日銀は長期金利の変動幅を僅かに広げた。総裁が変わろうが世界的学者であろうと過去から続く呪縛から逃れられずに円相場は下落を続けている。FRBが物価上昇率2%を超えたとして金利を上げ、未だその傾向にあるとして頑なに金融緩和継続と称して右往左往。そこへ米国債格付けダウンで手詰まりの窮地。
これは大企業のためでしかなく、結果として過去最大の70兆円を超える歳入になったが、中小企業や一般国民のメリットなど全く無視。むしろジリ貧へと追いこんでいます。ガソリン価格は上昇、補助がなくなれば何れは1ℓ150円を超える日も近いが、そうなると物価上昇は目に見えているけれど、それ以上に国民からは乾いた雑巾を絞ってまで軍事費拡大に注ぎ込むという政府の愚考。
ベトナムは事情が異なるけれど、金利を下げて経済を底上げしたいとする。
ところが、先の様な施策を講じながらも実際は借り手が見つからず、融資拡大をしたいけれど、どうにもならないと困惑しているのです。報道ではベトナムの信用の伸びは今年半年間で僅か3,35%に留まり、ここ数年で最低の成長と伝えています。経済的挑戦を目指す融資先を見つけるのにもがいている状況。
国家銀行に拠ると6月15日時点で、総融資額は年初から3,36%増、前年比では9%近く増加し12,3兆VNDになったとしています。
しかしながら思うような伸長ではなく、これは鈍化であり、その要因は人々が先行き不安から支出を引き締めるに従って、経済が低迷。投資需要が減少しているのが事実であると分析しています。多くの企業では受注が極端に減り、最少ロットで経営しているのが実情であり、さらに従業員を多数解雇しなければならない程に業績が落ち込んでいる状況。こうなると設備投資や販路拡大のため資金需要など見込める筈などありません。
銀行では顧客に借りるように説得しているけれど、一向に効果が無く苦労しているばかりか、金利が低くなれば多くの人はここぞとばかりにローンを借り換えるとか返済しているともあります。一方、資金融資を望む企業もあるが、これは担保が無いとか、返済に問題があるなど融資基準を満たしていないので、新規顧客開拓に繋がっていません。
銀行は年5,8%程度の預金利息を付けているが、これは2022年末に比べて約0,7%低くなっている。また融資金利は年8,9%で、1%低下している。
銀行では中央銀行の決定が経済に影響するには時間が掛るとする一方で、銀行が金利を下げるためには経費を削減する可能性もあるとしているのです。
経済専門家は金利を下げるだけでは成長に拍車をかけるのには十分ではない。
また銀行にしても従来の顧客に頼ることなく、新しい融資市場を開拓する必要があり、政府の政策を利用しその市場に影響を与える努力も必要と述べている。
・個人の預金が増加している
この様な状況下ながら、トイチェ紙に拠ると実際には個人預金者の口座が急増、預金量も増えているとしています。
この理由は、これまで長い間自国通貨や銀行には信用が無く、金や外貨を求めて購入し保有していたけれど、残念乍ら最も信用していた金の価格は国際価格であるため、求めたくても現在高騰していて全く手が出ません。
また米ドルなどの外貨もこのところは自国通貨の値下がりが見られず、かなり安定しているため、手数料を考えると交換するメリットは殆どありません。
こうなると銀行への預金が最も理に適っているというのが顧客心理と言えます。
また企業にとっても需要の落ち込みから生産活動は長く停滞しており、事業が困難に直面していることを証明している訳で、銀行から借り入れを増やし事業を拡大する時期ではないとの賢明な判断。安全な逃避先として銀行預金を選択、少しでも利息を得る方が確実であるとの認識が働いたと考えます。
経済専門家は、過去数カ月間で預金利息は低下しているけれど、一般預金者や企業は依然として預金を増やす傾向にあり、今のところ堅実な方法に違いない。
最近であるが、この傾向をみて、政府は貸し出しを増やすため貸出金利を最低1,5%引き下げるように銀行へ要請したと伝えられています。
ドルはそれほど変動が無いにしろ、例えば日本円を例にあげると円高が最高期にあった時に比べると、ほぼ100万VNDも違いがあるのです。そのくらい現在の円の価値は下がっているが、これは経済が弱くなり国際競争力も陰りが出てきたという報道が席巻しているけれど、必ずしもそう言う状況だけでなく、これでもかと円安誘導を行う理論派の金融愚策堅持に問題があると考えます。
もはや打つ手なし、切り札も限界、過ちを認めず、日本をさらに貶めている。
ベトナムでは預金金利が低下しているにもかかわらず、個人顧客の預金はこの5月末時点で6300兆VND(約2657億米ドル)を超えて、昨年9月に始まった増加傾向が現在も続いており個人顧客による過去最高の預金額となったと報じています。先行きの生活不安が原因か。
此の数字は昨年8月末から8,21%の増加。一方で企業等の預金量は4月から約700兆VND(約8,94億ドル)の増加し、合計で5700兆VND(約2408億ドル)を超えたとする。
預金金利は2022年下旬に急落したが、この時点では年率9%の銀行は殆どなく昨年11月~12月時点でさえ10%・11%が一般的。
なお年初からの継続(定期)預金金利は6月中旬から主に年6,3~6,5%となっていて、期間長さで金利差がほとんど無いため一部の貸出先では6ヵ月~12ヵ月の預金金利を同じレートを採用しています。
中央銀行ではこの傾向を観て、銀行はさらに金利を下げるであろうが、需要が少ない中、企業も借り入れを増やしていないとする。必要に応じて政策金利をさらに下げると副総裁が語り、経済浮揚のため機動的で柔軟性があると見える。
もしそうでなければ銀行は流動性を持っているため、自己のコスト削減などの努力で融資金利を引き下げる事もあると言及しています。
しかし経済アナリストからすれば、企業が直面している最大の困難とは現ナマなど必要でなく、国内と世界マーケット両方の需要減速にあるとしている。
ベトナムエキスプレスの調査では、企業の60%が注文の減少に苦しんでおり、事実企業の資金担当者は融資を受けた所で、どう使っていいのか分からないというほどであって宝の持ち腐れ。仮に金利が低くてもタダでさえ生産は無く、従業員もレイオフしている所に金を借りるバカなどいる訳がないと呆れる。
もし銀行の担当者が無理矢理貸し付けても、不良債権の増加に繋がるだけとし、金融システム全体へ悪影響を及ぼすため、貸出量を下げることはできないとも苦慮しているとあります。こうなると銀行も冬の時代へ突入、共倒れするか。
金融政策は大事であるが、ビジネスに関連する全ての問題を解決する魔法の杖(手段)ではない。公共投資への支出と消費の増加などの要素が重要で、ただ回復機会を待つしかないのか、とあきらめ顔をするしかないのです。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生