先の記事『ハラル制度とハラルであるための大原則』でお話ししたように、ある物がハラルであるためには、原材料の調達から、加工、輸送・保管、陳列・販売まで、すべての段階でハラルが確保される必要があります。
日本国内では、このような対応を取るのは極めて難しく、ハラル製品を製造するのは実質的に不可能と言っても過言ではありません。
“ハラル風”では、イスラム諸国の宗教的に厳密なハラル認証機関の審査に通らない可能性が高くなります。
こうしたことから、海外市場を開拓するうえでは、ハラル製品の輸出は現実的ではなく、輸出以外の方法が必要となります。
その方法の1つとしては、イスラム諸国で現地企業と共同で開発し、現地で生産を行うことが挙げられます。これにより、現地での製品のハラルの確保と認証取得が容易になると考えられます。
本場の和食をハラルで
舞台は、東南アジアのボルネオ島(カリマンタン島)北部に位置する王国ブルネイ。
同国最大の食品会社ブルネイ・ミート・カンパニー(Brunei Meat Company、BMC)は、日本の中小企業4社と提携し、お好み焼き、うどん、カレーなど十数品目のハラル日本食の開発に取り組みました。新設した工場および各商品のハラル認証が得られしだい、生産を開始します。既に、お好み焼きが認証を受け、ブルネイの小売店で販売されています。
この取り組みでは、日本の企業4社はBMCにレシピを提供し、BMCのシェフとともに、同社の研究施設で開発を行い、ハラル認証後、日本的なパッケージに4社の商標を付してBMCが販売します。4社には、売り上げの一定割合が、主に商標のライセンス料として還元されます。
BMCは、設備導入や生産・販売にかかる費用を全額負担します。このため、日本企業からの持ち出しは、レシピと商標のみであり、資金面に限界がある中小企業にも安心して利用できます。
加えて、実際の開発においては、現地の食材を使い、ハラル認証を熟知したスタッフを交えて試作を重ねるため、スムーズな認証が期待できます。
世界中のイスラム教徒が安心して食べられる“プレミアムハラル”和食
ブルネイのハラルは、世界的に見て厳しい認証基準が採用されており、中東諸国などの厳格なイスラム諸国で信頼を得ています。ブルネイハラルの厳格な認証をパスした商品は、“プレミアムハラル”認証品として、ブルネイはもとより他のイスラム圏の国の消費者にアピールできます。
BMCは、流通チャネルを有する隣国のマレーシアやインドネシアのほか、将来的にはインドや中東にも日本食の販路を広げる計画です。さらに、東京オリンピックでの需要取り込みを狙って、ハラル認証を受けた日本食を日本に輸出することも考えています。