ベトナムの英語教育

2026年2月4日(水)

・英語ランキングで中程度レベルに上昇

ベトナムは世界最大の英語スキルランキングである英語習熟指数(EPI)で500点を獲得し、123ヵ国中64位にランクインしたと現地ニュースが報じています。これは昨年から2ポイントの上昇、世界平均の488点(800点満点)を上回っている。EPIは500~549点を中程度の習熟度と定義しているためギリギリ何とか引っ掛かったという次第です。
このランキングはEFエデュケーションファーストという教育企業が実施するもので、歴史は結構古く1965年から行っており、言語、学術、文化交流が事業となっていて、このランキング指数は、2024年に受験した18歳以上の220万人のデータに基づいているとある。実際のコミュニケーション能力を測定する目的があるとされ、スピーキング、ライティング、リーディングとリスニングの総合結果が各国毎、各地域別に点数で表示されています。

ベトナムはアジアでは25ヵ国中7位という好成績。これは中国の464点、インド484点という大国より上回っており、日本は446点と良くないが、日本語は特殊で言語中枢も違う訳で、英語修得には余程の修練が要りそう。
なおマレーシアは581点、フィッリピンが569点で、シンガポールは何故か英語圏と分類されているので除外されているとあります。
国内を見るとハノイは532点、ニャチャン517点、ダナンが509点で、HCM市は508点、ハイフォン506点と都市部の成績が良く、また北部と中部で改善されていることが分ったとされている。
年齢的には26歳~30歳の働き盛りの専門職が最も習熟度が高い。この理由は経済成長が進み、進出した外資系企業で働ける環境に有ることを意味するが、外国語が出来るというのはそれだけ能力を評価され給料が高いのです。
なお世界でハオランダが断トツの1位で624点、次いでクロアチアが617点、オーストリアが616点となっているとあります。

日本語は英語とは文法が違うし、日本人の耳は連続する早口の会話を聞き取るのは不得手。言葉は慣れ、と言われるが、低学年からネイティブスピーカーから英語教育を受けなければ実際に海外での会話は容易ではない。しかし低学年であればあるほど母国語の習得が疎かになる可能性もあるし、論議が続いているけれど結論には至らない。それよりも若者の日本語の乱れ。これは何とかするべきだし、この原因は書物を読まなくなったからで、特に文学・小説を読まないから綺麗な言葉が離せず、また語彙力が弱いのではと考えられます。
因みに時代の流れの中で言葉は語形変化をしていくし、母音が続くとフレーズが短縮されて行くのには違いはないが、世界一難しいとされる日本語。白川静博士の著書に触れれば、日本語は言霊に感じてしまうほど響きは美しく、その語源も面白いのです。
だが筆者の経験から、日本人とベトナム人の両親から生まれた子供。彼は少なくても日本語とベトナム語の両方が普通に会話できるほど。また中には幼少期から中華学校に進学、他に英語の個人レッスンも受けており、大学は台湾大学医学部に進学した。筆者の家の近くなので行き来していたけれど、言わば鳶の子になのだが、要するに教育環境や親の考え方が重要で、頭が柔らかい時分から学習すれば何処の国の出身、親の資質に関係なく話せる。ベトナム人に日越英中4か国語が話せる人も複数いらっしゃる。

・ベトナムでは1年生から英語が必修化される

政治局は昨年に外国語教育の強化を促進。英語を全国の学校で第二言語とするように検討していたが、教育訓練省は2030年までに英語を第二言語として小学校一年生から必修科目にするとし、国内すべての学校で少なくても20%の学校がレベル3の基準を満たすことが求められ、レベル2が5%、レベル1に2%、到達する計画とあります。
現在は3年生から必須となっているが、充分な資格を持つ教員が居れば1年生から選択科目として週二回の授業が可能。新しい基準は今後5年以内に全ての幼稚園でも英語教育を導入し、少なくても10%がレベル1に到達しなければならないとされ、2045年までにはレベル1が50%、レベル2が20%、レベル3が10%とされるので、歳把の行かない幼児には厳しい。ピアノすら弾けない教員が殆どなのに、流石に国家が幼児全員にまで英語の教育をさせるのには無理があるのでは。また大学ではレベルが250%、レベル3が35%と到達必至が計画基準と言われる。

この目的とは、英語能力向上はもちろんだが、グローバルな有能な世代を作る事を支援するとある。しかし英語教師の育成、指導と評価方法、教室でのAIや先進技術の活用、一般国民への認知度が課題としているのです。
計画を達成するためには幼稚園で12,000人、小学校では10,000人の新任英語教員を採用しなければならない。そして英語を教えられる教員を2030年までに少なくても20万人確保しなければならないと見積もっているが、これは既存の教員が英語を再履修する事で間に合わせる計画の模様。
ところが現在国内には105万人の教員が居るのだが、英語を何とか話せるのは3万人に過ぎず、年を重ねて外国語を履修しろと言ったところで修得できるものではありません。辻褄合わせ!
HCM市教育大学の学長は既存の教員を効果的に組織すれば活用できるとしているが、無理がある。計画倒れになる可能性があるのは否めません
また教育副大臣は教育改革と教員養成が最も重要だと強調。英語を教えるだけでなく、科学やその他の科目を活用する教員にはインセンティブを求め、新しい教育カリキュラムと学習教材の開発、成功した地域モデル推進、またAIとデジタル技術導入を進めるとするが、お目出度い限り。

