ベトナムの農業② 自国の農業発展へ真剣に取り組むベトナムの人々

2019年4月18日(木)

ベトナムは農業人口が60%を超えています。北は紅河、南にメコン河の肥沃な土壌と気候に恵まれ、世界的な農業生産地が自然のままに形成されています。この様な大地ゆえに、豊饒の実りが約束されていることが徒華になることも。
大学農学部には海外で履修した優秀な研究者や留学生がいて、中に日本の大学で博士号や学位をとった方も数多く、郷土の農業指導と育成に活躍しています。ルォン・ディン・クアさんはその筆頭。九州大学で学び、京都大学では木原均博士門下生で99人目・外国人初の農学博士号を取得しました。メコンデルタ ソクチャン省の出身。英語、中国語、日本語にも堪能で『ベトナム農業の父』といわれ『労働英雄』の称号をホー・チ・ミン主席から授与されました。現在ルォン・ディン・クア賞が設けられ優秀な農業人を顕彰しています。1975年、55歳で統一を見届けてハノイ市の自宅で急死しますが、同市には功績を称え彼の名を冠した道路があります。奥様は日本人でHCM市内にご健在。
クアさんの後輩、カントー大学教授であったヴォー・トン・スァン博士は九州大学で博士号を取得。1993年にはアジアでの農業発展に尽した人に贈られるマグサイサイ賞を受賞。政府の農業顧問をされた逸材です。
アンザン省の出身で東京大学農学部院卒。若手博士ファム・ティ・マイ・タオさんは現在大学教員。彼女は故郷の地で大きな環境問題であった籾殻処理研究により、2011年東京大学から博士号を授与され、地域に貢献しています。
実務面でも農ビジネスを展開している人が居て、幾つかの成功事例もあります。
HCM市の企業家A氏。事業は土壌改良から始まり、品種改良を重ね付加価値のある安心作物を栽培しています。海外のフェアでブースを設け進出しようと試みたのですが、結果は思うほど評価されず国内販売のみで勿体ない話。
アメリカ生まれのベト僑B氏はHCM市内に事務所を持っていて、地方の農園で果実の有機栽培を指導し、これを加工してブランド販売しています。実際にベトナムで事業を起こしたのは数年前。無暗に現地視察や生産委託は受けない。
蜂蜜を生産するビンユン省のCさん。全国から南国の果物の蜂蜜を集めて精製しています。悪質業者は混ぜ物を入れたり、他国製を混入したりと手口が巧妙。彼は一切妥協しない一徹の人だが、ブランドが無い事が決定的課題で勿体ない。
母親の食品会社を引き継いだ若手D君。アメリカへ留学。帰国してから設備を一新して新商品開発を試みました。海外で勉強しビジネスを分かっている人なので意欲も情熱もある。他にも若手女性農学博士がベトナム漢方を採り入れた食品開発。日本人と一緒に有機農法と販売チェーン作りを模索している等々、明確な理念があり、強い意思い持ち、真面目に堅実に取り組む若い世代が自国農業を変革し、牽引する中枢に成長してゆくと期待できます。

筆者:IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生