この先に起きうる世界的変革を拡大勝手解釈してみれば

2023年3月29日(水)

先ずは報じられている中国経済の減速や、経営力を持つに至った企業が巨額の利益を出したため、政府による嫌がらせがあからさまにみられること。さらにこうした改革解放後に先例を見ないほどの抑圧、先祖帰りの全権力集中志向は、情報が豊富になった市民の意識に変化が起きて行く誘因となり得るのです。
市場経済そのものを否定してこなかったが経済は心理学。誰も会社を大きくしたくないし、利益を上げても仕方がない。民間企業は経営力が弱体化するうえ、給与所得は下がりヤル気と元気がなくなる。小さい程コストプッシュの洗礼で競争力も無くなるし、研究開発も出来なくなる。次第に経済規模が縮小してゆくがぬるま湯につかったカエル状態。気が付けば軌道修正できなくなっており、このままでは国家体制を維持できない。こんな想像も描けなくはありません。このような懸念を持たれたとしても不思議でない。こうなると近い将来に何が起きるか皆目わからない。だが良い方向に向かわないだろう。この様な不安や不信感を外資系企業が持っても可笑しくなく、移転は進むものと考えられます。

加えて今年4月にはインドが14億2800万人(推計)と中国の人口を抜いて世界一位となり、2050年には16億人となる予測がある。だが逆に中国は14億2600万人をピークとして減少し、13億人程度となるとの推測。
一人っ子政策の誤りだけでなく、個人の価値観の変化がより大きいと思えます。
さらに2030年には中位年齢が中国は42歳、インドは31歳とされているため、経済的将来性は中国よりインドの方にはるかに分があると解釈できます。すでに経済的地位が危ぶまれている中国は、仮に10年後としてもさらに地位低下を予想される点に注目することが合理的な思考だと考えられる。
GDPからみればインドは現在世界7位。だが2027年には日本、イギリス、ドイツを抜き3位に浮上するのは当然の成り行き。IMFはインドが今年主要国で最も高い6%になるとしており、中国を上回る見通しに間違いありません。

この様な状況であることに日本企業は先刻承知している。従ってJETROが有望投資先調査でインドがベトナムに次いで2位となりました。だがベトナムの人気は寸止まりとも言え、これから先どう変化してゆくのか注視する所です。
こうなれば今年2023年は新たな国際的序列が成立する年になる訳で、さてこれに対して中国の習政権は極めて深刻な立場に置かれることを意味するため、どのような手練手管を用いるか。
今回のフック氏の辞任で政治体制に変化があれば、ビジネスや企業の進出にも影響してくる可能性はあるのか注意深く観察する必要があります。
「ポスト中国」というフレーズが出現するのは遠くない時間の問題と思える。COVID-19が要因で、サプライチェーンのベトナム移転と構築が今後進む可能性が高いとの予測や、ベトナム国内での過剰な期待も考えられなくありません。
だが一挙に集中するならこれに応えるだけの余力などない。技術的能力の未熟さ、開発力、ノウハウのなさ、必要とされる人的資源の不足も直ぐ解決できるとは思えないリスクがあることに現地の識者でも懸念しているほどです。
また精密部品や原材料の自国調達が出来ず、ほぼ輸入に頼るベトナム。中国はこうした輸出先で優位性があり、シタタカな外交戦略が通用する相手でないのを歴史から学んでおり、此処は上手く切り抜ける術を心得ている。

・横道に逸れるけれど 半導体がこれから国の方向と命運を握る

世界でIT産業革命と熾烈な高性能半導体素子の開発競争が報じられているが、ベトナムもこれに乗っかろうとしている。
だがローカル企業には技術がなく、これまでの繰り返しで外国企業の進出に依存する他ありません。ちょっとやそっとの規模には収まらない。莫大な投資が必要だけどJVが出来る程の豊富な資金量、高度な技術と人材を持つ自場企業が存するとも考えられません。
さらにこれまでの労働集約産業での加工貿易。要するに部品や原材料を輸入し、そこへ若い労働力を投入した組み立てが主力。だが裾野産業は思うほど育っておらず、先進工業国になる国家目標も遠のいた形。韓国頼みのスマートフォンにも陰りが見え始めてきた感もある。そうなると半導体製造へ産業構造の変換であるが、これまで衣服や靴を作ってきたワーカーでは能力不足。大量の電力と綺麗な水は必須だが、国内で供給できるのか。今年もまた海外へ労働力輸出を行う計画があるがそんな場合ではない。など数々の難問・課題に突き当たる。

