ベトナムへ進出する日系企業はHCM市を中心とした周辺の省、ハノイを中心とする紅河デルタ地域、中部ダナンが一般的。しかし、この所人気が出ているのはカントー直轄市を中心に13省があるメコンデルタ地域です。
写真で見た悠久の大メコンに沈む夕陽に感動、初めてこの地を訪れたのは22年前の中秋。当時は未舗装道路が多くHCM市からバスで6時間ほど掛かった記憶があり、ヴィンロン省のフェリー乗り場へ着いたのは夕刻。ほどなく夜の帳がおりかける頃、約2キロの河幅をゆっくりとした船足で渡りました。
市域は広くなく宿泊施設さえ充実していないのどかな一地方の様相でしたが、今は日本のODAで建設されたカントー大橋があり、市中心へはあっと言う間。
新市街地に立派なホテルやビル、商業施設ができ人口130万の大都市に変貌しています。HCM市から西へ約160キロ。国道1号線は拡幅完全舗装され、橋梁や一部高速道路も開通。ほぼ半分の時間に短縮され便利になりました。
メコンデルタはベトナムの穀倉で米の50%を産出。世界第二位の米輸出国で、果物・野菜等の栽培に蝦や魚の養殖・加工も盛ん。日本もこの豊穣に与っています。
地平線まで見渡す限りに拡がる緑の大地と、青空のツートーンは目を見張る程壮大な光景。南国の風を五感で感じ、見所一杯のディープな異文化体験が満喫できます。
日本と関係が深いカントー大学。特に農学部は日本留学者が多く東大・京大等出身の優秀な博士・研究者を輩出。昨年、イノベーションセンターが開設されデルタ一帯の農水産分野の研究開発と近代化が進みます。
ここ数年来インフラが進展、国際空港化や港湾等も整備。カントー市には2つの工業団地があり、昨年末、中心部から6キロにあるフンフー第一工業団地内に日本企業向け「越日友好工業団地」竣工式が行われました。国交回復45周年記念の年、親日家であるサン元国家主席も出席。120hrの敷地内に日本人駐在員向けの生活施設を設けるなど、地域発展のため同市やメコン各省も日本の支援と日本企業の投資を積極的に歓迎。11月末には昭和産業がハウザン省へ進出していますが、地方の時代はまだ始まったばかり。
昭和30~40年代、東京・大阪など大都市圏へ地方から仕事を求めて出てきた時代があった様に、ベトナムもHCMやハノイなどの大都市へ人が集中しますが、工業団地がこの周辺の省にも出来、大学も一校だったのが、アンザン省、ドンタップ省に開校するなど高等教育環境も徐々に整備。生産やビジネス拠点が整えば、地元は若い人材の集積度が高く、賃金、賃料などにメリットがある有望な地になると考えます。
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー 木村秀生)