。
さらにドイツの様に正社員に登用されるという制度でありません。このため勤務先から逃亡、不法残留が年々増加しているとか、様々な理由や屁理屈を付けているけれど、事件事故を犯す割合が高くなっているのが現実の姿です。
多く人は真面目に働いているけれど、中には平気で当該国の法律を守らないとか、自国に居る時と同じような振る舞いをして生活する上での社会慣習やマナーを守らないなど、勝手気儘な態度をとる者が増えている。
この理由は多くの場合行き違いや、相手国とか制度に関して無理解がある。
派遣先や受け入れ先でもそうした内容を十分に伝達していないから。これを須く制度設計の問題とするには無理があるけれど、ただでさえ海外に縁がなかった人、文化や歴史も知らない所に言葉の壁も原因の一つ。双方の国、事業を行う企業や組合がしっかりとその責を負うべき事案です。そういう努力なしにこのままの状態が続くとなれば、アジアへ魅力を感じる事はない。新たな開拓地で情報が少なく、受け入れに際してもあまり複雑な手続きが必要でない、しかも寛容だと言われる一部のヨーロッパの国を選択する若者が増えるとしても仕方がありません。
だがV氏のように初めから出稼ぎに行くということをせず、一旦現地の職業専門学校に留学して資格を取り、その後に職を得るという着実な考えをする者だけではなく、直接仕事に就くという人の方が多いとされます。
これに付いて、ヨーロッパへ派遣実績があり市場の開拓してきたベトナム側送り出し機関の責任者は、毎年200~300人を派遣するようになった。
日本には年齢制限がある、韓国は国が直接採用に関知するので安心だけど、実は手続きがかなり複雑だとしています。だがヨーロッパでは一般労働者であれば、高いスキルを求められるものでは無く、健康であれば年齢に関係なくチャンスがあるという。これは大きなメリットです。
また費用は業種によって異なるけれど、語学や職業訓練の費用を除いて契約期間の基づいた1カ月間でしかないとあります。
さらに現在、日本の円安はマイナスでしかなく現地での生活費の捻出に苦労するし、実家への送金や借金してまで支払った費用を返済することも難しくなっている事情が追い打ちをかけるのです。

日本でも人手不足だが、ヨーロッパでも労働力は足りない。さらに移民政策を積極に展開してきたけれど、今は曲がり角にあるので、余計に人が必要。
このため、ドイツはスキルがある労働者を呼び込むため、外国人が市民権を得るのに従来の8年間の期間を5年に短縮。すなわち5年間現地で働くと、永住権を申請でき、家族を呼んで一緒に暮らすことが出来るという優遇策を打ち出している。さらに両道条件とか福利厚生などの権利も現地の人と同等に享受できるとあります。さらにベトナムとは今年1月に協力関係を拡大するため労働・雇用に於いての覚書を締結しました。これは日本では考えられないことなのです。

海外労働局に拠れば、現在ヨーロッパで働いているベトナム人はルーマニアが最も多く4100人。この多くは製造業と建設に従事しているとある。
最低賃金は650ドル、技能があれば800~1000ドルというが、生活費は安いので働き甲斐と、実家への送金等にも満足できるというのです。
勤務条件は習5日製で一日8時間労働。また東欧諸国では農業従事者も多く求めているというが、宿泊施設や食事、諸費用の提供や、渡航費などの現地負担条件は殆ど変わらない。また期間延長も可能となっているのです。
だが暑い国で生活して来たベトナム人にとって、こうした国の気候は厳しいものがあり、冬場になると仕事が無くなる危険性もある事を承知しなければならないし、アジアの国々とはさらに大きく異なる文化や民族性もあるうえ、生活環境も全く異なることに注意が必要ともいう。
さらに日本・韓国等との違いとして、これ等の国は他の発展途上国などから派遣されてきた多くの人種が仕事をしている。おまけにまだベトナムは派遣実施から間もないので、採用するにあたって選考が相当厳しく、国によっては明確な基準が設けられているのでこれをクリアしなければなりません。
これを管理局ではテスト期間だとしており、ベトナム人にとって魅力的ではあるけれど、迂闊に派遣業者を選択することなく注意が必要としている。
また今後5年間は、日本などアジア諸国が労働力輸出の主力国であることに変わりがないとしているのです。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生