ベトナムは2030年までにGDP成長率10%を目指す

2026年1月8日(木)

・好調だった第三四半期

ベトナムの経済は第三四半期に前年同期比で推定8,2%拡大したという。これは過去10年間で二番目に高かったとしている。
タン財務大臣は政府の会議で、最初の9カ月間で国の社会経済状況は引き続いて良好であった。成長率はCOVID-19パンデミック後の不況から経済が回復した2022年の第三四半期に次いで好調、工業・建設業が9,45%、農林水産業が3,74%、さらにサービス産業は8,54%増であったと報告。
並行して生産、事業活動も高いプラスの勢いを維持し、9月の消費者物価指数は3,27%の上昇を見た。このため当局は供給と価格を効果的に管理したとあり、信用の伸びは高止まりし、新規貸出金利は低下、株式市場と社債も引き続いて活発に推移していると述べています。
国家の収入は192兆VNDに達し30,5%の増加。しかし一定の困難に直面しており、大きな外部圧力があり、このため新たな成長への原動力が実現するには時間が掛かるとした。また制度や法的整備は成長に追い付いていけないし、自然災害への準備と対策には困難で不十分さがあることを認めています。

即ち外部圧力とは明確にしていないけれど、トランプ関税であり、ベトナムには資源が無く、企業歴史が総じて浅く確固たる技術が無い。自国企業が独自で開発研究するには現状では無理がある。外国企業に依存する体質に変わりなく輸出にしても地場企業は生産性や付加価値が低い労働集約産業、単純労働の域を抜けられないとの事なのです。経済成長が好調なのは、外資系企業の投資が活発であり、輸出の多くはこれらに委ねたままでしかないのが実態。この実体経済に対する現状認識に政府は甘く、統計からの数字上での判断には問題があるとしか言えません。
こうした状況から財務省は、各機関がこの国会会期に向け決議案の作成を慎重に行い、幅広い合意を行って、承認を求め直ちに実行することを提案した。
省庁、各部門、地方自治体は輸出の促進、バランスの取れた持続可能な貿易の発展を行い、投資を刺激し、消費者需要の拡大と新たな成長への原動力の育成を求めている。さらにこういう流れの中でチン首相は政府機関に対して、世界の動向とベトナムに対する影響を分析する様に求め、マクロ経済の安定、インフレ抑制、経済収支の維持を図りGDP成長率を8,3~8,5%に達する目標を立て、課題と問題解決を明確に特定する様に要請したとあります。
だが具体的な戦略や政策がある訳では無く、最終的には外国企業の投資と企業進出に依存する体質を変えなければ何も変わらないのです。

・2030年までにGDP成長率10%を目指す

政府は2026年から2030年までにかけて、毎年少なくても10%のGDP成長率を10%目標としており、そうなれば、ベトナムの経済は東南アジアで第3位になると予測しています。
ビン副首相はハノイで開催された党大会で、2025年から2030年までに一人当たりのGDPが8500ドルになると予想、そうなるとベトナムは世界の30経済圏に入るとしている。今年の予測では5100億ドルに達する予定なので、5年前に比べて5ランクの上昇、32位となると踏んでいます。
一人当たりでは総人口が伸びても5000ドル以上となる模様で、これは2020年に3552ドルから大幅に伸びることを意味する訳です。
今年度の成長率は8%を超えると推測され、その後の数年間は2桁成長の基盤が築かれるが、貿易も着実に増加しており今年度は過去最高の8500億ドルに達すると見込まれ、世界の20の貿易国のひとつになるという。

この目標に関して、2050年を見据えて、2021年から2030年までの国家マスタープランの調整を行い、サービス産業のGDPが50%以上、工業と建設が40%以上、農林水産業は10%未満となるとしている。
労働生産性の伸びを2021年~2030年の期間に7%を目標、2026年~2030年に8,5%以上。主要素生産性は55%以上とする決議を行っているが、これにはデジタル経済が30%を占め、その為に国家のデジタル変革を行い、デジタルで社会・経済・政府を構築、デジタルとデータインフラの急速な発展を求めているのです。
これを実現するために政府は今後5年間で質の高い人材を輩出、地域及び世界の基準に沿った近代的な教育システムの開発を目指すとある。インフラ整備は徐々に近代化され都市部での成長を促進、また新しい農村開発へ継続的な投資を推進。科学、技術、革新が重要な推進力となり得るとしています。

副首相は、インフレを抑制し、公的債務、政府債務、対外債務、財政赤字が許容される範囲に収まる様にすると述べて、DX、グリーンビジネスへの移行、循環型経済、新興セクターなどの新たな成長が期待できる業態が優先されるとしている。また公共部門は引き続き国民の経済を主導、指導するが、民間部門でも重要な推進力とするとし、技術移転に重点を置き、外国直接投資を選択的に誘致するとしたのです。
またなんとも勝手なことを言うのか。結局は外国政府のODA、外資系企業の進出と投資を積極的に甘受して成長しきたけれど、これからは必要な技術だけ欲しいという都合の良さ。此処にも自助努力の欠片も見えて来ないのです。
チン首相は、ベトナムは様々な分野で重要なマイルストーンを達成し、成果は年々向上していると述べたとある。だが2026年~2030年の世界情勢は機会よりもリスクが大きく、複雑になっている。このため経済の安定を維持し、インフラを抑制し、GCP成長率を一貫して10%以上に持って行くことが重要だとし、その解決策を求められるとしている。
だが海外のことよりも自国がどうすべきなのか、経済成長するにはインフレは必ず伴ってきます。国民の所得も向上するが。人件費や経費も増加する。このスパイラルを無視できない。この国が抱えている問題には触れず、勢いのある良い事ばかり語ったところで、お得意のプロパガンダのアジテートでしかなく、その実、これらの問題解決策には政府が一言も言えない。其処にこそ自国では何もできない隠れたジレンマト無策さを抱えているのが筆者には記事を見ただけで明確に伝わってきます。

