低供給と旺盛な需要で多くの農産物価格が過去最高水準に

2024年6月6日(木)

ベトナムへ観光や旅行に行く予定がある方は土産に何を選ばれるのでしょう。
かつてレロイ通りとグエンフエ通りの角には国営デパートと称された商業施設がありました。交通の便が良く、また様々な土産物店の他にCOOPマートもあって余所に行かなくても此処で一通り買い物が済ませられたのです。
織物、ハノイの有名なバッチャン焼き(と言ってもHCM市近郊で焼かれた物が結構あった)、Tシャツに菓子・食品類に調味料、ベトナム産コーヒー等々。
また一つ東の通りにはドンコイ通りがあり、此処には専門店もあるし、ツアーガイドが案内する店も多かった。親しい日本人スタッフが在籍した土産物専門の大型店も人気。此処などは信頼できる商品があり、中部で採れる本物の香木にジッポーのライターなども日本人観光客の為に置いてありました。二重価格ではなく品質は保証されているし、説明に納得して買うのだから問題が起きることなどほぼなかったようで、進出企業御用達でもありました。
さらにベンタン市場周辺には金屋が多く、アクセサリーなど飾り物でも重さで値段を計る。これを持ち出すのも良くないようだが、土産としてではなく女性が身に付けておけば何も云われることはありませんでした。

最近TV番組でよく見かけるようになったのが、検知犬を使った肉や果物などの持ち込み禁止商品の摘発。それまでは良くないことではあるけれど、敢えて申告せずに通過できました。駐在員や現地在住者などはパスポートにベタベタとハンコが押され、頁が足りなくなれば場合によっては増補という形で紙面を増やしたのです。こうなると税関でも「お仕事ですか?」とだけで何も聞かれないし、トランクを開けろと言われた事など一切ありませんでした。
むしろタンソンニャットの方が、制限以上の外貨持ち出しとか、ヌックマムなど臭いが強烈な製品、はたまたテトに造るバイン・チュンを他の持ち出し禁止物だと誤認したほど厳しくチェックしたほどです。
こう言ったエピソードもあるけれど、慣れると土産にするのは現地産コーヒーや蜂蜜、在住ベトナム人には日本で余り売られていなかった食品に調味料が喜ばれました。殊に友人が製造販売するコーヒーは帰国前に焙煎してくれるので香りは高いし、何よりも品質に優れていて安心だし、安いのです。また胡椒や塩(精製していない)も手軽で意外と人気がありました。

ところが先に項に書いた如くこの所の気候変動で、世界2位というコーヒーや、世界1位で40%を生産する胡椒(フーコック島産が良い)の価格が高騰しているとのニュースで連日賑わっています。また輸出急増という原因も重なって市場は供給不足が続いています。ベトナム産胡椒は今年10~15%生産量が減少し、160,000~165,000トンになる見込みとあります。
ベトナム産ドリアンは、中国が一時買わなくなったので価格が急落したと報じられていたのだが、此処に来てこれも価格高騰とか報じられている。
喜んでいるのは利益が得られる生産者とあるけれど、需要に供給が追い付けない状態だが、ドリアンとカカオは1月から3月にかけて倍増したが、3月の終わりには史上最高値を記録したとあります。だがベトナム国内だけではなく、世界市場でもコーヒー、カカオ、胡椒は過去最高値に達したが、カカオは世界的生産地であるガーナなどのアフリカで鉱物資源採掘のため農場が破壊されているという人為的な問題を抱えているので、この先もまだ上昇は必至です。
コーヒー価格は今年1月にはベトナム国内で1キロ当たり7万VNDだったけれど、4月初めには11万VNDを超え、昨年同期比で2~3倍の価格。特に高級品であるアラビカ種などは、ニューヨーク取引所で1トン当たり5100ドルとなったという。またベトナムで80%以上を占める主力のロブスタ種も同じ傾向にあって先物取引でも4000ドル近くになった模様。このため貿易商社は調達に苦労しているという。このロブスタ種、世界的に不足して今年には270万袋が需要に満たない見通しとされている。
この旺盛な需要は世界的傾向とかで、輸出が増加したことに拠るものと生産者は捉えていると記事では解説があるが、予想は全て上回ったともあります。
ベトナムコーヒー協会の会長は、2022~2023年以降の収穫量が少なく、生産農家の殆どは売り払って在庫が過去最低となったためとしている。
また農業農村開発省では、これ等の農産品栽培地域は中部高原とメコンデルタの多くの農家がドリアンやその他の作物に切り替えたため、長年の価格下落により縮小している原因でもあると、統計から指摘しているとあります。
これに拠ると、コーヒーの作付面積は2022年には65万6000Hrで、3年前に比べて5%減少。今年10%生産量が減少する見通しで、カカオにしても2013年の10000Hrから3481Hrに急減しているという。
ドリアンを土産にすることは実質的には不可で、航空機内には持ち込みも出来ないし、検疫で通過する事はほぼ難しいから良いけれど、しかし現地で食するとなれば、収穫時期は5月に始まるのでもう少しすると価格が落ち着く可能性はあるが、年末にかけて再度上昇になる公算と見ているという。

何れにしても、エルニーニョに拠るベトナムの今年の乾季での干ばつと水不足が続く可能性は高く、これに拠る供給減少と、世界的需要の大きい事情、また輸送費の高騰も重なり価格の高止まりは避けられない見通。また金利引き下げの可能性も胡椒、コーヒー価格を上げる要因に繋がるとの指摘がされている。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生