ベトナムの農業 まとめ 1

2023年11月28日(火)

ベトナムは農業大国です。日本からベトナム進出と言えば、これまで工業関連が主だったが近頃三次産業が増えているのは周知の通り。しかし成長の陰に隠れているが、壮大な大地、実りと食の豊かさは地方でこそ味わえるものです。
今ではコーヒーは元より、バナナ、ドラゴンフルーツなど8種類の南国の果実が現在日本に輸出され、年々増加しているようです。価格は決して安くないけれど個人的には大歓迎。もっと種類と量が増え、値段が下がればなお嬉しい。
今年はベトナム米の新品種が日本市場に上陸したニュースがあり、値段は結構高いのでまさかと思ったけれど、爾後どうなったか聞いたことはありません。
正直、消費は限定的だろうし、日本人の食味に合うのか疑問でしかありません。話題作りならいいけれど品種はインディカ米。恐らく日本の食卓にあがるのは無理、日本人の舌へ挑戦し過ぎか自己満足。等級試験をするなら多くの種類がある日本米には勝てない。水の違いもあるし、土地を休ませないから旨さは劣ると思えます。日本は各自治体で積年の米の品種改良が大きい財産。栽培法も独自性が夫々にあり、いくら自信があっても今の所は勝負にならないと考える。
これまで現地の農業や農産品の状況、生産組合、人物、日本の道の駅システム導入、また最近の先端技術や農業機械導入などに関してコラムにしてきました。また前回は米、果物、コーヒーなどの最新事情を取り上げたのです。
ベトナムの農業はこの所急速にスマート化が進み、変わろうとしているように見受けるが、課題もまだ沢山あるとも感じています。そこで今までの経験から一度整理してみようと思い当たった訳です。
初めてベトナムの土を踏んでから26年が経過。列車の窓からのんびりと農夫が水牛に木製農機具を曳かせていた水田を見て驚いた。メコンデルタでは米の三期作を見た。中部高原ダラット高原の野菜産地には何度も訪れ、コーヒーの集散地であるバンメトーに行って国立コーヒー研究所を訪問、農園も蜂蜜農家へも行った。またこの町で日本人が手掛ける花卉栽培のハウスにも伺いました。
HCM市郊外の農業センター視察、所長が知人でもあったので日本企業も参加。メコン各省では椰子、初期段階であったココア栽培。HCM市近郊の野菜畑にゴム林。フーコック島は胡椒農園。ファンティエットはドラゴンフルーツ畑。ロンアン省のパイナップル農家。知人・友人の実家でのバナナに果樹園など、外国人に帰国ベト僑が農産物を生産、現地の人も活躍しているが、貴重な意見を拝聴。思い起こせばかなりの生産地に足を運ぶ機会を得たことは幸運でした。
かつての同僚が有機栽培コーヒー農園を開墾中。土作りが大事と元同僚に在住日本人の農業専門家を紹介して、全員でクチ近くの生産候補地視察等々。思いも寄らず各地の農業関係者に深く関ったが、期待以上の収穫がありました。

・ベトナムの農業 一次産業として状況

日本の農水省資料に拠ると、2022年度のベトナムの農業人口は約6012万人で61,23%とあり、これは世界6位でした。農業人口として最高だったのは2015年度の約6314万人で、66、9%。また全人口に占める農業人口が最も多かったのは残っている記録に拠ると、1960年時点で85,3%、全人口が約3267万人だった当時、2788万人も居たとあります。
経済が成長し、生産人口が工業やサービス産業に移って行く程に、農業従事者は減少傾向にあり、また担い手が高齢化している上に、若者が都会に出て行き現金収入を得られる仕事へ流れ後継者が居ない、という現象に直面しています。
こうした問題は何処でも同じ。となると耕作放棄地が増える一方。ベトナムも人口ボーナスが減少、高齢化が進んでいるという社会状況が顕著になっており、現在は世界的に有数の農産物を生産している国と言え、このままであれば何れ日本など先進国と同じ状況に置かれるのは時間の問題、目に見えています。
またGDPに占める割合は、在ベトナム日本大使館・経済統計2021年度に拠ると、農林水産業として12,4%、農業だけなら別の資料では11,44%とあります。だが何れの国でも付加価値が低いという問題に変わりありません。
ベトナムが国策として先進・先端工業国化を目指すなら、またCOVID-19が原因として有望視されたプライチェーン国としてこれから先、国を成長させるのであれば、農業(林水産業)をどのように施策として行くのか、真剣に考えるべき時期にあると思っています。

・米研究と今後の米作りの目指すところ

以前のこと、関西社会人大学院連合の研究会でベトナムのディープな農業視察、主にメコンデルタ各地を巡りました。カントー大学では農学部の諸先生方とも会合を得て、質問もでき貴重な体験を得ました。
偶然、座長である綾木先生の目に留まったのがこの大学の助教授で、暫く前に京都に留学していた女性だったのです。双方ビックリ。ご縁と言うしかないのですが、実にこの大学は日本に留学された先生がクラスを受け持っておられる。
当然日本語も話されるし、日本との関係も深く、これまでも非常にいい関係を築いてきたのです。現在この大学は農業関係でもメコン地域における最も重要な位置付けであり、ベトナム農業の近代化やスマート農業の推進に在って日本企業や政府からも事業を共同で行っています。
ST24とかいうベトナム米の新品種はソクチャン省の方が研究を重ねて成果で、アメリカにも輸出して高評価という。こうした研究環境や基盤は長い歴史の上で積み重ねられてものだが、これに関して研究に携わった人物を整理してみます。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生