ベトナムに日本式高専教育を導入

2019年8月21日(水)

ベトナム労働傷病兵社会省は、日本の高等専門学校の教育システム導入に向け、安倍首相とG20に参加のため来日したフック首相の立ち会いの下、国立高等専門学校機構と覚書を締結しました。
日本企業進出は相続き、事業を拡大したい所も年々増加していますから、今回の協力決定で日本の進んだ高専専門教育システム導入は、ベトナムは社会経済の発展に繋げたいのが思惑。また日本企業にすれば日本式工業専門教育を現地の若い人が受けることで、生産能力や品質向上が見込めるため大いに歓迎するところだと考えます。
ベトナムは2020年には先進工業国入りを目指すという国家目標を立てています。しかしこれは程遠く、また三次産業が急速に伸びてきている事情もあり、いまだ裾野産業化は成し得ず、海外企業の委託に拠る労働集約産業が主流という状況に変わりありません。
こうした中、6月に初の国産車としてビンファストが販売開始、一応は道筋が出来たと言えなくはありません。だが日本の高専は単なるワーカーの養成所ではないので、何処まで理解し、学生に何を期待しているのかは不安要素。この辺りの明確な位置付けが必要です。
ベトナムには日本のような工業(工科)高校や商業高校など職業訓練的な学校の類はありません。社会に出て直ぐ仕事に役立つ基礎教育をするところは無く、普通高校を卒業して大学に進学するか職業訓練を目的とする短大に行くかです。バイク修理など短期間で教える所もありますが、学歴は必要なく地方の小学校を出ただけの人もいて簡単な実習のみ。高等技術が要るというものでもなく、特に資格がある訳でもありません。
ベトナムの短大には日本企業をお連れして、何校か回ったことがあります。
教育訓練省はHCM市内に訓練施設を持っていて、そこには地方から来て勉強する若い人のための寄宿舎も用意。此処では技能習得した人に就職先を紹介する業務も行っていますが、日本へ送りたいという意向は強く歓迎する所です。
ではこの様な所でどのような事を教えているのか。外国語は日本語、韓国語などで留学経験がある専門の教員が居り、中にはネイティブが教えている所もあります。問題は海外企業が納得できるだけの授業の質なのか?ということ。
技術はどんどん進化。例えば車ならハイブリッドはもちろんですが、EV化は既に始まっているし、水素エンジンは日本が先行して普及も射程距離。AI化も5Gの研究と並行して急速に実用化へと邁進中。こういう潮流なのに現地の短大で教えていたのはレシプロエンジンの実物を使った実習。日本側もズレがある実態を知らないのです。
また人材不足が特に目立つ建設関係の職人。しかし建築方法や制度は此処と全く異なっているし、設備に職人が使用する道具も仕事の仕方もまるで違う。
さらに伝統的な職人技に精神とか気質などは殆ど期待できない。要は相手国に人を送りたいのであれば、事前に研究しなければならないができていないし、教える側にも知識はありません。
資格制度はなく全国的に技術が標準化されていませんから、仕事の質は安定しているとは思えません。コンクールなどが全国規模で開催され、切磋琢磨する気風が醸成される必要があります。
日本では社員に独自のカリキュラムで企業理念や風土を理解させ、懇切丁寧に専門技術や知識を教え企業人に育て競争力を付けるシステムがある。だがベトナムでは企業教育など殆ど進んでおらず、高専導入が進化に繋がればと期待します。

株式会社VACコンサルティング 顧問
(IBPC大阪 ベトナムアドバイザー)
木村秀生