カンボジアにおける農業の課題と、それに挑む日系企業

2020年4月5日(日)

アンコール王国として古くから栄えてきたカンボジア。王朝時代の最盛期に建てられた「アンコール・ワット」は有名です。

同国には、日本の半分ほどの国土に、約1,600万人が暮らしています。労働人口のおよそ半数が農業に従事し、農業はGDP(国内総生産)の3割を占める主要産業です。農業開発は、カンボジアの重要な政策分野に位置づけられています。

雨水が頼り カンボジアの農業

カンボジアは、トンレサップ湖やメコン川が育む、豊富な水資源を有しています。トンレサップ湖周辺およびメコン川流域は、比較的肥えた土地であり、農業が盛んです。
同国最大の生産作物は米であり、農用地面積のうちの約7割を稲作地が占めています。

ところが、耕作地の灌漑(かんがい)[※]面積は8%にすぎません。これは、農業のほとんどが雨水に依存していることを意味します。米をはじめとする農作物の生産は、降水量に大きく左右され、雨季に生産が偏り、生産量は安定していません。

加えて、カンボジアでは近年、気候変動の影響により、干ばつの被害が相次いでいます。

雨水に依存した生活様式が残る同国では、インフラ整備の不足から水資源が十分に管理されておらず、豊富な水資源を乾季の水不足時や干ばつ時に活用できていません。

※田畑に人為的に水を引いて注ぐことをいいます。

ため池用シートがカンボジアの農業を救うか

カンボジアの灌漑整備が遅れていることに着目した、ゴムメーカーのシバタ工業(兵庫県明石市)は、同国向けに、ため池用ゴムシートの製造を開始します。
製品は、ため池の底面を覆うゴム製遮水シートと、ゴムシートに発泡性素材を被覆して水面に浮かせる天蓋(てんがい)とから構成されています。遮水シートのみの他社製品に対して、同社製品は、特許技術の天蓋を組み合わせることにより、貯水の地盤への浸透だけでなく蒸発を抑え、水量を確保することができます。

カンボジアの既存のため池は、土を掘削しただけの簡単なものであり、地下への漏水や蒸発を防げず、確保した水を効率良く貯水できていませんでした。
シバタ工業らは、ゴムシートを現地のため池に実際に設置して実証試験を行ったところ、それを設置していない池よりも水量減少が顕著に少ないことを確認しました。また、ゴムの経年劣化も見られず、同社製品はカンボジアの自然環境下でも十分に対応可能なことが証明されました。

同社は2017年、カンボジアに現地法人を設立しました。ため池用ゴムシートは、2025年までにカンボジアで3億円の売上高を見込んでいます。