ベトナム版一村一品運動

2026年2月6日(金)

一村一品運動は1981年に当時の大分県知事であった平松守彦さんが始めた地域振興のためのプロジェクトです。実際は1961年から大分県日田郡大山町(現日田市)で行なっていた事業だが、稲作に適さない土地を逆手にとって山間部でもよく育つ良い梅、栗を植え、付加価値の高い農産品を販売して成功したのが初の事業。これに平松さんが目を付けて県全域に広げたのです。
基本は地域の自主性に拠るが、そこに行政が支援を行って地元独自の特産品を生産するというもので農林水産業の収益構造の改善につながりました。
こうしてブランディングに成功し、椎茸、関サバ・アジなどが全国へ出荷され絶大な人気を得た訳だが、そこには物語が必ず出てくる好妙な手法を感じる。
平松さんはAPU(立命館アジア太平洋大学)設立に賛同、大きな功績を残された立役者。日本国内で初、留学生が半数以上在籍し、世界各国から集まってくるが、海外では意外と大分県の知名度は高いのはこの事情に拠るもの。昨年NHKの24時間ドキュメントで各国の学生が集まる寮が放映されていました。
今では日本だけでなく、中国、台湾、タイ、ベトナムなどでも海外青年協力隊を通じてこの運動は拡がっているのです。

・ベトナムでみせる拡がり

ベトナムでは日本の一村一品運動を参考にしてOCOP(One Country One Product)と称し、2013年からクアンニン省で始まりました。
現在は政府の重要政策として全国的に展開され、2018~2020年の事業では首相決定が交付され、総事業費45兆VND(約2173億円)もの巨費を投じて農業・地方開発省が担当。まさに国家一丸で推進しました。
こうした政府の政策として実施される一方で、民間の草の根団体が設立されているほど活発化しているのが現状。
日本からは国際一村一品交流協議会がベトナムでの運動を支援し、各省の幹部と懇談してその重要性を説いて回ったのです。

実際にベトナムの農業製品の品質は低かった。果物を例に挙げると手入れをしないでなすがまま。摘果もしないので大きさ、味などバラつきがある。南部は特に虫害が多いので農薬を使わなければならない。また筆者はHCM市内の店で野菜などを買ったけれど、販売先の管理問題もあるけれど、大小の違いなど良いとして何処で栽培されたとか、生産者は誰かなど全く興味が無くただ店頭に並べるだけ。観光客用には綺麗にパッケージされた農産品をスーパーなどで購入できるが、かと言ってブランド化され品質管理された製品は極めて少なく、消費者へ何を訴求したいのか、マーケティングでさえ全く見えて来なかった。
また折角品質の良い100%純粋蜂蜜を作っていても海外へはバルクで送り、これが相手国の業者のブランドとして売られていました。日本でも大手外資系のスーパーで販売されている事を知っているけれど、手間が掛るというだけの理由で付加価値とブランドは輸出相手業者に持って行かれたままで関心もない。欲がないというのは良い言い方だが、努力も勝負もせずして負けている。
さらに国営バイオ研究所で作られるのはごく初歩的なクローン技術による花卉であり、研究製造施設も貧弱としか言えず、日本企業担当者から特に作業中の担当者の意識レベルの低さを指摘され、もはや現地での委託生産など遠い話になってしまったという恥ずかしい思いをしたことがある。
この様な勿体ない現場の実態を幾つか見てきたが、日本から農産関係を視察に来た企業関係者もこれには驚いた。イヤ呆れられたのです。
農業生産において、良いもの美味しいものを作るという気概が無い。あるいは加工に於いて品質管理やマーケティング力などに欠けているが、これは知識もないけれど、それより以前、重要な気概、情熱、精神性が大きく欠如していた。
これをこの一村一品運動が改善してきて、やっと目覚めたという風に考えます。日本のベトナムへの貢献が世界一のODAだけではなく、民間のこの様な地道な貢献もあって初めてひのき舞台に上がれたという訳です。

こうした努力の甲斐あって、「ベトナムOCOPフェスティバル2025」が2025年12月20日から23日までハノイ市のタンロン皇城史跡で盛況に開催されたのです。
現地有力紙であるトイチェが伝える所では、このイベントは中央農村開発調整事務所とハノイ市農業環境局が共同で主催。だがそこには中央政府の強い意向があったとされています。そこに3463品目の製品が3つ星以上と認められ、OCOP製品の世界と結ぶ卓越した地位を維持していると報じているが、この発祥の地は日本の大分県であるとも公表していた。
このフェスティバルはDXとグリーントランスフォーメーションとを融合させたもので、OCOPの成果を迅速に認識し将来のOCOP製品へのアプローチと開発要件を導くことを目的としているとあり、導入後、わずか10年ほどで一村一品運動は時代の変化に応じて発展、進化していると考えられます。一旦軌道に乗れば、この先はより一層期待できるものと考えられる。

さらに優秀な製品の紹介と模範的となる団体を表彰し、矜持と意識を高めて、ベトナムの文化価値を紹介して起業精神を促進、また農業経済の発展に貢献するものと高く評価しているが、このルーツこそまさに平松さんなのです。
今回のテーマは「潜在能力の解放‐価値観の繋がり‐持続可能な開発」であり、これを通して全国及び世界との繋がりを促進し、地域での一貫した生産と貿易に繋がる交流を促進したいというのが主旨。
さらにバリューチェーンの連携を育成し、自国品の競争力を高め、革新の場を提供、また経験を共有して製品とパッケージなどのレベルを向上させる意義を強調し、奨励しているとあります。
また此処で述べられているのは、ベトナムの国家ブランドまでに及んで製品の開発と強化を行い、確固たる地位を築くとまで言い切っている。

記事に拠るとこのOCOPプログラムの成果として、社会経済に及ぼした影響は極めて顕著だとし、小規模生産からバリューチェーンへ意識改革が促進され、多面的価値を持つ農村エコ経済システムを構築。生産者の60%以上が年間平均成長率17,6%を達成している。また生産者の40%が女性であり、19,6%が少数民族となっており、これらの製品は60ヵ国以上に輸出されたと報じています。
今やOCOP運動は、場所と時の経過に応じた展開と、その国その地域の置ける独自性が此処に現れていると考えるが、こうしたプロパガンダ的な手法は、この国では様々な所で利用され、国民を鼓舞する材料になっているのです。

・HCM市でも開催

OCOPはHCM市でもエコシステムを強化し近代化するとしています。
2025年一帯一路商品ウイーク、地域特産品、需要連携の如何として、だが何故か此処に一帯一路が出て来るのか?不可思議なのだが、もしかすると運動そのものが日本ではなく、中国から導入されたと勘違いしているのではないか。何れにしてもHCM市と他省とを結ぶ農産品プロモーションが開催されました。
HCM市商工局はこのイベントが消費者の需要喚起を刺激し、国内市場を発展させる重要な原動力になることと期待している。2025年には小売売上高を18%以上増加するという市の目標達成に貢献するとしています。
HCM市は合併後にイベントを開催することで地域イメージを大きく変革し、経済・サービス発展に弾みを付けたいという目論見がある。取り分けHCM市とその周辺部に来る国内外観光客へ強く明確なアピールを行い、大きな躍進の余地があるとしているが、問題点として挙げているのは、5つ星を獲得できる産品が無いということ。またさらに商品群をセグメントし、商品にストーリー性を持たせ、インパクトのあるプレゼンが出来ることを、市当当局が積極的に支援する必要性を感じている。しかし現在のところ伝統的なシンプルな商品が多く、魅力ある商品開発が求められるという課題など山積しているとある。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生