・今年度のGDP
IMF・国際通貨基金が発表したところに拠れば、今年のベトナム国内総生産成長率は6,2%となり、これは世界13位、東南アジアでは最も高い成長となるであろうとの見方と予想している。
東南アジアではこのほかにカンボジアが2位(世界15位)、インドネシア、フィッリピン、マレーシア・・・と続いてゆく。
世界的にみればGDPは前年の3,4%から今年は2,9%に低下するが、来年2024年には3,1%、僅かながら増加すると予想。またインフレ率は前年の8,8%から、今年は6,6%、2024年には4,3%に低下するとしています。
ベトナム製造業全体を観れば、依然として苦戦している状況に変わりはないが、新規受注が減少傾向からやや持ち直し、輸出が増加に転じるなど回復の兆しも伺えると現地経済ニュースが報じている。
だが2月にS&Pグローバルが調査したところ、ベトナム製造業での各指数は過去3カ月間に亘り悪化しているとしています。今年度に入ってから1月には受注量と生産量のいずれもが減少しており、さらに仕入れ価格、輸入コスト、また税金が上昇したことにより各社の製造コストは軒並み高止まり。このため各社共に値上げを余儀なくされているのが現状と分析しています。
別の調査に拠れば、今年度1月の購買担当者指数は47,4ポイントとなっていて、これは前月よりは少々改善したともいえるが、景気の良し悪しを判断するうえで基準となる50ポイントを3カ月間下回っていると報じている。
統計総局は、テト休みで生産量が減少した影響が出ており、1月の鉱工業生産指数が前月から14,6%、また前年同期からは8%減少したことに拠るとしている。テト休暇は最大の行事であり、さらに長く休みを取る地場の個人商店や中小零細企業もなどは売り上げが極端に減少する。
この旧正月は生産現場が動かない。HCM市と隣接する各省でも一斉に休暇となり、現業に携わる殆どのワーカー、スタッフにしても夫々の故郷に帰るのが習わし。休日は増えたけれど長期間に渡って帰郷はこの時期にしかできないのだから止むを得ません。動くのは観光・飲食などのサービス産業だけ。
一方で若干の明るい兆しもあるとしています。これは新規国内受注数の減少が鈍化傾向を見せ、また輸出案件は3カ月ぶりに増加に転じたとしている。
このため新規受注量を全体としてみれば微減にとどまったとし、さらに雇用の減少も収拾、業種によっては人手不足気味だとさえ報じられている。テト前は工場勤務者が受注減により数万人規模で解雇されると報じられたけれど、経済復活は雇用促進が指標。だが全業種が必ずしもそうはいかない状況にあります。
現地報道からは、部品供給の納期も過去2カ月間に比べて今月は若干ながらも短縮されたとしており、製造業にとって好い状況だと見ています。
調査では企業の景気感も3カ月ぶりに改善傾向が示されているが、これは調査対象である半数以上もの企業が、今後12カ月以内に生産量が以前の水準まで回復する楽観的な見通し立てた結果に拠るが、果たして読みは当るのか。
調査を担当したエコノミストは、中国のCOVID-19政策が大きく緩和され、欧米の景気停滞がこれまでに見られた予想より深刻ではない可能性を表す幾つかの兆候が見られるという。これでベトナムの今年度の経済成長についても大きな問題はないだろうとの見方をしているが、結論を急ぐのは早過ぎます。
ベトナムの工業生産高はこれらを総合的に勘案して6,6%増加するとの予測もしているが、まだ業種によって混沌としている状況は否めません。
・FDI誘致は30%増加の可能性がある?
ベトナム経済は大きく海外企業にその命運が委ねられてきました。長年に亘って赤字に苦しんできたけれど、転機となったのが2000年初頭から始まった携帯電話の輸出。これに拠り徐々に携帯電話の世界的生産拠点となり、爾後は黒字に転化してゆく事になります。いわばサムスン効果だが相見互いの関係。
ところがこの様な外資系企業が輸出する製品は、ベトナム全体の輸出高からすると70%を超え、これが止まらない。いわば歪とも思えるけれど、それでもなおかつ政府にしろ、各省レベルの投資委員会にしろ、今もって誘致に熱心。
日本にもこうした省レベルでのミッションが来て盛んにその地域のメリットなどをアピールしている。首都でさえ未だに工業団地を新規に4カ所も造成するなどの計画を発表。他省に取られまいとしているのです。もはや国策としてではなく、これは各省が夫々外資系企業を誘致して税収的に豊かになりたいとの願望です。
一つの要因としては国内の交通・道路インフラの整備が進化したこと。もはや20~10年前とは大きく異なっており、高速道路が建設され、地方の主要道でも舗装が進み、トンネルが開通。物流網も整備されてきました。
空港も整備が進み、カーゴ便も飛び時間短縮が要求される先端精密機器などもこれまでと異なってかなり速く調達や輸出入が可能になってきた。人の生活も含め全ての時間軸が経済の成長と共に速度を増すという変化が生じています。
だが一向に収まらないのは国民性なのか、国内地場企業だって苦しんでいます。
こういう風潮が全く収まらないのに、また外資系企業の輸出割合が増える一方だというのに、相変わらずFDI誘致だけは熱心に競い合って活動している。
然しながら外資系企業だって変わりはない。未だに真の現地・現場の事情を調べないままに海外へ生産拠点を移転しようという動きも収まりません。
あれほどCOVID-19パンデミックで3年半も部品調達が出来ないと右往左往し、やれ中国から移転だの、日本国内回帰だと言いながら、技術者育成や国内生産に完全切り替えとの話は聞かないどころか、国内の空洞化を考えずベトナム等の海外への生産拠点の移転を考える企業は多い。だが本当に世界の部品供給網へと発展が可能なのか。必要とされるだけの高度な技術人材が本当に揃うのか。
現地からの報道では、依然ベトナムは多額のFDIの流入を受け入れるとし、その魅力を論じているが、いつもの言い尽くされたフレーズ感でしかない。
こうした中で計画投資省・外国投資庁では、2023年度にベトナムは36~38億ドルの外国から直接投資を受ける可能性があると言及。これは30年前を比較して約37倍にも達するとあります。
同省では投資環境の改善に努め、投資家との信頼関係を築く。自由貿易協定の利点を最大限に活用する方針としているが、当然のことを述べたまでのこと。
計画投資省はベトナム・ビジネス・フォーラム同盟と協力、調査をしたところでは76%の企業が生産とビジネスを行う上で、政策の有効性を中程度、または高いと評価されたとしています。しかし鵜呑みにするのはいけません。
FDIを誘致するために最も効果的なのはVATの免除と削減。またガソリン価格の安定、労働許可手続きと通関の改善、輸出入政策、労働者支援に関する政策だとしています。だがそれだけでもないし、年々緩やかになるどころか、外国企業・人が増えるに連れて厳しくなってくることを実感しています。
しかしこれらは各国の商工会議所などから大使館などを通じて何年にも渡って現地に進出した企業の要望として相手側に通知している事案ばかりだが、一向に改善されていないのが実態。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生