銀行は認可された資本のほぼ半分を単一の事業案件に融資

2023年9月8日(金)

このような状況から、貸出先を見つけられない銀行は安直な道を選んだとする報道があります。
即ち本来あってはならないけれど、融資限度額を超えたあきらかな資金の貸付違反行為。要するに事業主には手元資金が無く、そのままでは事業が破綻する。これを知ったうえで担当者、あるいは銀行ぐるみで融資した無茶振りです。
これは政府の検査官が違反を発見したもので、ひとつの不動産プロジェクトに必要とされる資金のほぼ半分も融資したとし、何と5行が該当しているという。
このような事態はバブル期の日本も同じ状況にあり、事業主どころか個人住宅ローンにまで及ぶが、表向き銀行はタッチせず業者に任せっきり。信用供与は系列の保証会社が行うか、前年度の所得を誤魔化し修正申告する手口を指南し、融資額を膨らませる。こうなると月々の返済だって嵩むし、ボーナスなど無い自営業者等も家を買ったと浮かれるが、ついには返済できなくなってしまう。
その結果、多くの銀行が莫大な不良資産を抱えて今に至っているのです。危険と承知しながら安易さに流されてしまう。銀行担当者と弱小デベロッパーから町の不動産屋に至るまで、同じ穴の狢が利益を貪りあう病に起こされていた。そこへ反社団体まで食い込んできて、価格は上がる一方で同にも止まらない。厳正であるべき銀行がまさに自ら反社会的行動を採った報いがきたのです。
さて、この5行とはVietA Bank、National Citizen Bank、Techcombank、BacABank、Sacombank。大手も含まれており、これは2013年~2017年に起きていたという。調べがさらに進めばもっと増えるのは間違いありません。
一つのプロジェクトに多額の融資をしたとあるが、最大は50%を超えるという。法律では承認された資本の15%に制限されているとありますから異常なまでの貸付金額。これを上層部が知らない訳などあり得ないのです。
分らないとしても、また直接融資ではなく、迂回融資。すなわち複数の企業へ(子会社など)分かっていながら貸し出したとか、株式購入という形だったとあるので、悪質な確信犯であると思わざるを得ません。
例えば最も問題となる銀行はサコムBK(サイゴン商業銀行)。調査対象期間の2013年~2017年には、9社へ合計約9兆2600億VNDを融資。
これは資本の48,5%にも及ぶという。
サコムBKは建設・不動産事業を行なっており、HCM市管轄のトゥドゥック市でのビン・アン新都市大規模開発事業の単一プロジェクトに投資していた。さらに銀行はこのプロジェクトに対して土地などを担保にしていたとあるが、法的書類は無く、また銀行の説明では、リスクをもたらす此の投資家に対してではなく、9人の借り手に個別に行ったと抗弁しています。
日本のように直接銀行が不動産事業を併営できないのと違い、ベトナムは直営方式が可能。各銀行では堂々とプロジェクトのポスターを掲示して顧客へ告知しているくらいなのです。
テコムBKでも企業へ2兆VND強を融資。HCM市1区のヴィンホームズ・
バーソン。ゴールデンリバーの高級プロジェクトへ融資。これに関して借り手の評価は行なわれておらず、支払いが約束通りにされるかは不確定。さらに、此の案件は実施されていない上、建設許可は取り消されているというお粗末さ。
しかしテコムBKは、資金の回収能力に関しては再評価もして居らず、もはや如何なる未払記録もないどころか、リスクは含まれないとしているが、何ともいい加減なほんの一部の話かも知れない。検査をすればまたゾロ出て来る。
ヴィンGに関しては、これまで主なリゾート、商業施設、不動産プロジェクトを全国展開してのし上がってきた。さらにこの不動産益を原資に国内初の地場自動車産業を造った立志伝中の人物で有名だが、赤字の垂れ流しが続く状態。
ところが此処にきてこの様な問題が暴露されたけれど、現地の識者に拠れば、今に始まったものでは無く、これまでにも多くの不動産案件でインサイダーや行政と結託。真っ当な業者が排除されたなどの噂があってバカを見たとある。
今回徹底的に膿を出さなければならないが、どう裏で政治的忖度や配慮が働き隠蔽されるか、担当者が異動などの仕打ちを受けて検査打ち止めになるのかは表には出ないけれど、メディアは追跡して報じる責任があると考えるのだが。
この他の銀行でも、急成長する乳業メーカーTH社の子会社への無資格融資で、返済できないとか、株式評価を正確に行わないまま担保として受け入れた。
借り手の財務状況やプロジェクトは期限内に完遂できる事業能力が無いことが分っているのに融資を実行した事が検査で分かったが、実際にこの業者の案件は完工せずに販売できなかったなど、大手でさえ正しい評価基準を行なわない、あるいは制限を超えている事実を知りながら、不明瞭かつ不透明な融資を行なっていた実態が検査で明るみになったと伝えられ、これに市民は拍手喝采。

ベトナムの銀行業務は遅れている。当座預金は無く小切手などあることすら知らなかった。日系企業から紹介があり、銀行の担当者と会った時、融資をする際には担当者にお礼と称し、お小遣いを支払うように言われたなどもあるほど腐りきった話が蔓延するほどいい加減だったが、殆ど日常茶飯事の上から目線。
さる大手邦銀の現地支店長が曰く、ベトナムの銀行は単なる銀行ごっこなんて揶揄していたけれど、単なる金貸し屋でしかなかった時期があった様に思える。
現法責任者などは、決済で送金がスマホでもできるようになったが落とし穴はあった。これなど送金手数料で出の問題や、銀行側の都合によるキャンセル時の手続き上で多額の手数料で大揉めしたとある。さらに銀行担当者が口座からひとケタ間違って?手数料を引いていたなど、かなり様々な問題があります。
私自身も決裁した時、後で調べ直すと50万VND札が一枚不足していたが、どうしようもない。スタッフに言わせると、大きな決済金額になれば数えるだけでも大変な手間。多くのクライアントは時間を掛けて枚数をチェックしないため、一枚くらいわざと抜いても分からないので、もしかすれば外国人と分かっているからとったのかもねと言っていたが、アバウトさではなく立派な犯罪。
しかし日系の銀行は計算器を貸してくれ、別室でこの作業をさせてくれたから短時間で済むし安心できました。窓口の担当者はベトナム人、何ともチグハグだが日本企業が行う教育の差なのか、個人に帰するモラルの問題なのか。
さらに最近ニセ札の話は聞かないけれど、随分前の話になるが、銀行で貰ったこうした大量の札束の中に、粗悪な偽札がまじっていたことがある。日本ではとんでもないことで、もちろんこれを使うことなどせず警察に届ける。だが、此処の従業員などは手慣れたもの。何事もなかったように平然と支払いの中に紛れ込ませていたのです。
何というカルチャーショック。適当だというべきか。こういう状況であれば、国内に一体何枚、いやどれほどの偽札が流通していたのだろうか?分らない。
ということで、政府は紙幣を止めてプラスチック製の札に切り替えたけれど、もはや決済などは電子ペイで行うことが多くなったので、今では笑い話で流せられる昔のお伽話です。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生