英語教育は大切であるけれど、それより重要なのは一教室当たり50人を超える生徒がおり、教員は生徒全員に目が配れていない。高校では充分な基礎教育が出来ないので成績が悪くて中途退学するケースが多く見受けられるのです。
この国の教育問題とは、体育は実技が無く、物理・化学は実験がなく知識の詰込み。課外活動などないため企画力や創造性に欠け、先輩後輩という縦の人間関係、社会道徳の構築がみられない事に繋がる。
こうして人格形成に一番重要な時期なのだが、組織とか団体の規律や行動への責任は醸成されない。先にやるべきことが違っていると筆者は考えるのです。

論より証拠、来日したベトナム人の犯罪。11月には埼玉県で窃盗を繰り返す11人ものベトナム人が逮捕されたが、警察庁の報じるところでは検挙件数のうち侵入窃盗が78,8%、万引き47,3%と盗みに関する犯罪ではベトナム人がトップを占めているという実に恥ずかしい実態が浮き彫りになっている。
来日するベトナム人の劣化が激しいという訳です。

日本人のご主人とベトナム人の奥さまが運営している施設が近くにあったが、当時、地方から仕事を求めて親とHCM市にやって来た子供には義務教育が受けられなかった。そこで理解ある区長の許可を得て勉強を教えていた。
ある時、支援する日本人からの提案で、希望する子供達に英語を教えることとなった。英語の教師を雇い、教材を購入、放課後に無料授業を始めたのです。
公立小学校で授業を受ける児童より、何かしら自信を持てることをすればいいと思ったけれど‐もう20年ほど前‐我々の考え方は進んでいた。
だがベトナム人の英語の発音には問題がある。ベトナム語はF、J、W、Zが無く、発音記号もあって独特の発音をするし、文法にも違いがある。なので、日常話している癖はなかなか直らない。教育訓練省が言う所、かつて英語を習ったことがある教員に再履修を求めた所で、正しい発音にイントネーションで会話するということは実際には容易ではありません。此処はやはりネイティブが重要なのです。

・前途多難 鉄は熱いうちに打つべきだが 問題は様々にある

筆者のアパートを購入した高学歴夫婦。共々英語が話せるけれど、二人の子供は小学生だが英語レッスンに通わせていた。だが英語が少し話せるだけでなく、極めて躾が良く、しっかりしている。このような家庭もあるもので、何処の国であっても子供は親の背中を見て育っているのです。
また親しいベトナム人家族の子供の同級生、20年も前だが親が英語を習わせていた。高校からイギリスへ留学するほどで、一時帰国した時に会った筆者は、しこたまキングスイングリッシュの洗礼を受けたのです。実に綺麗な顔立ちをしていたけれど、家庭での子供への教育の在り方、考え方がしっかりしていればこそ語学習得はもちろんだが、ごく一部の家庭であるけれど、こんな実例もあるもの。

英語の一定レベルの習得、それ以上に何が大切かという思考が前提に無ければ計画は画に描いた餅に終わるのではと思える。これを教員に求めるというのは酷ではなかろうか。というよりはっきり言って出来ない。これは日本であっても同じことで、恐らく世界中どこでも同じ問題を抱えるに違いありません。
取り分けZ世代が考えることは我々には理解できなくなっており、政治はこれを理解して英語教育を進めるのか。グローバル化の中で必要だと押し付けるだけで成果が出るなどあり得ない。櫂より始めよで、政治局、行政から始めれば、困難さが判るはず。
英語はツールであるが、この国では家庭が子供にどのような考えで躾をするのかがより必要不可欠だと考えます。

別の記事には、ベトナムの教員は給料が少ないので、せっかく外国語を履修して教員になっても実は教職は魅力でなく、転職する人が多いというのです。
だから現役教員は帰宅後に自宅で勉強を教えるとか、家庭教師としてクラスの生徒に教えるケースがあって、こうなると忖度という問題が起きる可能性も高くなるという恐れも実際に出て来ているのです。
そこで教育訓練省は給与額を月額100~200万VND上げるとか、初等教育の教員には画期的な成果があれば2~3倍に引き上げるという政治局は議決しているというのです。
しかしそれ以上の問題は、自国語でさえ発達中の子供に、勢い英語を学ばせるのは現場が混乱するという意見も出ているので、カリキュラムの標準化はもとより、現場が考える問題を政府はどう考えるでしょうか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生