・社会目標の設定

ベトナムは2030年までに、女性が一人当たり2,1人の子供を出産し、1億500万人の人口を維持することを目指す。人間開発指数は0,78に達して、平均寿命は75,5歳に伸びる。農業労働力は20%を下回ると考えられるが、雇用と質の安定性は向上しているので問題はない。というけれど極めて怪しい。
教育は高度な地域基準に達するので高等教育においてアジアトップ10に入る様にする。すでに国際ランキングで少なくても8大学がアジア200にランクインしている。だがこれは大学名とその順位を見ると些か疑問にしか思えない。高等教育も大事だが、小学校から教育を根本的に見直さなければならないし、産業界や現場が必要とする高校や専門校には触れられず、教育課程や課外活動を洗い直すのが先決で、このままでは人間開発指数など覚束ない。事実有能な人材は国内ではなく、海外留学で育まれているのが実態であり真実なのです。

また医療は地域の先進基準にグレードアップされ公平で高品質な医療サービスを提供する。これは文化環境の構築、国民のアイデンティティーの維持と促進、文化産業の発展に重点を置き、全ての省・中央自治区で文化センター、博物館、図書館、少なくても3つの必要な施設を整備する。としているが文化度は低い。
結局は工業やサービスを優先した社会を造るという訳で、その為には高等教育が大事としているのは理解出来るが、問題はその内容。如何に民主教育を施すのかだが、さらに社会が要求している専門人材を育成するのには疑問があり、特に政府が目指すというデジタルやIT、グリーン産業といった理科学分野では現在でも水準は低いが、これを僅かの期間でやれる道理がありません。掛け声は勇ましいが、文化構築より目先の経済優先しか考えていないのが実情。
では若者の労働力海外派遣はどうする。これを廃止して国内のサプライヤーへ製造スタッフとして、基本的な教育課程を実施して送り込めるのか。質の高い人材を養成するという政府の唱える目標とか整合性に具体性は全くありません。
医療サービスも現状を見ればレベルは言うまでもなく世界標準から低い。徐々に改善されているけれど全体の底上げには程遠く、先進医療機器は無く、操作し判断するだけの専門家の養成をしなければ成り立たないのです。さらに重要なのは高齢化社会に入るベトナム、介護をどうするかは何も書かれていません。

・全国的に地域成長ハブ計画をしているけれど

政府は地域計画、地域間の連携、国家成長局と経済回廊の創設など、社会経済空間の枠組みを定めたとある。先ずは2030年までに5000キロメートルの高速道路網を完成。ハノイとHCM市では沿岸高速道路、ラオカイ~ハノイ~ハイフォン間の鉄道と都市交通システムを運用する計画としている。
再度見直さされた南北新幹線計画は入れていないが、この計画とニントアン省での原子力発電所建設計画は、国家の二大戦略プロジェクトである筈なのだが、どうしてこの全国的な地域成長計画に入れないのかは疑問でしかありません。
北部成長地域では、ハノイ市を中心として隣接する省間を結ぶ国道を網羅する整備する。また新技術をリードするための人材育成と経済、社会、医療、革新の国家センターとして機能させるとあります。
南部地域はHCM市、ドンナイ省、タイニン省を通る国道と高速道路の整備で、HCM市が成長の極として機能。元々南部サイゴンは経済の中心地なので国を牽引するのは納得。デジタル変革を促進、国際金融センターをHCM市に設立してベトナムを世界の金融ネットワークに位置付ける計画としている。
中部地域ではフエ、ダナンなどが含まれダナンを成長軸として沿岸都市、海洋観光、石油化学とエネルギー産業、自動車と裾野産業開発、港湾と空港、物流サービス拡大に重点を置くとしているが、妥当だけれど何もない。
メコンデルタ地域はカントー市を中心として各省を高速道路で結んでサービス、観光、物流、農業のハブ、農業科学、技術と革新の国立センターを目指す。
またフーコック島を国際的エコツーリズムトサービスセンターとして開発する。
北中部のタインホア省などは沿岸経済圏で、東部南北高速道路、国道一号線、沿岸ルートと結び、石油化学精製、冶金、機械、自動車製造の国家的中心地になり、半導体、AI、エレクトロニクス、デジタル技術などの新興産業を育成し、高原地域のラムドン省、海浜のカインホア省などの近隣省と連携して中部地域全域での段階的成長を確立する地域とするとしています。
花火は華々しく打ち上げるが尻切れトンボ、続かないのは何時ものこと。結局は実施するだけの技術と計画性が無く、資金難に苛まれ時間切れで終わるだけ。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生