ビジネスという現実的な側面からみた場合。IT関連事業に業態を一部転換しているベトナム進出企業は実際にいくつかあるが、新規に投資をするとなれば、この国の持つ根本的な課題を確認するのは重要。かといって調査や情報収集に明け暮れるのが仕事ではない。お得意である決断を後回しにしていれば、他国企業に先を越されては元の木阿弥。先手必勝を念頭に置く必要があります。

半導体についてはまさに米中対立の構図そのまま。アメリカは設計に強いが、製造は海外へ任せ裏目に出た。中国は専ら製造に力を入れてきた経緯がある。半導体の市場は年100兆円とも云われ、何れが欠けても国家の命運を握っており均衡が崩れるのは当然の成行き。
アメリカは7兆円を補助、台湾企業誘致を始めたが台湾にとれば諸刃の剣。
日本企業も取り込み国内で素材製造を画策。アメリカは貿易摩擦とか称して、自国企業の経営力やR&Dを棚に上げ日本を猛批判。我国は煮え湯を飲まされた挙句、無理矢理トップの座を下され力を削がれた過去があるが代替わりして水に流している。台湾、韓国、中国に製造能力を明け渡し、残ったのは高度な製造装置と素材の製造技術。日本は何とかして半導体大国を復活させたいため、巨費を拠出して世界一位の台湾TSMCを誘致。
そこへ中国を意識したアメリカの思惑に引き込まれ、半導体覇権同盟の歯車に組み込まれる事になった。しかしアメリカは仁義を切らずに日本を囲い込んでサプライチェーンを成立させたい。だが易々と過信すればまた使い捨てにされても不思議はない。
そこに腰を上げたオランダ。日蘭米しか造れない半導体装置の中国輸出を禁止、技術開発を遅らせ主導権構築を阻止する計画だが単なる時間稼ぎでしかない。
2ナノ半導体製造についてIBM社からライセンス供与を受け国内で製造する事になったがアメリカ商務省の厳しいチェックがあり、装置製造などに関しても米国企業の技術や部品が一個でも入っていれば第三国への輸出はCHIPS法で出来ず、日本企業はがんじがらめにされてしまう。
方や中国は10兆円を投資して半導体製造の覇権を狙っているが、こうなると何れ製造装置開発に莫大な資金と有能者を投入してくるのは目に見えています。
ここは国運と復活をかけた勝負のしどころと考えるべきか。
だが世界は次世代半導体へ。政府はこの動きの中で受け継がれてきた技術を核に若者の研究開発、ベンチャー企業への投資を国家戦略として捉えていない。企業は技術が優秀でも独り善がり、海外の顧客マーケティング・販売戦略には弱いのが典型。これを改善、克服しなければ世界初の新技術を開発しても世界の半導体巨大企業に出し抜かれ、追いかける顛末に終始し機会損失を生むだけで無意味です。

ところが先の読めない岸田首相。後期高齢者のバイデン大統領と会談、擦り寄ってご満悦。国民の理解なく好き勝手放題のてんこ盛り大振る舞いは独善偽善。ここぞとばかり形振り構わず妙な決断力だけは発揮したが近未来の有様をどう考えるか。外務大臣を経験したにも関らず外交バランスを欠き、半導体は音痴。来日した鄧小平に工場を案内した松下幸之助が、お国のために支援すると親身になり、工場を建設して経済発展に貢献した友好の時代ではもはやありません。
中国に対して貿易依存度が増しシェアトップになったにしろ、弱腰と受けとられる様なスタンスは好ましくない。だが中国経済が変調をきたせば日本もタダでは済まされないことを承知したうえなのか。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生