現地の経済ニュースは順調に経済が復活とか、やれ不動産は来年には回復する兆しが見えてきた?など期待感が先行。如何にも景気が良さそうだとする海外向けの記事を書いているが、果たして本当の足許はどうなのか。
関西のある県知事は11月に4度目の訪越とか。確か初訪越した際に琵琶湖で培った水処理の技術を活かして・・・などコメント出発前に発していたと記憶しているけれど、爾後、県内企業が何か具体的なこの恩恵を授かったと聞いたことはないし、訪問で明らかに目に見える成果があったとも思えない。明らかにすでに進出した民間企業の努力の後を追いかけているだけの辻褄合わせ。
また他県の知事もベトナム詣を行ない、地方銀行がビジネス発信をしているが、記事を読んでも結果を示したとは到底思えない。事実これまで何故か何県もの知事が鳴り物入りで訪越したけれど、まさに進出先として有望との見解からか批判的なコメントを見たことはなく、ベトナムと言えばまさに免罪符のよう。
これまで県関係から幾つか県立大学への留学生招聘や、実習生受け入れなどの打診があり何度か話す機会もあった。だが実習生受け入れは県でなく地元だし、留学の話題も何時しか消えてしまった。迷惑そうな素振りだったのは担当者。
日本の自治体が現地を視察するとなれば相手は歓迎する。また同行する企業もビジネス機会とみて、現地企業などを訪問する。しかし問題はいずれも資金。
民間の投資ではできない老朽化したインフラの整備まで話が出て来るけれど、これはODA案件としてJICAなどがするべき。相手は金と技術にノウハウ供与を期待しているけれど的外れとしか思えません。これが現実です。
ある県知事も県内大企業が持つ水処理を挙げていたけれど、実際に動くことはなく、さる民間の工業団地で何年か後に実績作りのため採用されたきり。
現地をよく知っている人からすれば、ビジネスが稼働した例は殆ど見当たらず、実現可能性が低い夢物語。出張の方便に過ぎず、無駄の骨頂でしかありません。
事前にニーズやウオンツが何か充分調べる必要があるけれど、殆どやっていないのが実情でないかと考えます。また具体的な訪越目的が見えないのは、県内企業と事前に摺り合わせしたうえではないから。現地の事業環境は急速に変化しているけれど、恐らく気付いている様ではなさそう。
筆者は大阪市長の訪越前に市役所に呼ばれ、何人かの職員に現地事情を話して欲しいと要請があった。実際に彼らは何の知識も持っていなかったし最も腹立たしかったのは交通費さえも出なかった。情報をタダと考える日本の特徴そのもの。これに対して商工会議所や銀行、民間団体の講演や現地視察はまだ真剣。個人的にはポストベトナムを視野に入れるべき時期にあると思っている。
・いま失業者が増えている
こういった中で、現地ニュースではHCM市で失業者が前年比11%増加したと報じています。
記事に拠ると今年10月末までに142,700人以上が失業手当を申請しているが、これは市の雇用サービスセンターへの取材で明らかになった情報だとしています。
10月だけでも14,200人が失業保険を申請しており、前月からは17%の増加とある。これまでに市労働局は14万人を超える労働者に対し3~12か月分の給付を承認した。給付の最高額は2340万VND、最低額が130万VND、平均は550万VNDとあります。また平均の給付期間は6カ月。
此の失業保険の給付申請が増えた原因は、労働局の調査に拠れば企業の受注減に拠る生産規模の縮小であり、やむなく人員削減を進めることが理由としています。という事は、COVID-19が保健省に拠りB群に移行してから罹患者の発表などは行なわれていないけれど、収束したと報じられているのだが思いのほか実体経済は回復していないという事が分かります。
HCM市当局が開催した社会経済状況と年末までの状況予測に関する会議で、市計画投資局の局長は、市内企業に拠る人員削減は第4四半期も継続して増加するとの見通しを述べ、これに拠って社会福祉制度が圧迫されており市の経済目標達成が難しくなっているとした。さらに世界の経済情勢も、紛争が増え、状況は複雑化しまた予測不可能だと指摘。こうしたことがHCM市にも影響をもたらしている。さらに為替市場、金融市場、不動産市場へも引き続き多くのリスクが存在すると悲観的見通しを立てたとあります。
市等景況の報告では、市内製造業で働く労働者指数は前月から0,5%上昇しているが、前年同期比では3,25の減少。製造業に従事するのは約5万人と最も失業者の多い業界であり、保険給付率は35,33%を占めている。
また今年1~10月末までの労働指数は前年同期比で2,5%減少。皮革製造業が17%と減少率が最も高く、非鉄金属12%減、水処置10%減と続く。また失業保険を給付申請した人の学歴を調査したところでは、何ら資格を持たない単純労働者が52%を占め、大卒者は36%。残りは初級・中級レベルの資格者。
また年齢では、女性の40歳以上が16%、男性が14%。最も多い年齢層は25歳~40歳で、女性が36%、男性は26%であった。
市当局は求人企業と求職者のマッチングを進めているというが、市に拠ると市の労働市場と労働需要予測は、年末年始にかけて需要活性化に対応するために、75,000人の労働者を企業が必要としているとあります。果たして期待感だけなのか、確実なデータや調査に基づいた実需予測なのか。よく分らない。
株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生